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「Jusant」─他に類を見ない、唯一無二のクライミングゲームの魅力とは?

Review

2023年に発売されたアクションパズル登攀ゲーム「Jusant」は、フランスの名門デベロッパーDON’T NODが開発を手掛けた作品です。従来のアクションゲームでは見られなかった、戦闘や主人公の成長といった要素を排除し、純粋なクライミング体験に特化することで、他に類を見ないゲーム体験を実現しています。

2023年、ゲーム業界に新たな風を吹き込んだアクションパズル登攀ゲーム「Jusant」がリリースされました。クライミングを主軸に据えた本作は、瞬く間に多くのゲーマーを虜にし、大きな注目を集めました。
「Jusant」の開発を手がけたのは、フランスの企業DON’T NODです。これまでに「Life Is Strange」などのヒット作を生み出し、独創的な要素を持つ作品で知られています。「Jusant」も例外ではなく、他では味わえない独特なゲーム体験を提供します。
本作は、敵との戦闘や主人公のパワーアップといった一般的なゲーム要素を排除し、純粋なクライミング体験に特化した作品となっています。プレイヤーは、巧みなクライミングテクニックと戦略を駆使して、岩壁を登り進んでいくこととなります。

導入

広大な砂漠の中に、雲を抜けて天まで続く巨大な塔が見える。
少年と謎の青い小さな生き物は、力を合わせてこの塔の崖を登る。
一体この世界に何が起きたのか?
落ちている手紙やメモを見て、謎を解き明かそう。

砂漠に広がる一帯は、水の気配すら感じさせない。その中を、背中にリュックを背負った少年が歩いていた。炎天下の日差しを浴び、砂が風に舞い上がる中、彼は孤独な旅を続けている。彼の目の前には果てしない地平線と、時折見える船の残骸が散らばっている。この不毛の地には、ただ一つ異彩を放つ存在があった。それは、巨大な岩山のような塔だった。名前も目的もわからない少年は、ただその塔の頂を目指して登り始めた。

物語の主人公は、伝説の生物である「バラスト」の幼体と出会います。このバラストは水から生まれた存在であり、主人公との間に特別な絆が芽生えます。時には困難に直面したり、危機に陥ったりしながらも、バラストは主人公を助け、二人は共に冒険を続けます。

「Jusant」はフランス語で「引き潮」「下げ潮」を意味し、かつて海だった場所が干上がった様子を表す言葉です。本作の舞台となるのは、かつて海だった土地に聳え立つ塔。プレイヤーは、塔の内部を探索し、海辺の文明の謎を解き明かしていくことになります。

塔の内部には、かつての海岸線が残り、海辺の文明の痕跡が廃墟として残されています。プレイヤーは、手紙や壁画、巻貝などの探索アイテムを通じて、塔の歴史や過去の出来事を知ることができます。

手紙には、かつて塔に住んでいた人々のやり取りが記されています。メモには、水が干上がった原因を探るための遠征隊に参加した女性ビアンカの姿が描かれています。壁画には「バラスト伝説の詩」が刻まれ、巻貝には「当時の音」が込められています。

これら複数の情報を組み合わせることで、塔の物語の真相が徐々に明らかになっていきます。

ゲームプレイの特徴

本作は、リアルな登攀体験を追求したクライミングゲームです。プレイヤーは左右のトリガーを駆使し、岩肌を掴み、登り進んでいきます。まるでクライマーになったかのような臨場感が体験できます。

現実のクライミングと同様に、本作も単なる力押しではなく、状況に応じた戦略と機転が求められます。パズルを解き明かし、最適なルートを見つけ出すことが、攻略への鍵となるのです。さらに、ロープを使って勢いよく飛び移るなど、アクロバティックなアクションも可能です。見た目こそ地味ですが、奥深い戦略性と爽快なアクションが楽しめます。

さらに、ゲーム内では登るだけでなく、バラストの子供の不思議な力で成長する巨大な植物を利用したり、「ペブル」と呼ばれる石に手足が生えた昆虫を掴んで岩壁を移動するなど、現実ではあり得ないゲームならではの要素も盛り込まれています。

ゲーム内には1章から6章までの複数の環境が存在し、プレイヤーは日差しの強い岩壁や廃墟となったカフェ、掘削場、吊り橋、そして迷宮のような狭い人工窟、広大な洞窟、頂上に近づくにつれて強風が吹き荒れる岩壁など、多様な自然環境を舞台に冒険を繰り広げます。それぞれのステージは、異なる魅力と難しさを持っており、プレイヤーに飽きることのない多様なプレイ体験を提供します。

このゲームでは「死」の概念は存在せず、落下しても必ずカラビナロープがかかるため、プレイヤーは安心して冒険に没頭できます。また、コンパクトながらも充実した内容で、約10時間でクリアできますが、手紙や壁画を探索するなどのやり込み要素もあります。

グラフィックと音楽

本作のグラフィックは、一見シンプルでありながら、洗練された品格を漂わせています。特に、キャラクターの顔は極めてシンプルな表現となっており、物足りないと感じるプレイヤーもいるかもしれません。しかし、これは開発者の意図的な選択であり、一般的な日本のゲームとは一線を画す、独特なスタイルを追求した結果と言えるでしょう。

このスタイルは、フランスの漫画やアート作品に見られる、メビウスのような独特なイメージを彷彿とさせます。繊細な線と洗練された色彩が織り成す独特の世界観は、プレイヤーを作品世界へと深く引き込みます。

一見シンプルに見えるグラフィックは、実は奥深い魅力を秘めています。開発者のこだわりと個性を感じられる、本作ならではの表現と言えます。

本作の音楽は、静謐でアンビエントな雰囲気を基調としつつ、時折、ゲームの雰囲気を高める効果的なメロディーが巧みに織り込まれています。静寂の中に奏でられる繊細な音色は、プレイヤーの心を落ち着かせ、ゲームの世界観へと誘います。

そして、場面に合わせて奏でられるメロディーは、プレイヤーの感情を自然に高揚させ、没入感を高めます。静寂と昂揚が絶妙なバランスで織り成す音響は、本作の独特な魅力をさらに引き立てています。

問題点

いくつかの場面で、非常に紛らわしい箇所が存在し、プレイヤーを惑わせます。

例えば、序盤に青く塗られた扉が多数出現し、特徴的な菱形の紋章が装飾されています。一見すると、鍵などのアイテムがあれば開くのかと期待させられますが、実際には扉が開くことは一切ありません。

さらに、道中には入りそうな隙間や通路が存在し、何かが隠されているかもしれないと考えさせますが、実際には何もないことが多く、無駄な時間を費やされることがあります。

これらの仕掛けは、説明が十分でないため、プレイヤーは自力で解決しなければなりません。

また、主人公がオブジェクトに引っかかったり、挟まれたりする場面もあり、操作が難しく感じる場面もありました。

このように、説明不足や操作性の難しさといった問題点もありますが、それも含めて本作の個性と言えるでしょう。

総括と評価

「Jusant」は万人におすすめできる作品とは言い難いかもしれません。しかし、決してつまらない作品ではありません。むしろ、独特な魅力を備えており、クライミング経験者などの特定の層の心を捉える作品だと思います。

終盤の展開は、本作の真骨頂と言えるでしょう。今まで経験してきた様々な障壁の集大成として、挑戦しがいのある演出が待ち構えています。クリア後、まるで険しい山を登り終えた登山家のように、高揚感と爽快な達成感は格別です。

機会があれば、ぜひこの登頂体験を味わってみてください。

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