
市場調査会社Circanaの最新データによると、米国の物理的なビデオゲームへの支出は2008年のピーク時から85%以上減少しました。さらに、2021年以降も半減以上の減少が続いています。しかし、物理ゲーム市場が縮小する一方で、デジタルコンテンツ(サブスクリプションやマイクロトランザクションを含む)を含むゲーム市場全体の支出は、2019年以降増加を続けています。
デジタルシフトを促進する主な要因
過去10年以上にわたり、ゲーム市場は着実にデジタル化が進行してきました。特に以下の3つの要因が、物理ゲーム市場の縮小に大きく影響を与えています。
●インターネットの高速化
インターネットの高速化により、大容量ゲームのダウンロードがより迅速かつ簡便になりました。
●オンラインマーケットプレイスの普及
PlayStation StoreやXbox Marketplaceなどのオンラインプラットフォームの普及により、物理ディスクを購入する必要性が大幅に減少しました。
●ライブサービスゲームとマイクロトランザクション
無料プレイ型ゲームがマイクロトランザクションを活用した収益化手法を採用しており、物理ディスクの需要がさらに減少しています。
パンデミックによるデジタル化の加速
Circanaのエグゼクティブディレクターであるマット・ピスカテラ氏によれば、パンデミックをきっかけにデジタル化の流れは一層加速しました。特に2024年には、Nintendo Switchの新作リリース数が例年より少なかったことが、物理ゲーム販売の減少に寄与したと指摘されています。
一方で、Circanaのデータは、物理ゲームとデジタルゲームを含む全体的なコンテンツ支出が2019年以降増加していることを示しています。これは、デジタル市場の成長が物理市場の縮小を大きく上回っていることを意味します。
地域ごとのデジタル化の進展
デジタル化の進行速度は地域によって異なります。米国市場の詳細データは限られていますが、ヨーロッパ市場の動向が参考になります。昨年、ヨーロッパでは全体的なデジタルシェアが60%から68%に拡大しました。
- Xbox:デジタルシェアが70%から75%に増加
- PlayStation 5:55%から64%に増加
- Nintendo Switch:22%で横ばい
また、ゲームタイトルごとに物理版とデジタル版の販売比率には大きな差が見られます。例えば、「Astro Bot」は物理版が好調だった一方で、「Warhammer 40k: Space Marine」は主にデジタル版で販売されました。
新作ゲーム売上の減少傾向
2024年は新作ゲームのリリース数が少ない年となりました。ヨーロッパ市場のデータによると、トップ20にランクインした新作ゲームはわずか6本(前年は10本)にとどまりました。この結果、新作ゲームの売上は前年と比較して21%減少しています。同様の傾向が米国市場にも当てはまると推測されます。
今後の展望
デジタル化の進行により、物理ゲーム市場は今後さらに縮小が見込まれます。ただし、特定のプラットフォームやタイトルでは物理版が引き続き支持される可能性もあります。業界が成長を維持するためには、消費者の多様なニーズに応じた柔軟な販売戦略が求められるでしょう。
また、サブスクリプションモデルやクラウドゲーミングといった新たな収益モデルがデジタル市場をけん引する役割を果たすと期待されています。一方で、最近の調査ではサブスクリプション支出に停滞の兆しが見られることから、業界は常に新たな課題に直面しています。
情報元:VGC