
新作「Split Fiction」がリリースからわずか48時間で約20万人の同時接続プレイヤーを記録。Hazelight Studioが手がける本作は、ジャンルを超えた斬新なゲームデザインと優れた協力プレイが話題です。「Split Fiction」のクリエイター、ジョセフ・ファレス氏が、ゲーム開発の本質と利益追求の弊害について語ります。
2025年3月にリリースされた新作ゲーム「Split Fiction」は、驚異的な勢いでプレイヤー数を伸ばし続けています。発売後わずか48時間でSteam上の同時接続プレイヤー数は19万3243人に達し、週末にはさらなる増加が見込まれています。この記録は、近年の有料タイトルとしてはまさに異例の成功と言えるでしょう。2月以降、ビデオゲームの販売は全体的に好調であり、「Split Fiction」の登場は、その勢いをさらに加速させています。
スプリット・フィクション|公式発表トレーラー
本作は、数々の高評価を獲得してきたHazelight Studioが手がけた、待望の新作協力型アクションゲームです。「It Takes Two」などで協力プレイの新たな可能性を切り開いてきた同スタジオは、「Split Fiction」においても、多彩なジャンルを融合させた独創的なゲーム体験を、プレイヤーに提供しているのです。
ファレス氏がライブサービス化を批判
Hazelight Studiosのディレクターであるジョセフ・ファレス氏は、所属するエレクトロニック・アーツ(EA)の方針に逆行するリスクを顧みず、ライブサービスやマイクロトランザクションがゲームの創造性を著しく損なうと、声を大にして批判しています。
Inverseによるインタビューにおいて、ファレス氏は「お金のためだけにゲームを作るのも一つの選択肢ではあるが、残念ながら、それではビデオゲームの創造性は決して前進しない」と断言し、さらに続けてこう語りました。
「たとえ見た目だけの変更であっても、課金がなければゲームを継続できなかったり、特定のプレイ方法しか許容されなかったりするような決定が下されると、心の底から苦悩する。なぜなら、その結果、ゲームに対するクリエイティブなアプローチが大幅に制限されてしまうからだ。私は、そのような状況を断じて受け入れることはできない。」
特にモバイルゲームの手法については、「全くもっておかしい(f***ed up)」と、強い言葉で非難しています。インタビュアーがガチャのようなマイクロトランザクションを重視したタイトルについて質問した際、ファレス氏は「ノーコメント!」と答えつつも、「確かに、私はそれを好んでいない」と、その嫌悪感を隠そうとはしませんでした。
ライブサービス化が進むゲーム業界
近年、ゲーム業界ではライブサービス化が急速に進展の一途を辿っています。ライブサービスゲームとは、一度リリースされた後も、定期的にコンテンツの追加やアップデートを行い、プレイヤーを長期間にわたって惹きつけることを目的としたビジネスモデルです。その代表例としては、「フォートナイト」、「ロブロックス」、そして「グランド・セフト・オート・オンライン」などが挙げられます。
このモデルは、プレイヤーの継続的な関与を促し、安定した収益を生み出す可能性を秘めているため、多くの大手ゲーム会社がこぞって採用を検討しているのです。たとえば、Activision BlizzardやUbisoftなどは、既存のフランチャイズをライブサービス化する戦略を、積極的に推し進めています。
しかし、この流れに対し、一部のクリエイターからは、懸念の声が上がっています。ライブサービス化が過度に進行することで、ゲーム本来の楽しさよりも収益性が優先され、結果として創造性や革新性が失われてしまうのではないか、と。
また、ファレス氏は「私たちは資本主義社会に生きており、お金の話は避けて通れない。しかし、お金と創造性が共存できる世界も、確かに存在する。たとえば任天堂は、その最たる例だ。彼らは多数の株主を抱えながらも、情熱溢れる素晴らしいゲームを、世に送り出し続けている」と述べています。
企業の利益優先がもたらす問題
ライブサービスモデルは、開発者に安定した収益をもたらす魅力的な選択肢であり、多くの企業が採用を検討しているのは紛れもない事実です。しかし、この傾向が過剰に進むと、クリエイティブな側面が犠牲になってしまうという、看過できないリスクが存在します。
たとえば、エレクトロニック・アーツ(EA)の「Dragon Age: The Veilguard」の開発過程は、この問題を如実に示しています。当初、EAは本作をライブサービスとして計画していましたが、開発途中で伝統的なシングルプレイヤーRPGとしてリリースする方針に転換しました。しかし、リリース後、EAのCEOは「ライブサービスの方が成功したのではないか」と発言し、その結果、多くの開発メンバーが解雇されるという、痛ましい事態に発展しました。この事例は、企業が利益追求に走り出すと、創造性や開発者の雇用の安定性がいとも容易く脅かされてしまうという、厳しい現実を浮き彫りにしています。
特にインディーズスタジオや小規模な開発チームにとっては、ライブサービスの導入は非常にハードルが高く、伝統的なゲーム開発スタイルを維持することが、ますます困難になりつつあるのです。
クリエイターの信念と今後の展望
ファレス氏は、これまで一貫して、企業の利益よりも芸術的なビジョンを優先する姿勢を貫いてきました。彼が手がけた「A Way Out」は、数百万本の売り上げを記録する大ヒットとなり、続編を望む声も多数寄せられました。しかし、彼は「A Way Out 2は作りたくなかった」という信念に基づき、新たな協力プレイゲーム「It Takes Two」の開発へと舵を切ったのです。このような決断の数々は、彼のゲーム開発に対する哲学を、雄弁に物語っています。
Hazelight Studioは、「Split Fiction」を通じて、協力型ゲームの新たな可能性を切り開きました。近年、オンラインマルチプレイヤーやバトルロイヤルゲームの隆盛により、ローカルでの協力プレイに重点を置くゲームは一時的に減少傾向にありました。しかし、「Split Fiction」の成功は、その流れに一石を投じたと言えるでしょう。
今後、業界全体で協力型ゲームの再評価が進む中、ライブサービスが新たなスタンダードとなりつつある状況下で、創造性を重視するクリエイターたちがどのように立ち向かっていくのか、その動向から目が離せません。
情報元:INVERSE