PR

「Zenless Zone Zero」 : SAG-AFTR交渉が招いた声優交代の真相

News

人気ゲーム「Zenless Zone Zero」において、AI技術による権利侵害からの保護を求めた声優2名が交代となった。SAG-AFTRAとゲーム開発企業の交渉は難航しており、声優のデジタルレプリカ作成の条件や報酬体系を巡る対立が続いている。声優たちはキャリアリスクを負いながらも、抗議の姿勢を崩していない。

※本記事で取り上げている問題は英語版「Zenless Zone Zero」に関するものであり、日本語版の声優やローカライズには関係ありません。日本語版の声優陣は、この問題の影響を受けていないことをご了承ください。

声優交代の波紋、その真相とは

人気ゲーム「Zenless Zone Zero」の最新アップデートで、2名のキャラクターの声優が交代するという事態が発生。この動きは、人工知能(AI)技術からの保護を求める声優組合 Screen Actors Guild-American Federation of Television and Radio Artists(SAG-AFTRA)(映画俳優組合・米国テレビラジオ芸能人組合)のストライキと深く関わっています。

開発元のHoYoverseは3月11日にバージョン1.6のアップデートを実施。これにより、キャラクター「ソルジャー11」と「フォン・ライカン」の声は、新たな声優によって演じられることとなりました。驚くべきことに、交代させられた元の声優たちは、自身が交代させられた事実を一般のプレイヤーと同時期に知ったといいます。

ストライキと自主的な仕事の拒否

SAG-AFTRAの声優たちは2024年7月から、AI技術の使用に関するより強固な保護を求めてストライキを続けています。「Zenless Zone Zero」はストライキ開始前に制作が始まっていたため、技術的には声優たちがストライキ条件に違反することなく仕事を続けることは可能でした。

しかし、ソルジャー11役のエメリ・チェイス氏は、自主的に仕事を拒否いたしました。彼女はソーシャルメディアで「AI保護のためのストライキ中にSAG暫定協定でカバーされていない仕事をしたくなかったため、役を交代させられました」と説明しています。

チェイス氏は「多くの俳優が、こうしたカテゴリーのプロジェクトへの出演を自主的に控えることを選んでいます。それが、私たちが愛する芸術を創造し続けるために不可欠な保護を求める組合の闘いを支援する最善の方法だからです」と、その理由を述べています。

AI保護をめぐる根深い対立

3月11日、SAG-AFTRAのエグゼクティブ・ディレクター、ダンカン・クラブツリー=アイルランド氏は、交渉の現状をウェブサイトで公開しました。

「昨年ストライキを開始して以来、進展はありました。特定の条項で合意にも達しました。ですが、交渉グループが最後に提案した案には、依然としてメンバーをAIの悪用に対して脆弱にする『恐ろしい抜け穴』が満ちています」。彼はそう述べています。

組合側が主張する「抜け穴」は、主に以下の点です:

  1. 現在の契約文言では、ゲーム会社が声優の同意や報酬なしに一部のAIレプリカを作成できる余地があること
  2. レプリカが特定のパフォーマーとして「客観的に識別可能」でない場合、俳優に報酬が提供されない規定があること
  3. SAG-AFTRAは、ゲームの音声およびモーションキャプチャは通常、俳優本人とは異なるキャラクターを描写するため、この規定によって多くのパフォーマンスが保護されない可能性があると懸念していること
  4. ゲーム制作側は、複数の声を混合してレプリカを作成した場合、元の演者に報酬を支払う義務がないと主張していること

声優たちの覚悟とリスク

ライカン役のニコラス・サーケトル氏も、同様の理由で仕事を拒否したことを明らかにしました。「私はSAGのメンバーではありません。しかし、ゲーム会社がAIを使ってやろうとしていることは、存在そのものに対する脅威です」。

両声優が自らのキャリアに大きなリスクを負いながらも、原則を貫く姿勢を示している点に注目すべきでしょう。「保護を求めるために個人的な立場を取り、これまでの職業人生で最高のものをあきらめる覚悟をしなければなりませんでした。私は自分の選択を貫きます」。サーケトル氏は固い決意を表明しています。

業界全体への影響

この問題は、ゲーム業界におけるAI技術の進展と創造的貢献者の権利保護という、より広範な課題を浮き彫りにしました。声優たちの抗議行動は、デジタルエンターテインメント産業全体におけるAI導入の倫理的側面に光を当てたと言えるでしょう。

SAG-AFTRAが理想とする契約。それは、雇用者が声優の新しいパフォーマンスを使用してAIレプリカを作成する場合、俳優がそのプロセスに明示的に同意し、適切な報酬を受け取ることが保証されるべきだというものです。

この対立の行方は、ゲーム開発における創造的表現の未来と、その背後にある人間の貢献者の価値にとって、極めて重要な意味を持つものと考えられます。

情報元:Inverse

タイトルとURLをコピーしました