
中国のS-Gameが開発する「Phantom Blade Zero」は、1970年代の香港カンフー映画の美学を、「Devil May Cry」のコンボアクションと「DARK SOULS」の探索要素と融合させた野心的なアクションゲームです。
開発の背景と挑戦
中国のゲームスタジオS-Gameが手掛ける「Phantom Blade Zero」は、単なるゲームジャンルの組み合わせを超えた、文化的挑戦として注目を集めています。2024年のGame Developers Conference(GDC)で、ディレクターのLiang氏(通称「Soulframe」)は、本作の独自性について詳細を明らかにしました。
本作は、「Devil May Cry」のスタイリッシュなコンボシステム、「DARK SOULS」の立体的なマップ設計、「バイオハザード4」や「Alan Wake」のような重厚な世界観を融合させています。Liang氏は、これらの影響を単純に模倣するのではなく、独自の「プレイ可能な kung fu 映画」というコンセプトを追求していると強調しています。
Phantom Blade Zero – Year of the Snake Gameplay Trailer | PS5 Games
PlayStation公式チャンネルでのトレーラー再生回数は530万回を突破し、同じチャンネルの「黒神話:悟空」の300万回を上回っています。これは、中国製ゲームの国際的な可能性を示す重要な指標となっています。
カンフー文化の再解釈
開発チームが最も重視しているのは、失われつつある香港カンフー映画の伝統を現代に蘇らせることです。ブルース・リーからジャッキー・チェン、ドニー・イェンまで、1970年代から2000年代初頭の映画黄金期のアクションエッセンスをゲームで再現することを目指しています。
実際の武術家によるモーションキャプチャーを採用し、歴史的に正確な30種類のメイン武器と20種類のサブウェポンを、「カンフーパンク」という独自の美学で再解釈しています。Liang氏は、フランスのスタジオ「Sifu」の成功を引き合いに、「中国人スタジオこそが真の文化的表現を可能にする」と自信を見せています。
革新的な戦闘システム
GDCで公開されたデモでは、七星首席弟子との戦闘シーンが注目を集めました。特筆すべきは「エクストリームモード」で、従来のソウルライクゲームの定型的な攻撃パターンを廃し、人間対人間の対戦のような適応的AIを実装しています。
Liang氏は二つの重要な開発哲学を掲げています。第一に、PlayStation 1/2時代の開発精神として、莫大な予算ではなく、情熱と経験を持つチームによる「大型インディゲーム」の製作を目指しています。第二に、映画的インタラクションの追求を重視し、現在公開されている戦闘シーンはオプションのサイドコンテンツであり、本編ストーリーへの期待を高める戦略的な伏線として位置づけています。
今後の展望
Gamescom2024の体験版では、パリィと回避のタイミングを巧みに利用することで発動する「スローモーション反撃」システムが称賛されました。GDCデモでは、傀儡師ボスの第二形態においてチェックポイント機能が確認され、ソウルライクゲーム特有の厳しい難易度を緩和しつつも、戦闘の緊張感を維持する絶妙なバランス設計が評価されています。全ての攻撃モーションには、実際に存在する武術家の動きが採用されており、例えワイヤーで吊るされるような奇抜なボス戦でさえ、中国雑技団の協力を得て、現実の物理法則に基づいた表現が追求されています。
リリースへの静かなる決意
リリース日は未定ですが、PlayStation 5とPC(SteamおよびEpic Gamesストア)での発売が予定されています。Liang氏は、「我々は単なる追随者ではなく、新たな伝統の創始者となる」と自信を示しています。
「Phantom Blade Zero」は、カンフー映画の魂を受け継ぎながら、ゲームという媒体でしか実現できない表現を追求する、野心的なプロジェクトとして注目を集めています。これは単なるゲームの枠を超え、文化的表現の新たな可能性を探求する挑戦的な試みと言えるでしょう。
情報元:Eurogamer