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「Clair Obscur: Expedition 33」の大ヒットが示す、ターン制RPGの可能性

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新作RPG「Clair Obscur: Expedition 33」は、ターン制バトルと高品質なビジュアルを見事に融合させ、高い評価を獲得しました。この成功は、いまだ根強い支持を集めるターン制RPGの魅力を改めて浮き彫りにするとともに、「ターン制は時代遅れ」とする一部デベロッパー(スクウェア・エニックスなど)の見解に一石を投じます。

全世界累計販売本数100万本を突破

近年、RPGジャンルでは、特に大作タイトルを中心にリアルタイムアクション要素を取り入れる傾向が顕著です。こうした潮流の中、フランスのインディースタジオがPlayStation5/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam/Epic Games Store)向けに開発した「Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)」は、2025年4月24日の発売からわずか3日間で100万本以上の販売を記録し、レビュー集積サイトMetacriticでもPS5版がユーザースコア9.7という驚異的な評価を得ています。この成功は、スクウェア・エニックスなど一部で見られた「ターン制RPGは古臭く、フォトリアルな表現には向かない」といった考え方に、一石を投じると同時に、その可能性を問い直すものとなるかもしれません。

『Clair Obscur: Expedition 33』ローンチトレーラー

岐路に立つRPGの戦闘システム

RPGにおける戦闘システムは、プレイヤー体験の中核をなす要素の一つです。「ファイナルファンタジー」シリーズを例にとれば、初期から中期にかけては、アクティブ・タイム・バトル(ATB)に代表されるターン制を基盤とした独自のシステムで多くの成功を収めてきました。しかし、「ファイナルファンタジーXV」、「ファイナルファンタジーVII リメイク」、「ファイナルファンタジーVII リバース」、そして最新作「ファイナルファンタジーXVI」では、伝統的なコマンドベースの要素は大幅に後退し、ハイスピードなアクション戦闘が採用されています。特に「ファイナルファンタジーVII リバース」では、展望塔から周辺マップを開放するシステムなど、他作品から着想を得たようなオープンワールド要素が取り入れられており、独自性よりも市場トレンドへの追従を優先した結果である、という見方もあります。

吉田直樹氏の開発思想

こうした変化の背景には、「ファイナルファンタジーXIV」および「XVI」のプロデューサーを務める吉田直樹氏の開発思想があります。吉田氏は過去のインタビューで、グラフィックが向上し、キャラクターがよりリアルになるにつれ、そのリアリズムとターン制コマンドという非現実的なシステムとの組み合わせに違和感が生じるとの見解を示しています。具体例として、キャラクターが銃を持っている場合、「なぜボタンを押すだけで発射できないのか、コマンド入力が必要なのか」という疑問を抱くプレイヤーがいることを挙げています。

本作が示した新たな可能性

こうした潮流に対し、「Clair Obscur: Expedition 33」は、コアチームわずか約30人という規模ながら、Unreal Engine 5を活用した美麗なグラフィックで描かれる世界とターン制コマンドの融合を見事に実現しています。プレイヤーは各キャラクターの行動をコマンドで選択して戦闘を進めますが、本作のユニークな点は、日本のRPGに影響を受けたとされる「リアクティブターン制バトル」にあります。この新感覚の戦闘システムは、ターン制にリアルタイム要素を融合しており、敵の攻撃に対する回避やパリィによって反撃のチャンスを生み出します。さらに、一部の開発者が課題として挙げていた銃攻撃には遠距離のフリーエイムシステム(自由照準)を導入するなど、創造的なアプローチで解決を図っています。こうしたアクティブな要素の導入は、例えばフリーエイムで敵の弱点を狙うことで戦況を一変させるといった、ターン制の戦略性を維持しつつ操作感やインタラクティブ性を向上させる試みであり、吉田氏が指摘した「リアリズムと非現実的なコマンドシステムのギャップ」を埋める有効な手段となり得ることを示しています。

スクウェア・エニックスへの「静かなる問いかけ」

一部のファンからは、スクウェア・エニックスがターン制RPGへの需要を意図的に軽視し、その価値を過小評価している(あるいは、そう主張している)のではないか、という批判的な意見も上がっています。特に、「ファイナルファンタジーXVI」は「デビルメイクライ」シリーズを彷彿とさせるハックアンドスラッシュ要素を取り入れたものの、一部のプレイヤーからは「自動的に進行する戦闘」や「カットシーン主体で進行するボス戦」など、アクションゲームとしての手応えに欠けるという評価も聞かれます。吉田氏が「コマンド入力」を問題視する一方で、実際のゲームプレイがむしろ受動的な側面を持つという指摘もある状況は、ある種の皮肉と言えるかもしれません。

成功の背景と業界への示唆

本作の成功は、現代のRPG市場において、以下のいくつかの重要な論点を浮き彫りにしました。第一に、ターン制RPGへの需要が依然として根強く存在するという点です。「ペルソナ」シリーズ、「龍が如く7」以降の作品、「バルダーズ・ゲート3」など、ターン制を採用したタイトルが商業的・批評的に成功を収める例は少なくありません。

第二に、ゲームにおける「リアリティ」とは、必ずしも物理法則の完全な模倣ではなく、プレイヤーが納得し、没入できる体験の一貫性によって構築されるものであるという点です。第三に、本作の開発チームに、Ubisoftでの開発経験を持つメンバーが含まれていることは注目すべき点です。彼らがデータ分析(テレメトリー)主導の開発手法から離れ、より創造性を重視する環境で生み出した作品が高い評価を得たことは、大手スタジオの開発戦略に一石を投じる可能性があります。

多様性が求められるRPGの未来

「Clair Obscur: Expedition 33」の成功は、ターン制RPGが決して過去の遺物ではなく、最新技術と斬新なアイデアによっていかに進化し得るかを如実に示しました。スクウェア・エニックスをはじめとする大手デベロッパーにとって、「ターン制RPGは時代遅れ」「フォトリアルなグラフィックとターン制は共存できない」といった従来の主張に対し、小規模なインディースタジオが大手が見落とす、あるいは意図的に考慮してこなかった市場ニーズを的確に捉え、実際に成果を上げている事実は強い反証となっています。

今後のRPGがどのように進化していくのか ── ターン制バトルへの回帰、アクション要素の継続、あるいはまったく新しい体験の創出など、確立されたシリーズの伝統を尊重しつつも、プレイヤーの多様な期待に応える柔軟な戦略が求められるでしょう。

情報元:WindowsCentral
画像イメージ:PRTIMES

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