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SNK松原CEO退任、「餓狼伝説 CotW」による大規模マーケティングは奏功したか?

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SNKの松原健二CEOが、大規模なマーケティングキャンペーンが展開された最新作「餓狼伝説 City of the Wolves」のリリース後に退任することが発表されました。サウジアラビア資本のもと、WWE、ボクシング、著名アスリートを起用した前例のない宣伝活動が話題となりましたが、初期の販売実績は期待を下回った可能性があります。

CEO退任の注目と「静かな船出」の符合

2025年5月12日、株式会社SNK(以下、SNK)は、代表取締役社長であった松原健二氏の退任(同日付でアドバイザー就任)が正式に発表されました。松原氏は2021年8月の就任以来、特に開発部門の拡充やグローバルなマーケティング機能の強化を推進してこられた人物として知られています。この経営トップ交代のニュースは、SNKが看板IPの一つである「餓狼伝説」シリーズの最新作「餓狼伝説 City of the Wolves」(以下、CotW)を2025年4月24日に発売してから、わずか3週間足らずというタイミングでしたため、業界に大きな驚きをもって受け止められました。

松原CEOの功績とSNKの新体制

SNKの公式発表によれば、松原氏は在任中、「開発部門の拡充および営業・マーケティング機能の強化により、SNKをグローバルに競争できるパブリッシャーへと変革させた」と、そのリーダーシップと貢献が高く評価されています。後任には、取締役会議長が暫定代表取締役社長として就任する予定です。SNKは「引き続き戦略的ビジョンに基づいて邁進し、新たなリーダーシップ体制のもとでの未来に期待を寄せています」との声明を発表しています。
(情報元:株式会社SNK 2025年5月12日プレスリリース

「餓狼伝説 CotW」:期待と市場の初期反応のギャップ

長年のファンが待ち望んだ「餓狼伝説」シリーズの最新作であるCotW。SNKにとっても、PIF傘下での本格的な大型タイトル第一弾として、その成否は極めて重要であったはずです。しかし、リリース後の市場の反応を示す初期データは、必ずしも楽観視できるものではないかもしれません。

SteamDB(2025年5月中旬時点)によれば、CotWの全世界での同時接続プレイヤー数のピークは約4,700人であり、これは発売前に行われたオープンベータテスト時の数値を下回っています。比較対象として、同じ格闘ゲームジャンルの「ストリートファイター6」(カプコン)や「鉄拳8」(バンダイナムコエンターテインメント)は、発売から時間が経過した後も、また発売時にはこれらを大きく上回るプレイヤー数を記録しています。さらに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが発表した2025年4月のPlayStation 5における北米・欧州市場のソフトウェア売上トップ20にも、CotWの名前は見当たりませんでした。

異例の規模で展開されたマーケティング戦略

CotWの発売に際しては、PIFの強力な資金力を背景に、極めて大規模かつ多岐にわたるマーケティングキャンペーンが展開されました。その内容は、従来のゲームプロモーションの枠を超えるものも含まれていました。

例えば、世界的なサッカー選手であるクリスティアーノ・ロナウド氏や、人気EDM DJのサルヴァトーレ・ガナッチ氏が、ゲーム内で操作可能なプレイアブルキャラクターとして登場するというニュースは、発売前から大きな話題を呼びました。両者はサウジアラビアとの関連も深く、特にロナウド氏はPIFが株式の多くを保有するサウジ・プロフェッショナルリーグのクラブに所属しています。

また、ゲーム外でも、世界最大のプロレス団体WWEの年間最大の祭典「WrestleMania」のリング中央にCotWのロゴが掲出されたり、著名なボクシングイベントが「Fatal Fury(餓狼伝説の英語タイトル)」の名を冠して開催されるなど、スポーツエンターテイメントとの大型タイアップが積極的に行われました。これらは、SNKが従来のゲームファン層を超えた、より広範な層へのリーチを狙った戦略であったと推察されます。

マーケティングが販売に結びつかなかった要因

これほど大規模なマーケティング戦略が、期待された販売実績に現時点では結びついていないように見える背景として、いくつかの要因が推察されます。

まず、格闘ゲームのコアユーザー層が重視するゲーム性などと、著名人起用を中心としたプロモーション内容が必ずしも合致せず、購買意欲を直接刺激しなかった可能性があります。

また、話題性による短期的な認知度向上は見込めるものの、それが持続的な売上やプレイヤー数の維持に繋がるかは、ゲーム内容自体の評価や発売後の運営といった要素が重要になると考えられます。

さらに、高品質なタイトルがひしめく格闘ゲーム市場の競争激化も、新規タイトルが確固たる地位を築く上での障壁となったかもしれません。加えて、サウジアラビアからの大規模な資本投下は、SNKに対して早期に結果を出すことへの強いプレッシャーとなり、経営判断に影響を与えた可能性も考慮されるでしょう。

SNKの今後の課題とゲーム業界への示唆

松原CEOのリーダーシップのもと、SNKが開発力強化やグローバル展開を進めてきたことは事実であり、その功績は大きいです。しかし、今回のCotWの事例は、潤沢な資金と大規模なマーケティングさえあれば必ずしも市場で圧勝できるわけではない、というゲームビジネスの難しさを改めて浮き彫りにしたと言えるかもしれません。

新体制下でSNKはどのような舵取りを行っていくのでしょうか。まずはCotWの販売テコ入れ策や、長期的な運営戦略が注目されます。また、同社が保有する「ザ・キング・オブ・ファイターズ」や「サムライスピリッツ」、「メタルスラッグ」といった豊富なIP群を、今後どのように活用し、収益に繋げていくのか、その戦略にも注目が集まっています。

情報元:VGC

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