PlayStation Studiosの新ファーストパーティスタジオ「Dark Outlaw Games」が、生成AIを活用したAAAタイトル開発に挑戦。元「Call of Duty」開発者ジェイソン・ブランデル氏が率いる。Deviation Gamesの閉鎖から何を学び、AIによるコンセプトアートをどう実現するのか、その動向に注目が集まります。
新スタジオ「Dark Outlaw Games」AAAタイトル開発へ
ソニー・インタラクティブエンタテインメント（SIE）のPlayStation Studiosが2025年に設立を発表した、米国ロサンゼルスの新ファーストパーティスタジオ「Dark Outlaw Games」。このスタジオが、デビュー作となる大型AAAタイトルの開発に向け、生成AIの専門知識を求めるシニアコンセプトアーティストの募集を開始し、業界内外で大きな話題を呼んでいます。
スタジオを率いるのは、Treyarchで「Call of Duty: Black Ops」シリーズのキャンペーンや「ゾンビモード」を手掛けたベテラン開発者、ジェイソン・ブランデル氏です。彼は2020年にTreyarchを退社後、同じく「Call of Duty」シリーズの開発経験者デイブ・アンソニー氏と共に「Deviation Games」を設立しました。PlayStationと提携し、新規IPのAAAアクションゲーム開発に着手しましたが、ブランデル氏が2022年に退社。その後、Deviation Gamesは2023年に約90人以上の大規模レイオフを経験し、最終的に2024年3月、ゲームをリリースすることなく閉鎖しました。この閉鎖理由は公式に明かされていませんが、創造的相違、財政的圧力、プロジェクト管理の問題などが推測されており、その不透明さが業界に不信感を残しました。
ブランデル氏が新たにDark Outlaw Gamesで再起を図る中、スタジオは「効率的で無駄のない開発プロセス」を掲げ、生成AIを中核に据えた革新的なアプローチを採用しています。PlayStationの支援とAI活用の先進的な取り組みが、大きな注目を集めています。
生成AIスキルを必須とするアーティスト募集
The Game Postが報じた求人情報によると、Dark Outlaw Gamesはシニアコンセプトアーティストに対し、Midjourney、Stable Diffusion、ChatGPTなどの生成AIツールの「高度な専門知識」を必須要件としています。求人には「人間のアーティストと生成AIツールの両方で作成された2Dアートワークを洗練し、仕上げる能力」が求められており、AIを制作パイプラインの中核に位置づける姿勢が明確です。例えば、Midjourneyで生成した初期の環境デザインを基に、アーティストが詳細なテクスチャやライティングを調整するプロセスが想定されます。このような直接的なAI要件は、ゲーム業界でも先進的な事例と言えるでしょう。
シニアコンセプトアーティストの役割
求人情報によると、シニアコンセプトアーティストの主な職務は以下の通りです。
- キャラクター、環境、武器、UIなどの高品質なコンセプトアートを、プロジェクトの芸術的ビジョンに沿って開発する。
- デザイン、プログラミング、外部パートナーと連携し、効果的なコミュニケーションを図る。
- 社内外のアーティストに対し、スタイルガイドやフィードバックを提供し、芸術的一貫性を維持する。
- アートディレクターを補佐し、ゲームのビジュアルアイデンティティや伝承を構築する。
これらの役割は、AIツールと伝統的なアート技術を融合させ、効率的かつ革新的な開発プロセスを支えるものです。
Deviation Games閉鎖の教訓
PlayStationとの提携にもかかわらず、Deviation Gamesのプロジェクトは日の目を見ずに閉鎖しました。その理由の不明瞭さは、ゲーム業界に衝撃と不信感を与えています。業界では、ブランデル氏とアンソニー氏の創造的相違、資金不足、またはプロジェクトの方向性の不一致が原因と推測されていますが、公式発表がないため憶測が飛び交っています。
2023年のレイオフ（約90人以上）や2024年の閉鎖は、ゲーム業界全体の厳しい状況（2023年に約10,500人、2024年に7,500人以上のレイオフ）を反映しており、Dark Outlaw Gamesへの期待と不安を増幅させています。この過去の経験から、Dark Outlaw Gamesが「効率的で無駄のない開発プロセス」を目指す背景には、より堅実なプロジェクト管理と、AIによるリソース最適化への強い意図があると考えられます。
ゲーム開発におけるAI活用の最前線
生成AIの導入は、ゲーム業界全体で加速しています。例えば、Epic Gamesは「フォートナイト」でダース・ベイダーの音声をAIで生成し、Bungieは社内ツール「BunGPT」をコードや物語制作に活用しています。Dark Outlaw Gamesの取り組みは、AAAタイトルのアート制作パイプラインにAIを統合する、まさに先駆的試みです。AIはコンセプトアートの初期案作成時間を最大50%短縮する可能性があると指摘されており、最終仕上げではアーティストの独自性が求められるため、伝統的な技術との融合が成功の鍵となるでしょう。
議論と今後の展望
生成AIの導入は、ゲーム開発の効率性と創造性を飛躍的に向上させる可能性を秘めていますが、伝統的なアート技術の価値やクリエイターの雇用への影響を懸念する声も存在します。AIによる自動生成がアーティストの役割を補助する一方、ゲーム独自のビジュアルアイデンティティを維持するには人間の創造性が不可欠です。
Dark Outlaw Gamesが、ジェイソン・ブランデル氏の豊富な経験とPlayStationの強力な支援を背景に、AIを活用した革新的なAAAタイトルを生み出すのか、業界全体が注目しています。この挑戦が成功すれば、ゲーム開発の未来を再定義する先例となる可能性を秘めています。Deviation Gamesの教訓を活かし、ブランデル氏がどのようなビジョンを実現するのか、その動向から目が離せません。
情報元：The Game Post
