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ソニー、マルチプラットフォーム戦略を本格化 ― 新たな統括職を新設

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ソニーがPlayStationの人気タイトルをXboxやNintendo Switchといった他社プラットフォームへ展開する戦略を本格化します。この動きを裏付けるように、戦略を専門に統括する管理職の求人が新たに公開されました。ゲーム業界の構造変化に対応し、IPを軸としたビジネスへ移行する姿勢の表れとみられます。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、PlayStation Studiosのタイトルを他社プラットフォームへ展開する戦略を本格化させます。同社の採用情報で、競合のSteam、Epic Games Store、Xbox、Nintendo、およびモバイルなどへの展開を統括する上級管理職の求人が公開されたことから、この動きが明らかになりました。

統括職新設が示す戦略転換の真意

ソニーが公開した「Sr Director, Multiplatform & Account Management」(マルチプラットフォーム&アカウント管理担当シニアディレクター)の求人では、この役職の職務を「PlayStationハードウェア以外の全デジタルプラットフォームにおいて、PlayStation Studiosのタイトルの商業戦略をグローバルに主導する」ことだと説明しています。

注目すべきは、対象プラットフォームに「Xbox」や「Nintendo」といった競合ハードが明記されている点です。ソニーはこれまでもPCへの展開を段階的に進めてきましたが、今回は長年のライバルである家庭用ゲーム機も明確に含めており、これは同社の戦略における大きな転換点と言えるでしょう。

この役職は、年収が最大で36万9000ドル(約5,800万円※)に達する、重要なポジションです。その職務は、パートナー企業との関係構築、販売戦略の策定、収益の最適化など、事業の商業面を包括的に担います。具体的には、PlayStation Studiosのミッドレンジからロングレンジの商業戦略を監督し、長期的な収益成長と顧客獲得を推進することも含まれます。さらに、複数の部門長を束ねる立場であることから、このマルチプラットフォーム戦略が一時的なものではなく、事業の柱として本格的に推し進められることを示しています。

※1ドル157円で換算

業界構造の変化とソニーの対応

この戦略転換の背景には、ゲーム業界の構造的な変化があります。近年のゲーム市場では、ユーザーが一度特定のプラットフォームに定着すると、購入したダウンロードソフトなどのデジタル資産があるため、他社のゲーム機へ移行しにくい傾向が指摘されています。このような環境では、自社の強力なIP(知的財産)をより多くのユーザーがいるプラットフォームへ届けることが、収益を最大化するための合理的な選択肢となります。例えば、「Days Gone」や「Ghost of Tsushima」のような、PlayStationで高い評価を得た過去のタイトルも、他社プラットフォームでの需要が見込まれます。

実際、ソニーは『Helldivers 2』をPlayStation 5とPCで同時発売し、大ヒットを記録しました。さらに、同タイトルのXbox版もリリースが予定されており、ソニーのマルチプラットフォーム戦略がすでに実行段階にあることがうかがえます。

また、ゲームがNetflixTikTokFortniteといった他の巨大エンターテインメントとユーザーの時間を奪い合うようになった現代の市場環境も、この変化を後押ししています。ソニーは従来のハードウェア中心のビジネスから、強力なIPを軸とするソフトウェア・サービス主体のビジネスへと本格的に移行しようとしています。今回の動きは、そうした業界全体の構造変化に対応するためのものと見てとれるでしょう。

ある業界アナリストは、この戦略転換について「ユーザーがいる場所でサービスを提供し、市場での存在感を維持しながら収益機会を最大化する必要がある」と分析しています。今回のソニーの取り組みは、まさにこの業界の大きな潮流に乗るための、明確な意思表示と言えそうです。

ハードウェアの枠を超えたIP戦略

商業管理担当副社長に直属するこの統括職のもと、今後PlayStationの主要タイトルをいつ、どのプラットフォームへ展開するかの意思決定が、より戦略的に行われていくことになります。「ゴッド・オブ・ウォー」や「The Last of Us」といった人気シリーズが他社プラットフォームへ展開される可能性もあり、その動向には業界全体から大きな注目が集まります。

この動きは、ゲーム事業単体の戦略に留まりません。ソニーは近年、KADOKAWAバンダイナムコといった有力IPを持つ企業との提携を強化しています。これは、ゲーム事業にとどまらず、映画・音楽・アニメといったグループ全体のIP価値を最大化し、コンテンツとテクノロジーを融合させた総合エンターテインメント企業を目指す、全社的な戦略の一環です。

同社はエンターテインメント事業のさらなる拡大を志向しており、この戦略がソニーの長期的な競争力に与える影響が今後の焦点となります。

情報元:Sony-job-boards

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