
大ヒット作「黒神話:悟空」に続き、開発元のGame Scienceがシリーズ新作「黒神話:鍾馗」を発表。本作が直接の続編ではない背景には、成功に安住せず「より大胆な機能への挑戦」と「過去の欠点の克服」を目指す、クリエイターとしての強い意志が込められています。
Gamescomでのサプライズ発表
2025年8月20日、欧州最大級のゲームイベント「Gamescom Opening Night Live 2025」にて、世界的なヒット作「黒神話:悟空」の開発元Game Scienceが、シリーズ最新作「黒神話:鍾馗(しょうき)」(海外名:Black Myth: Zhong Kui)を正式発表しました。
この発表は、「悟空」の続編やDLCを期待していたファンや業界関係者を驚かせましたが、それは失望ではなく、シリーズの新たな展開への期待感を高めるものでした。
「黒神話:鍾馗」とは
「黒神話:鍾馗」は、前作「黒神話:悟空」の世界観を受け継ぐ、中国の神話伝承を題材としたシングルプレイ・アクションRPGです。開発は引き続きGame Scienceが担当し、Unreal Engine 5を採用。販売形式も前作同様、買い切り型となる予定です。
本作の主人公「鍾馗」は、奔放で予測不能な孫悟空とは対照的に、天帝や冥府に任命され、鬼や悪霊を裁く権限を与えられた「神聖な役人」として描かれます。日本では魔除けや学業成就の神としても知られますが、その伝説は悲劇的な誓いから始まります。

唐の時代、官吏登用試験に落第したことを恥じて自害した鍾馗は、皇帝に手厚く葬られた恩に報いるため、「天下の妖魔を討伐する」という永遠の誓いを立てたとされます。特に、病に伏した玄宗皇帝の夢に現れて悪鬼を退治したという逸話は、彼の「邪を祓う神」としての側面を象徴しています。
この主人公の設定は、前作「黒神話:悟空」とはまったく異なるゲーム体験を予感させます。孫悟空が、伸縮する如意棒と七十二変化の術を駆使したスピード感のある戦いだったのに対し、鍾馗は剣を手に、よりどっしりと構えた、威厳のある戦闘スタイルになると考えられます。
伝説では鬼を従えていたとも言われており、ただ剣で戦うだけでなく、神通力で悪霊を操ったり、敵の技を自分のものにしたりするような、まったく新しい戦略性が楽しめるかもしれません。
公開されたCGトレーラーでは、陰鬱でありながらも荘厳な雰囲気が強調され、鍾馗が背負う使命の重さが伝わってきます。プレイヤーは単なる冒険者ではなく、冥府の理を代行する「鬼狩りの神」としてどのような裁きを下すのか、その物語に大きな期待が寄せられています。
なぜ続編ではないのか
「黒神話:悟空」は発売3日間で1,000万本、初月で2,000万本を売り上げ、Steamの同時接続プレイヤー数で歴代2位を記録するなど、商業的・批評的に大きな成功を収めました。そのため、多くのファンは直接的な続編を期待していました。
しかし、Game Scienceはあえて異なる道を選びました。公式サイトのFAQで、開発チームは「より特徴的なゲーム体験の構築、大胆な機能への挑戦、そして世界観や物語への新たなアイデアの導入」を目指していると説明しています。
「鍾馗」という題材は、その目標を実現するための選択であり、開発チームは「過去作の課題を踏まえつつ、新鮮な変化と創造をもたらす」と自信を見せています。これは、成功体験の再現に留まらず、常に進化を追求するクリエイター精神の表れと言えるでしょう。
一方で、Game Scienceは「西への旅はここで終わりません」とも述べており、「悟空」の物語が将来的に描かれる可能性も示唆しています。
開発の現状と見通し
発表された「黒神話:鍾馗」ですが、開発はまだごく初期の段階です。開発元が「プロジェクトは空のフォルダに少し手を加えた程度」と語るように、ストーリーの概要も未定です。具体的なゲームプレイ映像や発売時期が明らかになるまでには、まだ時間を要するでしょう。

対応プラットフォームはPCおよび「主要な家庭用ゲーム機」とされていますが、詳細は後日発表予定です。前作のXbox版がPlayStation 5版の1年後に時限独占でリリースされた前例を踏まえると、本作もプラットフォームによって発売時期が異なる可能性があります。
中国発AAAタイトルの次なる一手
「黒神話:悟空」は、中国のゲームスタジオが世界市場に通用するAAAタイトルを開発できると証明した作品です。開発元のGame Scienceは「世界水準の品質で、中国の物語を語る」をモットーとしており、「鍾馗」では前作で培った高品質なビジュアルとアクションのさらなる進化が期待されます。
中国ゲーム市場の成長を背景に、Game Scienceの新たな挑戦は世界中から注目されています。
