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コジプロ10周年で明かされた次世代エンタメ計画 ― 「OD」「Physint」新情報

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コジマプロダクションの10周年戦略が明らかに。新作「OD」「Physint」はゲームの枠を越え、映像との境界を破壊する挑戦。「デス・ストランディング」はA24との実写映画、アニメ、NianticのARゲームへ展開し、IP価値を最大化する新モデルを提示します。小島秀夫が仕掛ける未来とは。

イベント概要

コジマプロダクションは2025年9月23日、設立10周年記念イベント「Beyond the Strand」を東京・六本木ヒルズで開催しました。登壇した小島秀夫監督は、この10年を振り返り、スタジオが現在「フェーズ2」の段階にあると説明。さらにその先、「フェーズ3」までを見据えた長期的な構想を明かしました。現在進行中の「フェーズ2」では、今年6月26日に発売された「DEATH STRANDING 2」をはじめ、新作「OD」や「Physint」、「デス・ストランディング」の映像化など、多角的な挑戦が進められています。

新作ホラー「OD Knock」

イベントでは、Xbox Game Studiosとの提携による新作ホラー「OD」の最新映像が披露されました。「Knock」というサブタイトルが冠された本作は、小島監督自身の「ノック音への恐怖」がテーマ。監督は「個人的な恐怖体験をゲームデザインの核心にした」と語っています。

公開された約3分間のトレーラーでは、女優ソフィア・リリスが演じる主人公が、一人称視点で儀式のような行為に臨みます。しかし、ろうそくから血やワームが現れるなど、映像は次第に超自然的な恐怖に満ちていきます。

マイクロソフトのゲーム部門を率いるフィル・スペンサー氏も登壇。「小島さんのビジョンを世界中のプレイヤーに届ける」と語り、マイクロソフトによる全面的な技術サポートを約束しました。

制作にUnreal Engine 5が採用された背景には、Sony所有のDecimaエンジンが使えないという事情があります。しかし、そのMetaHuman技術により、ソフィア・リリスの震える唇や視線の動きといった微細な表情まで完璧に再現。小島監督が「世界で初めてお化けを3Dスキャンして賞を取りたい」とジョークを飛ばすほどの技術的な進歩を見せています。

俳優陣にはソフィア・リリス、ハンター・シェイファー、ウド・キアに加え、映画監督のジョーダン・ピールの名も。ただし、ピールはプロジェクトの別パートに関わるとされており、「Knock」は小島監督が直接手掛けるパートを指すものと見られます。また開発状況については、2024年のSAG-AFTRAストライキの影響で一時撮影が中断したものの、現在は再開され順調に進んでいることにも触れられました。

ステルスアクション新作「Physint」

PlayStation Studiosと共同開発する完全新規IPのステルスアクション「Physint」のコンセプトアートが初公開されました。「Here Comes the Feeling」というタグラインと共に、サブマシンガンを持つ主人公らしき影が描かれています。本作は、小島監督の原点である「メタルギアソリッド」の精神的後継作と位置づけ、次世代のタクティカル・エスピオナージ・アクションを目指します。

小島監督は「ゲームと映画の壁を打ち破る」グラフィックを目指すと語り、開発はまだ構想段階であると説明。今後、主演を含むキャストを追加発表する予定です。

現時点で発表されたキャストは、チャーリー・フレイザー、ドン・リー(マ・ドンソク)、浜辺美波の3名。特に、浜辺美波をモデルにしたリアルな顔のCGデモが披露され、次世代の映像技術を示しました。小島監督は「好きな人たちと働くことで長生きできる」と語り、キャスティングへの強いこだわりを見せました。

PlayStation Studiosのヘルマン・ハルスト氏はビデオメッセージで、「本作はPlayStationとコジマの30年にわたるパートナーシップを支えてきた創造性と野心から生まれる」と述べ、大きな期待を寄せました。

とはいえ、完成までは長い道のりとなりそうです。小島監督は以前「完成に5〜6年かかる可能性がある」と述べています。また、現在はスタジオの主力が「OD」開発に集中しているため、本格的な制作はまだ先になると見られます。

広がる「デス・ストランディング」の世界

「デス・ストランディング」は今後、映画やアニメなど複数のメディアでその世界を広げていきます。

実写映画化

A24と共同で製作される実写映画版では、「クワイエット・プレイス」や「PIG/ピッグ」で知られるマイケル・サーノスキ監督が登壇しました。サーノスキ監督は「ゲームの魂とテーマを捉えつつ、まだ誰も見たことのない物語とキャラクターを探求したい」と説明。映画はゲームを要約するのではなく、新たな登場人物と舞台を通して世界観の本質に迫るオリジナルストーリーになると明かしました。

小島監督も「70~80時間のゲームを2時間の映画に縮めたくない。この世界観で全く違う物語を作ることが重要だ」と語り、映画版の独立性を重視する考えを示しました。

アニメ化

また、完全オリジナルストーリーのアニメ作品「Death Stranding: Mosquito」の制作も発表されました。脚本を「プリズナーズ」のアーロン・グジコウスキ、監督を宮本宏彰氏が担当。制作はABC Animation Studioが手掛けます。公開されたティザー映像では、ゲームとは異なる墨絵のようなタッチのキャラクターと、独自のアートスタイルが確認できます。

脚本のグジコウスキ氏は、「長年尊敬してきた小島秀夫氏から、この豊かで心を揺さぶる世界に新しい物語を生み出す機会を与えられたことに、大変興奮し、光栄に思います」とコメントを寄せました。

ARプロジェクト

さらに、Nianticとの提携によるAR(拡張現実)プロジェクトも発表されました。このプロジェクトは、「ポケモンGO」で知られるNianticの地理空間情報プラットフォームを活用し、「デス・ストランディング」の世界観を現実世界に拡張する体験を目指します。

登壇したNiantic創業者のジョン・ハンケ氏は、同社が地理空間AI事業に特化する「Niantic Spatial」とゲーム部門に分かれたことを説明。「これからの時代、スマートグラスからロボットまで、機械が物理世界を理解するための新しい地図が必要になる」と語りました。

ティザー映像では、スマホやスマートグラスを通して現実世界に現れる仮想オブジェクトと触れ合う様子が描かれ、「デス・ストランディング」のカイラルネットワークを現実で体験できる可能性を示唆しています。

今後の展望

イベントの後半では、「マッドマックス」のジョージ・ミラー監督、「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ監督、「攻殻機動隊」の押井守監督という豪華な顔ぶれが登壇。ジェフ・キーリー氏の司会のもと、エンターテイメントの未来を語る座談会も開かれました。

今回の発表は、コジマプロダクションがプラットフォームやメディアに捉われず、ゲーム、映画、アニメ、AR、さらにはクレジットカード伝統産業とのコラボレーションといった多様な分野で独自のビジョンを追求する姿勢を改めて示すものでした。

特筆すべきは、プロジェクトごとに協業相手を変えている点です。「OD」はマイクロソフト、「Physint」はソニー、「映画版」はA24、「AR」はNiantic、そして「クレジットカード」は三菱UFJ銀行、「日本酒」は清水清三郎商店というように、各分野の専門企業と組むことで、技術革新と創造的な自由を両立させています。

マイクロソフトのスペンサー氏が「ゲームプレイ、ストーリー、エンゲージメントにおいて革新を続けている」と評したように、小島監督はエンタメ業界で新たな時代を築く存在としての地位を確固たるものにしています。

コジマプロダクションのこうした多角的なアプローチは、今後、IP(知的財産)の価値を最大化するクロスメディア展開の新たなモデルケースとして、業界に大きな影響を与えていくことでしょう。

さらに小島監督は、10年後を見据えた「フェーズ3」の構想にも言及。「新しいテクノロジーを駆使し、未来のファンに向けた刺激的な施策を、世界中の才能ある人々と共に模索・協力していきたい」と語り、スタジオの次なる挑戦への意欲を示しました。

情報元:Eurogamer

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