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KraftonがAI First企業へ ─ 1000億ウォン超の巨額投資で目指す未来と倫理

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「PUBG」や「Subnautica」で知られるKraftonが「AI First」企業へ転換宣言。GPUクラスタ構築に1000億ウォン(約108億円)、2026年以降は毎年300億ウォン(約32.4億円)を投じ、全社的な開発自動化・組織改革を実施。業界の最先端を走る一方で、生成AI倫理・AIバブルなど課題視されるリスクをどう乗り越えるのか?

Krafton、「AI First」戦略で業界変革に挑む

「PUBG: BATTLEGROUNDS」で世界的に知られる韓国の大手ゲームパブリッシャーKraftonは、2025年10月23日に「AI First」企業への転換を正式に発表しました。同社はNVIDIA B300など最新GPUによる大規模クラスタ構築に約1000億ウォン(約108億円)を投じ、さらに2026年以降は毎年約300億ウォン(約32.4億円)の予算を確保。開発から組織運営に至るまで、あらゆる領域でAI活用を最優先に進める方針です。この大胆な投資は、ゲーム業界に大きなイノベーションをもたらす可能性がある一方、期待と同時に、業界内外から様々な課題も指摘されています。

AIで実現する自動化と創造性の両立

Kraftonのキム・チャンハンCEOは、今回の戦略の核心について「AIを課題解決の中核に据え、従業員が創造活動や複雑な問題解決に一層集中できる環境を実現する」と強調しています。このビジョンの要となるのが、目標設定から計画、実行までを自律的に行う「エージェントAI(Agentic AI)」の導入です。この先進的なAIを活用し、開発パイプラインや日常業務の多くを自動化することで、人間のクリエイターがより高度で創造的な作業に専念できる体制を目指します。

組織改革と全社AIインフラの構築

壮大なビジョンを実現するため、Kraftonは具体的な計画も提示しています。2026年下半期までにAIワークフローと連携する管理プラットフォームや、社内のデータを標準化する体制など、全社的なAI運営インフラを整備します。

同時に、従業員一人ひとりがAIを使いこなせるよう、社内教育にも大規模な投資を行います。学習支援プラットフォーム「AIラーニングハブ」の設置や、実践的なスキルを磨くための社内イベントを継続的に開催し、企業文化レベルでAI活用を根付かせていく計画です。

PUBGやHiFi Rushはどう変わるか?

AI Firstへの転換は、「PUBG」や、買収したTango Gameworksが手掛ける「Hi-Fi Rush」といった主力IPにも大きな影響を与えます。

「PUBG」では、AIによる高度なチート行為の検知、プレイヤーのスキルに応じた最適なマッチメイキング、膨大なプレイデータ解析に基づくゲームバランスの自動調整などが期待されます。将来的には、AIがマップやイベントを自動生成し、プレイヤーに常に新しい体験を提供する、といった可能性も指摘されています。

「Hi-Fi Rush」のような独創性が求められるタイトルにおいても、アニメーション制作の補助やサウンド生成、バグの発見・修正といった領域でAIが開発者を支援するでしょう。これにより、クリエイターは品質を妥協することなく、より革新的な表現に挑戦しやすくなると期待されています。

業界全体の潮流とKraftonの立ち位置

ゲーム開発におけるAI活用は、すでに世界的な潮流です。スクウェア・エニックスはAIの積極的な適用を掲げ、レベルファイブやカプコンも独自のAI研究開発を進めています。セガも社内にAI専門チームを擁するなど、各社がクリエイター支援や開発効率化を目指しています。

その中でKraftonの戦略が際立っているのは、特定技術の部分的な導入に留まらない点です。巨額の投資でインフラを整備し、全社的な教育制度や組織改革までを一体で進める「包括的」なアプローチは、企業文化そのものをAI中心に変革しようとする強い意志の表れと言えるでしょう。

生成AIの倫理的課題と法的リスク

AI、特に生成AIの活用が広がるにつれて、その倫理的な課題も浮き彫りになっています。AIが生成したグラフィックやシナリオが、既存の著作物を無断で学習していないかという著作権の問題や、AIが人間の仕事を代替してしまうことへの懸念は、国際的に大きな議論となっています。

実際に、ゲーム開発者会議(GDC)の調査では、開発者の84%が生成AIの利用に「倫理的な懸念がある」と回答しています。AI技術がゲーム業界で広く受け入れられるためには、こうした法的・倫理的な課題に対し、企業が慎重な姿勢で向き合い、明確なガイドラインを整備することが不可欠です。

「AIバブル」と投資リターンの不確実性

現在、AI関連市場には世界中から莫大な資金が流れ込んでいますが、一部の専門家はその過熱ぶりを2000年代初頭の「ドットコム・バブル」になぞらえ、警鐘を鳴らしています。AIへの期待が先行する一方で、多くの企業が投資に見合うだけの利益を上げられていないという現実があり、AIツールを導入した結果、かえってコストが増大してしまったという報告も散見されます。

Kraftonの巨額投資も、こうした経済的なリスクと無縁ではありません。AI活用から確実にリターンを生み出し、持続的な成長につなげられるか、その手腕が問われることになります。

AIと人間の未来——Kraftonの挑戦が業界指標に

Kraftonが掲げる「AI First」戦略は、開発の効率化、創造性の追求、そして組織のあり方までを同時に変革しようとする野心的な挑戦です。その成功は、クリエイターとの新たな協働モデルを築き、プレイヤーに新しい価値を提供できるかにかかっています。

同社の取り組みは、ゲーム業界におけるAIと人間の共存のあり方を占う重要な試金石となるでしょう。その成否は、今後の業界標準を形作る指標として、世界中から注目されています。

情報元:krafton.comVGC

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