
開発中止となった「デッドライジング5」の未公開情報が、元開発者の証言により明らかになりました。Unreal Engine採用の背景、環境破壊を伴うボス戦、そして地形に依存しないミニボスのAI設計など、幻のプロジェクトが目指した技術的アプローチについて詳報します。
カプコンの人気アクションゲーム「デッドライジング」シリーズにおいて、以前からその存在と開発中止が知られていた幻のナンバリングタイトル「Dead Rising 5(デッドライジング5)」に関する新たな技術的詳細が明らかになりました。
ポルトガルで開催された開発者向けカンファレンス「DevGAMM」にて、同作の開発に携わったマリー・メイヤーウォール(Marie Mejerwall)氏が海外メディアGame Reactorのインタビューに応じました(2025年11月報道)。過去の報道によると、「Dead Rising 5」はカプコン・バンクーバースタジオで開発されており、同スタジオは2018年に閉鎖されています。メイヤーウォール氏は同プロジェクトでNPC(ノンプレイヤーキャラクター)チームに所属し、ボス戦のレベルデザインと挙動設計を担当していました。
本稿では、彼女の証言と関連報道を基に、日の目を見ることのなかった「Dead Rising 5」が目指していた技術的な方向性と、ゲームデザインの仕様について整理します。
開発エンジンの選定とUE5に関する証言
注目すべき点の一つは、開発環境に関する証言です。メイヤーウォール氏は、中止された「デッドライジング5」がEpic Gamesの「Unreal Engine 5(UE5)」を使用して開発されていたと述べています。
ただし、技術的な時系列に関しては補足が必要です。カプコン・バンクーバーが閉鎖されたのは2018年9月であり、Unreal Engine 5が正式に発表されたのは2020年です。このため、彼女の発言は「Unreal Engine 4」の言い間違いであるか、あるいは当時カプコンがEpic Gamesと連携し、次世代技術のプロトタイプを先行して検証していた可能性が考えられます。
いずれにせよ、カプコン内製エンジン(MT Framework等)ではなく、汎用エンジンの採用が進められていた点は重要です。これは、より写実的なレンダリングと、動的な物理演算処理の実装を意図していたことを示唆しています。
階層化された敵AIと「場所を選ばない」ミニボス
メイヤーウォール氏は、敵キャラクターを単調にしないため、その強さと賢さに応じて明確なランク付け(階層化)を行っていたと語ります。
最下層には、知能が低く本能で襲ってくる一般的なゾンビ。その上には、より賢く連携を取る敵や、防具で身を固めた重装タイプが存在します。そして、それら雑魚敵を統率する最上位の脅威として設計されていたのが「ミニボス」です。
特に革新的だったのが、このミニボスの挙動です。メイヤーウォール氏は、彼らを人気ゲーム「バットマン:アーカム」シリーズに登場する中ボス(リューテナント)のような、一般兵とは一線を画す強力な存在と位置づけていました。
最大の特徴は、彼らが「特定の場所に縛られない」という点です。
従来のゲームにおけるボス敵は、特定の部屋や広場(アリーナ)でプレイヤーを待ち構えているのが通例でした。しかし本作のミニボスは、特定の地形データに依存しない自律的なAIを持っており、マップ上のあらゆる場所を自由に徘徊し、プレイヤーを追跡できるよう設計されていたのです。
つまり、プレイヤーは探索中、いつどこで強力な中ボスに襲撃されるかわからない状態に置かれます。これは、「デッドライジング4」で廃止され批判を浴びたシリーズの名物敵「サイコパス」を、単に戻すだけでなく、次世代のAI技術によって「予期せぬ場所で遭遇する恐怖の存在」へと進化させようとした試みと言えるでしょう。
環境破壊を伴う動的なボスアリーナ
大規模なボス戦においては、単に強い敵と戦うだけでなく、「戦場そのものがリアルタイムに変化する」という野心的なギミックが導入されていました。
メイヤーウォール氏はその具体例として、「寺院」を舞台にした戦闘を挙げています。
「戦いが進むにつれて寺院が徐々に崩壊していき、状況がより緊迫したものへと変化していくのです」
これは単なる背景演出にとどまりません。ボスのAIは戦闘の進行(および環境の変化)と連動しており、ダメージを受けるにつれて激昂し、攻撃パターンを変化させます。
それと同時に、寺院の柱が倒壊したり、壁が崩れたりすることで、プレイヤーは身を隠す遮蔽物や安全な足場を次々と奪われていきます。つまり、同じ戦法で戦い続けることはできず、刻一刻と悪化する状況に合わせて、臨機応変に戦略を変えることが求められる設計だったのです。
なお、過去のリーク情報によると、「デッドライジング5」は「Dia De Los Muertos(死者の日)」という副題で、メキシコを舞台に「デッドライジング2」の主人公チャック・グリーンとその娘ケイティが登場する予定であったとされています。今回語られた「寺院(古代遺跡)」というロケーションは、このメキシコ舞台説とも符合します。
スタジオ閉鎖と現在の動向
これらの野心的な仕様を含んだ「デッドライジング5」は、2018年のスタジオ閉鎖と共に開発中止となりました。メイヤーウォール氏は「本当に幅広い種類の敵タイプと、豊かなバリエーションがありました。あのゲームに取り組むのは楽しかったですし、日の目を見なかったのは残念です」と振り返っています。
現在、カプコンは「デッドライジング デラックスリマスター」をリリースし、シリーズの再展開を図っています。今回明らかになった情報は、シリーズが単なるゾンビ無双に留まらず、AI技術や物理演算を活用した次世代のアクションゲームへの進化を模索していた歴史的事実を示すものです。
シリーズ完全新作に関する噂
「デッドライジング5」は幻となりましたが、シリーズの系譜を継ぐ新たな動きも報じられています。
海外メディア「MP1st」は最近、独自の情報筋からの話として、カプコン内部で「デッドライジング」の完全新作が開発中であると報じました。記事によると、このプロジェクトはコードネーム「Rec」と呼ばれており、以下の要素が含まれるとされています。
初代主人公「フランク・ウェスト」が復帰し、舞台は閉鎖された「ハリウッド」の映画スタジオとなります。メインの敵対者は狂気の映画監督(作中の架空ヴィラン)で、フランクや他の生存者たちを様々な試練に追い込み、「完璧な映画」を撮影しようとします。シリーズの象徴的存在であるサイコパスも登場し、時には監督の手下として行動する場合もあるとのことです。また、フランク・ウェストの特徴的な要素であるカメラ撮影機能や、シリーズ伝統の時間制限システムも復活する予定とされています。
現時点でカプコンからの公式発表はなく、これらはあくまで非公式な情報に過ぎません。情報の真偽や発売時期、プラットフォームなどの詳細は不明ですが、もし報道が事実であれば、「デッドライジング4」で賛否が分かれた要素を見直し、シリーズの原点回帰を目指す姿勢がうかがえます。今後の展開に期待しましょう。
情報元:Gamereactor・TheGamer

