
元ディズニー幹部のジャスティン・スカルポーネ氏が、ソニックやペルソナ等の有力IPを映画、グッズ、ライブイベントへ多角展開する手法を解説。ゲーム開発を核に、ディズニー流のビジネスモデルを取り入れ、グローバルなエンターテインメント企業への進化を目指すセガの挑戦とは?
レスリングで来日した「知日派」リーダーの原点
日本のゲーム業界を代表するセガ。現在、ビジネスモデルの大きな転換点を迎えています。2024年4月、同社のグローバル・トランスメディア事業を統括するトップに就任したのは、かつてウォルト・ディズニー・ジャパンなどで要職を歴任したジャスティン・スカルポーネ氏です。
日本を代表する企業の幹部としては異例の経歴を持つスカルポーネ氏。しかし、彼と日本との縁はビジネスとは無関係のところから始まりました。ニュージャージー州出身の同氏は6歳からレスリングを始め、高校時代にはチームの一員として日本ツアーに参加。1980年代中頃、これが彼と日本を結ぶ原点となりました。その後ニューヨークの大学で日本語を学び、京都で1年間を過ごした後、1991年には日本への永住を決断。現在56歳のスカルポーネ氏は、当時をこう振り返ります。「日本で働き、ここに拠点を置くことに決めたのです」
日本に定住後、スカルポーネ氏は総合商社大手の伊藤忠商事で最初の3人の非日本人正社員の一人として従事しました。5年間の勤務を経て、インターネット黎明期のスタートアップ企業に移籍した後、2002年にディズニーへ入社。17年間にわたり複数の事業部を統括しましたが、その中には「キングダム ハーツ」シリーズなどのヒット作を輩出したゲーム部門も含まれていました。
この時期に、現在セガの社長兼COOを務める内海州史氏と出会います。ディズニーを退社した後、スカルポーネ氏はロサンゼルスを拠点とするゲーム会社Scopelyに入社し、アジアオフィスの設立と運営を担当。これがフルタイムキャリアの最後の役職になると考えていたと語ります。「その後はコンサルタントとして働き、子どもたちともっと時間を過ごすつもりでした。でも内海氏は、まだ引退するには若すぎると言ったんです」
内海氏からの招聘を受け、スカルポーネ氏は2024年にセガのグローバル・トランスメディア責任者に就任。同社が保有する強力な知的財産(IP)を、ゲーム以外のメディアへと展開するプロジェクトの指揮を執るに至りました。
ソニック映画の成功と加速するIP多角化
ゲームファンにとって、セガは誰もが知る名前。象徴的な「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を筆頭に、同社のカタログには長年続く「ペルソナ」シリーズ、裏社会の抗争を描くアクションゲーム「龍が如く」シリーズ、さらには1980年代から90年代に人気を博した「Shinobi」「バーチャファイター」「ゴールデンアックス」といったタイトルも含まれています。
しかし日本のゲーム業界全体を見渡せば、愛されるキャラクターが他のメディアへと進出する動きが加速しているのは明らかです。任天堂による「スーパーマリオブラザーズ」映画や、ソニーの「Ghost of Tsushima」映画化などはその代表例でしょう。セガもこの潮流に決して遅れをとっていません。2020年から始まった映画「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズは、三部作全体で世界興行収入10億ドル(約1580億円)を突破する成功を収めるなど、その成果は顕著です。
東京・品川区のセガ本社。ここでスカルポーネ氏は、日本のゲーム史における重要企業が、象徴的なIPを新旧の視聴者に向けてどう変革し続けていくのか、その舵取りについて熱く語りました。
「ディズニー流」の導入と18ヶ月前ルール
「トランスメディアという用語自体は比較的新しいものですが、その概念はウォルト・ディズニーにまで遡ると言えるでしょう。彼がそれに構造を与え、産業全体にとって具体的なものにしたのです」とスカルポーネ氏は説明します。
「セガにおいて、私たちの中核となる強みはゲーム開発と販売です。そこから私たちのIPが生まれます。IPとは実質的に、キャラクター、環境、そして物語。この3つの要素が揃えば、それは様々なビジネスへと翻訳できるのです」
ディズニーの場合、起点はゲームではなく映画でした。しかし本質的には、個性を持ったキャラクターを魅力的な環境の中に配置し、物語を織り込むという点で共通しています。スカルポーネ氏は自身のディズニーでの経験をセガに同化させつつ、組織のプロセスを変えようと尽力しています。
例えば「18ヶ月前のリードタイム」がその一つ。2028年にゲームがリリースされるならば、理想的には主要な玩具メーカー向けのスタイルガイドを18ヶ月前に用意しておくべきだと彼は提言します。「ディズニーの人々はそれを知っています。でも私が最初にセガに入社したとき、スタッフは『ゲームが出荷されたら、素材を提供します』という感じでした。それでは1年半も遅すぎるのです。それが私たちが持ち込む必要がある組織的な専門知識の一部なのです」
ペルソナライブや欧州IPに見る世界戦略
セガの展開はグローバルかつ多角的です。映像分野では、子会社のトムス・エンタテインメントが「名探偵コナン」シリーズなどを手掛ける一方、海外スタジオとの連携を通じ、さらに高品質なアニメーション供給体制を強化しているところです。
物販・アミューズメントを担う「セガフェイブ」との連携や、渋谷に位置する「Sega Store」もファンとの重要な接点。また、直近の動きとして「アングリーバード」で知られるRovio社のライセンス事業をセガのトランスメディア部門に統合し、体制を盤石なものとしました。
ライブエンターテインメントの成功例が「ペルソナ」シリーズ。今月(2026年1月)にはロサンゼルスのドルビー・シアターで「Persona Live 2026: Awakenings」を開催。さらに今夏にはロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでの公演「Persona Grooves」も控えるなど、その勢いは止まりません。
加えて、スカルポーネ氏は「Total War」シリーズを擁する欧州スタジオを「巨大なファンコミュニティを持つ宝の島」と位置づけます。2025年12月にはGames Workshop社のライセンスに基づき、最新作「Total War: Warhammer 40,000」を発表。同作ではPC市場に加え、コンソール展開やローカライズの強化など、新たなファン層獲得に向けた野心的なアプローチがとられています。
「ゲーム会社」を超えたエンタメ企業へ
セガは今でも主にゲーム会社なのでしょうか。それともすでに多角的なエンターテインメント企業へと進化したのでしょうか。この質問に対し、スカルポーネ氏は明確な見解を示します。
「セガがテーブルを叩いて『私たちはゲーム会社だ!』と主張する理由はありません。人々は自然にセガをゲームと結びつけます。ディズニーはテーブルを叩いて『私たちは映画会社だ!』とは言いません。でも人々は、ディズニーが映画会社以上の存在であることを知っています。そして私たちも、ゲーム会社以上の存在であることを人々に知ってもらう道のりにあると思います。私たちは素晴らしいゲームを作りますが、人々は私たちの映画やアニメシリーズを見て、私たちのストアやコンサートに来ています」
これこそが目標であり、内海氏が抱く野望。それが内海氏が彼を招いた理由だとスカルポーネ氏は語るのです。
「私は、セガをゲームを核としたグローバル・エンターテインメント・カンパニーへと進化させることだと表現したいですね。それを達成したら、内海氏は私を引退させてくれるでしょう」
かつて日本のアニメやゲームに魅せられ来日した米国人エグゼクティブ。彼は今、日本の老舗企業であるセガに新たな「魔法」をかけ、世界市場でのプレゼンスを再定義しようと努めています。その挑戦は、セガという一企業の変革にとどまらず、日本のゲーム産業全体の未来を示唆するものかもしれません。
情報元:JapanTimes


