
「SILENT HILL 2」リメイクの成功で注目を集めるBloober Teamが、原点回帰となる「Layers of Fear 3」を正式発表。10周年イベントでの詳細情報に加え、リメイク版や続編が入り乱れるシリーズの複雑なリリース順と系譜を整理し、本作が位置する文脈を解説します。
近年、コナミとの提携による「SILENT HILL 2」リメイク版の世界的な成功、そして最新作「Cronos: The New Dawn」のリリースを経て、現代ホラーゲーム開発のトップランナーとしての地位を確固たるものにしたポーランドのスタジオ、Bloober Team。同社が、スタジオの評価を決定づけた原点であり、最も重要な自社IPであるフランチャイズへと回帰します。
2026年のバレンタインデー、同社はシリーズ誕生10周年を記念した特別配信イベントを開催し、最新作「Layers of Fear 3」を正式に発表しました。本作は2025年の大晦日から開始された謎めいたカウントダウンサイトの正体であり、スタジオが培ってきた「技術的洗練」と「心理的ホラーの深層」を融合させた、新たな最高傑作(マグヌム・オプス)への挑戦となります。
Layers of Fear 3の発表内容まとめ
「壁から決して離れないものがある。それらはただ、待つ術を学ぶのだ(Some things never leave the walls. They only learn to wait.)」
不穏なキャッチコピーとともに公開された実写トレーラー「The Sick Rose(病める薔薇)」は、ウィリアム・ブレイクの同名の詩を引用し、シリーズ特有の「芸術と破滅」のテーマをより色濃く提示しました。イベントに登壇したCEO、ピョートル・バビエノ氏は、シリーズがスタジオにとって「どのようなゲームを作りたいかを理解した瞬間を象徴する作品」であると語り、その遺産を称えました。
クリエイティブディレクターのマテウシュ・レナート氏は、本作が目指すのは「断罪ではなく共感」であると説明します。「プレイヤーを、精神が瓦解していく芸術家の深層心理へと没入させること。そこで求められるのは、深く人間的なホラー体験です。『Layers of Fear』は、あなたの内なる芸術家のためのゲームであり、深く踏み込むほど自分自身についての新たな発見がある旅なのです」
また、サウンドトラックはスタジオの盟友アレク・レイコウスキ氏が続投。「後悔、愛、記憶によって色付けられた感情的な核心」を伝えるべく、音楽が不可欠な役割を果たすことが強調されました 。
なぜ今「3」の発表が注目されるのか
本シリーズはリリース順と内容が入り組んでおり、今回の「3」がなぜ注目されるのか、その背景には過去作の特異な立ち位置があります。
「Layers of Fear」(2016年)
狂気に陥った「画家」がヴィクトリア朝の屋敷を探索する一人称視点ホラー。視界の外で部屋の構造がリアルタイムに変化する演出が、当時のホラーゲームに衝撃を与えました。MetacriticではPC版で72、Xbox One版で78といった好意的な評価を記録しています。
「Layers of Fear 2」(2019年)
舞台を豪華客船に移し、「俳優」を主人公に据えた続編。より抽象的で難解な物語へと舵を切り、Metacriticでは63〜70点台の評価となりました。一部で指摘された単調なチェイスシーンや即死イベントの課題は、後のスタジオの成長の糧となりました。
「Layers of Fear」(2023年)※通称:2023年版/リメイク版
ここが最も混乱を招きやすいポイントです。タイトルは初代と同じですが、中身は「初代」と「2」、そして全てのDLCをUnreal Engine 5の最新技術(Lumen、Nanite)でフルリメイクし、一本のソフトに統合した作品です。
さらに重要なのが、これらを繋ぐ新たな物語として「作家(The Writer)」のパートが追加された点です。この「作家」の物語が全体を統括する枠組み(フレームナラティブ)となり、シリーズを一つのサーガとして再定義しました。単なるリメイクではなく、シリーズの「完全版」あるいは「再構築版」と言える立ち位置です。*¹
*¹ 2023年版の「作家(The Writer)」パートを含むシリーズ再構成については、本記事の主要情報源(Layers of Fear 3発表関連記事)に直接の言及はありません。この情報はWikipediaおよびEscapist Magazine等の公開情報に基づきます。
「Layers of Fear 3」(今回発表の最新作)
そして今回発表されたのが、正統なナンバリングタイトルとなる「3」です。2023年版でシリーズの物語が一度統合・完結したかに見えましたが、Bloober Teamはそこからさらに新しい物語を紡ぎ出すことを選択しました。これは、過去の資産の再利用ではなく、スタジオが「SILENT HILL 2」のリメイク等で培った最新の技術と演出技法を用いて、完全に新しい恐怖を描こうとする意思表示と言えます。
注目すべきは、Bloober Teamが発表に先立ち「これはリメイクではない」と明言している点です。この言葉は、本作が完全な新規IPではなくシリーズ続編であることを確認しつつも、過去の再利用に留まらない完全新作であることを強調するものとして受け取ることができます。
コミュニティの反応とファン予測
今回の発表に至るまで、コミュニティでは様々な予測が飛び交いました。「Remothered」の新作、「Eternal Darkness」のリメイク、2012年以来続編のない「The Darkness」シリーズの復活など、複数の有力な説が浮上しました。
最有力だった「Rule of Rose」リメイク説
なかでも最も支持を集めたのが「Rule of Rose」のリメイク説でした。ティーザーで「Rose(バラ)」や「Rule(支配/ルール)」という単語が強調されていたためです。しかしスタジオ側はこれを否定し、さらに一歩踏み込んで「発表されるのはいかなるリメイクでもない」と声明を出しました。
結果として自社IPの続編であることが判明しましたが、この騒動は、Bloober Teamに対して「過去の名作ホラーを現代に蘇らせてくれる存在」としての期待がいかに高まっているかを示すエピソードとなりました。
今後の展開とメディアミックス
ゲーム本編に加え、メディアミックス展開も発表されました。ポーランドの出版社Foksalと提携し、ポーランドの作家たちによる複数の書籍が予定されており、その第一弾としてマルタ・ビジャン氏による小説が2026年後半に出版されます。また、サウンドトラックのフィジカル版リリースも計画されています。
現時点で対応プラットフォームや具体的な発売日は未定です。現在スタジオは本作のほか、コナミとの「SILENT HILL 1」リメイク、そしてNintendo Switch向け独占プロジェクト「Project M」など、複数の重要プロジェクトを並行して進めています。
10年を経て成熟したスタジオが、自らの原点である「画家の狂気」をどう再解釈し、進化させるのか。「Layers of Fear 3」は、単なる続編の枠を超え、現代ホラーゲームの新たな基準となる可能性を秘めています。

