
ブルームバーグのジェイソン・シュライアー氏が、ソニーによる「Ghost of Yotei」や「Saros」のPC版開発中止を報道。PS5独占戦略への回帰が示唆されています。Xboxもハードウェアへの再注力を掲げる中、両社の戦略転換はプラットフォームの囲い込み競争を再燃させることになるのでしょうか?
PS5独占回帰とPC戦略の見直し
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、近年のPCプラットフォームへの積極的な展開を転換し、主要なシングルプレイ作品を再びPlayStation 5(PS5)独占で展開する方針を固めたと報じられています。
ブルームバーグのジェイソン・シュライアー氏が関係者の情報として報じた内容によると、SIEは自社開発の主要タイトルに関するPC移植計画を撤回したとのこと。この方針転換により、注目作「Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)」や、Housemarque開発の新作「Saros」(4月30日発売予定)といった大型タイトルも、PC版は見送られPS5専用となる可能性が高まっています。
なお、本報道は現時点の関係者情報に基づくものであり、市場環境の変化に応じて将来的に方針が再考される余地も残されているとのことです。
ハードウェア販売への懸念
今回の戦略転換の背景には、SIE内部で「ブランド価値」と「ハードウェア販売」への懸念が強まったことがあると報じられています。
ソニーは2020年の「Horizon Zero Dawn」以降、「God of War」シリーズや「Marvel’s Spider-Man」シリーズなど、かつてはPlayStation独占だった主要タイトルを次々とPC向けにリリースしてきました。この戦略は、ソニーグループ社長の十時裕樹氏が2024年2月に掲げた「マルチプラットフォーム展開による利益率の改善」を目的としたものです。当時、十時氏は自社コンテンツをPC等へも展開することで、営業利益の向上に積極的に取り組む意向を明言していました。
しかし関係者によると、こうしたPC展開がPlayStationブランドの独自性を薄め、PS5本体や次世代機の販売機会を損なっているとの懸念が社内で浮上したといいます。
例えば、Housemarqueの「Returnal」は高い評価を得たものの、販売実績は期待に届かなかったとされています。また、PS5版から異例の短期間でPCへ移植された「Marvel’s Spider-Man 2」も、プロモーション不足が重なり販売は低調だったとの見方が出ています。これらの実績から、PC移植がコンソール販売を浸食する(カニバリゼーション)リスクを正当化できなかった、という社内評価につながった模様です。
背景には、「PC版を待てばプレイできる」という消費者心理の定着を防ぎ、魅力的な独占タイトルを呼び水としてユーザーを自社ハードウェアのエコシステムへ呼び戻す、伝統的なビジネスモデルへの回帰があると言えるでしょう。
一方、競合のXboxについては、次世代ハードウェアがSteam等のPCストアを利用可能な「ハイブリッド機」になるとの観測も浮上しています。仮にこれが実現すれば、ソニーがSteamでソフトを販売し続けることは、競合ハード上で自社タイトルを提供することになりかねません。アナリストの間では、こうした将来の市場変化を見越した「囲い込み」戦略ではないかという分析もなされています。
なお、すでにPC版が発売されている既存タイトルの販売やサポートが、直ちに終了するという報道はありません。
ライブサービスと外部作品は継続
今回の方針転換は、すべてのタイトルに適用されるわけではありません。報道によると、大規模なオンラインコミュニティの維持が不可欠な「ライブサービス型ゲーム」については、引き続きPCを含むマルチプラットフォーム展開が継続される見込みです。
例えば、Bungieが手掛ける「Marathon」や、格闘ゲームの「MARVEL Tokon: Fighting Souls」などは、プレイヤー数の最大化を優先し、予定通りPCでも提供されます。
また、SIEがパブリッシングを担当していても、外部スタジオが開発を行うタイトルは今回の影響を受けない模様です。コジマプロダクションの「Death Stranding 2: On the Beach」や、外部制作の「Kena: Scars of Kosmora」などは、当初の計画通りPC版のリリースが進められる見通しです。
Xboxもハードウェア回帰へ
ソニーが独占戦略へ舵を切る中、これまでマルチプラットフォーム化を推進してきたマイクロソフト(Xbox)側にも、大きな変化の兆しが見えています。
象徴的な例として、Xboxを代表するタイトル「Halo: Combat Evolved」のリメイク版が、今年PS5向けにリリースされる予定です。これは、同シリーズが競合プラットフォームに登場する初の事例となります。
一方で、2026年2月には長年Xbox事業を率いたフィル・スペンサー氏が退任し、後任としてアーシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏が新CEOに就任しました。シャルマ氏とマット・ブーティCCOはインタビューにおいて、今後の方向性を「Return to Xbox(Xboxへの回帰)」と表現し、自社ハードウェアへのコミットメントを強調しています。
これまでXboxは、ハード普及よりもコンテンツの普及を優先し、主要タイトルを他社へ開放する戦略を採ってきました。しかしシャルマ氏は、「Xboxのエコシステムに多大な投資をしているプレイヤーを保護することが重要であり、それはハードウェアから始まる」と明言しています。
また、これまでのマルチプラットフォーム戦略について同氏は「計画は変更されるまでが計画である(状況に応じて見直しの可能性がある)」と述べ、過去の決定を修正する可能性を示唆しました。ただし、「まずは各スタジオから学ぶ必要がある」とも語っており、具体的な変更については慎重に精査を進める姿勢です。
この新体制の発足により、加速していた「XboxタイトルのPS5供給」という流れが、必ずしも永続的なものではなくなる可能性が出てきました。ブーティ氏が「直ちに大きな変化はない」と述べている通り、現在は模索の段階ですが、マイクロソフトもソニーと同様、自社ハードの価値を再定義し、ユーザーを囲い込む重要性を再認識しつつあると言えそうです。
PC版中止が報じられた主な作品
現在、ソニーがPC版の計画を中止したと報じられている主なタイトルは以下の通りです。
- Ghost of Yotei:Sucker Punch Productions開発。「Ghost of Tsushima」の続編。
- Saros:Housemarque開発。4月30日発売予定の新作SFタイトル。
- Intergalactic: The Heretic Prophet:Naughty Dog開発。
- Marvel’s Wolverine:Insomniac Games開発。
これらのタイトルは、今後「PS5でしか体験できないコンテンツ」として、本体販売を牽引する重要な役割を担うことになります。
業界全体がプラットフォームの境界線を曖昧にしてきた中で、今、各社は改めて「独占」の価値を定義し直す過渡期にあります。ソニーとマイクロソフトが揃って「ハードウェアへの回帰」を模索し始めたことは、ゲーム業界が再びハードを軸とした競争環境へ移り変わろうとしている兆候と言えるでしょう。
ただし、ソニーの方針はあくまで関係者情報に基づくものであり、マイクロソフト側も具体的な戦略変更はこれからの段階です。今後、両社からどのような公式発表がなされ、市場にどう影響するのか、引き続き注視する必要があります。


