
「SHINOBI 復讐の斬撃」は、セガからの依頼ではなく開発チーム自身の提案によって実現しました。真島吾朗をはじめとする歴代の悪役が登場するDLCの制作経緯や、「ぷよぷよ」のボツ案に見る世界観へのこだわりを紹介。「自分たちの役割を終えた後は次世代に託したい」と語るベン・フィケ氏の、真摯な開発哲学に迫ります。
2025年に発売された忍者アクションシリーズの復活作「SHINOBI 復讐の斬撃」は、プレイヤーと批評家の双方から高く評価され、同年の代表的なタイトルとなりました。2011年のニンテンドー3DS版以降、新作のリリースが途絶えていた本シリーズは、セガが進める「過去のIP再活性化計画」の第1弾として重要な役割を担う作品でした。
開発を担当したのは、フランスのスタジオLizardcubeです。同スタジオは、2017年の「モンスターワールドII ドラゴンの罠」や2020年の「ベア・ナックル4」を通じて、長年セガとの協力関係を築いてきました。この度、同スタジオのCEOでありクリエイティブ・ディレクターを務めるベン・フィケ(Ben Fiquet)氏が、本作の開発経緯と、2026年4月3日に配信されたDLC「セガ ヴィランズ ステージ」の制作背景について説明しました。
自主的な提案によるプロジェクトの始動
「SHINOBI 復讐の斬撃」の開発は、セガからの依頼ではなく、Lizardcube側からの提案によって開始されました。
フィケ氏は、「『ワンダーボーイ(モンスターワールドII ドラゴンの罠)』や『ベア・ナックル4』が好評を得たことで、セガとの新たな対話が生まれました。セガが複数のIP再活性化を検討していると聞き、私たちが深く愛着を持っている『SHINOBI』の新プロジェクトを提案したのです」と述べています。
Lizardcubeと「SHINOBI」シリーズの間には、それ以前から接点がありました。「ベア・ナックル4」の開発時には、シリーズキャラクターをゲスト出演させる構想がありましたが、最終的には実現に至らず、ゲーム内にポスターとしてオマージュを掲載するに留まりました。フィケ氏はこの点について、「当時は再びセガのIPを担当することになるとは想定しておらず、作品への敬意を込めた隠し要素(イースターエッグ)の一つでした」と説明しており、当時の掲載が将来の開発計画を意図したものではなかったことを明らかにしています。
手描きアートスタイルへのこだわり
「SHINOBI 復讐の斬撃」の大きな特徴として評価されているのが、水彩画を想起させる2D手描きのアートスタイルです。フィケ氏はこのビジョンを、同スタジオのこれまでの活動における「正当な進化」と位置づけています。
同氏は本作の表現について、次のように述べています。
「本作で目指したのは、水彩画や日本の伝統美術、そしてフランスの芸術性から着想を得た、筆致の美しさを活かした美学です。2D表現の強みは、アーティストのビジョンを直接的に画面へ反映できる純粋さにあります。妥協のない職人技によって生み出される映像だからこそ、プレイヤーの心に深く残る作品になると信じています。このアプローチは、セガの歴史的なIPを現代に再構築する上で、特に『SHINOBI』という作品に適していました」
2025年の市場評価と反響
本作は、「Clair Obscur: Expedition 33」、「Hollow Knight: Silksong」、「Donkey Kong Bonanza」、「Ninja Gaiden 4」といった有力タイトルが揃う2025年の市場において、高い評価を獲得しました。フィケ氏はこの反響について、「予想を上回るものでした」と述べる一方で、「強力な競合作品が多い環境下での展開には、相応の難しさもありました」と当時を振り返っています。
実績面では、レビュー集計サイト「Metacritic」において、全てのプラットフォームで80点以上のスコアを記録するなど、批評家からも高く評価されています。
また、長年のファンと新規プレイヤーの双方が本作を好意的に受け止めている現状について、フィケ氏は開発者として大きな達成感を得ていると語りました。
「セガ ヴィランズ ステージ」の人気悪役選定の裏側
2026年4月3日に配信が開始されたDLC「セガ ヴィランズ ステージ」(価格:770円・税込)では、主人公ジョー・ムサシが「龍が如く」シリーズの真島吾朗、「ゴールデンアックス」のデスアダー、「ソニック」シリーズのDr.エッグマンと対峙します。このクロスオーバーは、本編のテーマである「復活」と「ノスタルジア」をさらに深める意図で企画されました。
ヴィランの選定について、フィケ氏は次のように述べています。
「知名度やゲームとしての楽しさに加え、『SHINOBI』の世界観との親和性を慎重に検討しました。世界的な知名度を誇るDr.エッグマン、セガのアーケード黄金時代を象徴するデスアダー、および現代のセガを代表する真島吾朗という、異なる時代のアイコンを選出しています」
なお、選定過程では「ぷよぷよ」のキャラクターなども候補に挙がりましたが、「敵役としてのテーマにそぐわない」として除外されました。開発規模の制約から今回は3体の実装となりましたが、フィケ氏は可能であればさらに多くのキャラクターを登場させたかったと、開発当時の心境を明かしています。
各ボス戦の演出
各ボスとの戦闘は、それぞれの原作を尊重した演出が施されています。

- 真島吾朗戦: ドスによる近接攻撃や分身を用いた変則的な動きが、緻密な2Dアニメーションで再現されています。

- Dr.エッグマン戦: グリーンヒルを模したステージで展開。シリーズを象徴する鉄球攻撃に始まり、後半は巨大ロボットとの最終決戦へと移行します。

- デスアダー戦: 「デスアダーの復讐」を彷彿とさせるステージが舞台。ゴールデンアックスの力を駆使した攻撃に加え、ドラゴンを用いた魔法攻撃が描かれます。
「SHINOBI」シリーズの展望と未来
本DLC Courtのエンディングでは、主人公ジョー・ムサシが平穏を取り戻す場面が描かれており、シリーズとして一つの区切りを迎えた印象を与えます。フィケ氏もこれを認め、現時点ではさらなる追加コンテンツの計画がないことを明らかにしました。
同氏は今後の展望について、次のように述べています。
「本作は、一つの完成形に至ったと考えています。私個人の願いとしては、今後、他の優れた開発チームが新たな解釈によって『SHINOBI』というシリーズにさらなる息吹を吹き込んでくれることを期待しています」
「SHINOBI 復讐の斬撃」は、PlayStation 5、PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)向けに好評発売中です。
