
「龍が如く」の生みの親である名越稔洋氏率いる「名越スタジオ」の活動停止説をわかりやすく解説。NetEaseによる資金援助の終了に始まり、新作「Gang of Dragon」の開発中止、公式サイトやオフィスの閉鎖、共同設立者・佐藤大輔氏をはじめとする主要スタッフの退職など、現在起きている状況をまとめました。
セガの「龍が如くスタジオ」を率いてきた名越稔洋氏と佐藤大輔氏らが中心となり設立した「名越スタジオ(Nagoshi Studio)」は、2022年初頭の発足以来、コンソール(家庭用ゲーム機)向けのアクションアドベンチャー作品の開発を目的として活動してきました。
その後、同スタジオは新規タイトル「Gang of Dragon(ギャング・オブ・ドラゴン)」の開発に着手したと報じられ、著名な韓国人俳優の起用が噂されるなど、国内外で注目を集めていました。しかし、2026年6月現在、本作開発中止およびスタジオの事実上の閉鎖を示唆する報道が、複数の国内外メディアによってなされています。
資金調達の難航とプロジェクトの頓挫
名越スタジオの主力プロジェクトであった「Gang of Dragon」の開発中止は、開発予算の調達難が主な要因とされています。
設立当初、ネットイースは日本市場におけるコンソール向けゲーム開発を強化するため、同スタジオへ資金を提供していました。しかし、近年のAAA(超大作)タイトル開発では、グラフィックの高度化や開発期間の長期化により、開発コストが高騰する傾向にあります。本作も例外ではなく、完成には当初の想定を大幅に上回る、追加で約70億円(約4,400万ドル)の資金が必要であることが判明したと報じられています。
これに対し、ネットイース側は追加投資を見送る判断を下しました。近年、同社をはじめとする中国のテック企業は海外投資戦略を見直しており、莫大なコストと期間を要するハイエンド向けゲームから、投資回収率(ROI)が高くリスクの低いプロジェクトへとリソースを再配分する傾向を強めています。この戦略転換に伴い、同社は2026年5月をもって名越スタジオへの資金提供を正式に終了した模様です。
名越スタジオは開発継続に向けて他のパブリッシャーや投資家との交渉を進め、新たな資金調達の道を模索したものの、合意には至りませんでした。その結果、開発予算が完全に枯渇し、プロジェクトの継続が不可能な状況に陥ったとみられています。
閉鎖と開発中止を裏付ける客観的兆候
現時点でパブリッシャーやスタジオからの公式発表はありませんが、インターネット上およびオフィス環境において、活動停止を示唆する状況がいくつか確認されています。
まず、オンライン上の公式チャネルに大きな変化が見られます。名越スタジオの公式サイト(nagoshistudio.com)は現在サーバーがダウンしており、アクセスできない状態です。また、これまで情報発信を行ってきた公式YouTubeチャンネルからも登録動画がすべて削除または非公開となっており、事実上の機能停止状態にあります。
次に、物理的な拠点における変化です。Googleマップをはじめとする地図サービスやビジネスリスティングにおいて、東京都渋谷区恵比寿にある同スタジオの本社オフィスが「閉鎖」または「永久に閉鎖」と表示されています。これは通常のオフィス移転とは異なり、組織の運営自体が終了した可能性を示唆するものです。
さらに、名越稔洋氏の肩書きの変化も注目されています。「週刊ファミ通」(No.1952、2026年6月18日発売号)の寄稿において、同氏の所属は「名越スタジオ」ではなく、フリーランスを指す「ゲームクリエイター」と表記されました。自身が設立したスタジオ名が外れたこの扱いは、名越氏のスタジオ離脱、あるいは組織としての活動終了を強く推測させる要因となっています。
開発中核メンバーの大量離脱と移籍先
組織の動向を判断する上で、人材の推移は重要な指標となります。名越スタジオにおいては、2026年5月末を節目に、スタジオの中心的な開発スタッフが相次いで退職し、他社へ移籍している状況が確認されています。
まず、共同設立者でありゲームディレクターを務めていた佐藤大輔氏が、自身のSNSアカウントのプロフィール欄において、肩書きを「元・名越スタジオ(ex-Nagoshi Studio)」へと更新しました。同スタジオの設立時より開発の指揮を執ってきたキーパーソンの離脱は、開発体制に大きな変化が生じたことを示しています。
さらに、業界内での調査や各氏の公開情報により、以下の主要クリエイターの退職および移籍が判明しています。
- 細川一毅氏(デザイン部門責任者):スタジオ創設時からの中心メンバーであり、約4年半の勤務を経て退職。
- 染谷直紀氏(リード環境デザイナー):テンセント傘下の「LightSpeed Japan」へ移籍。
- 保坂朝陽氏(テクニカルアーティスト):「カプコン」へ移籍。
- 和久井啓也氏(3Dシネマティクス担当)および永井彩三氏(シニアキャラクターアーティスト):「MIXI」へ移籍。
- 高橋周一氏、安藤俊洋氏などのシニア開発者:自身の経歴書(プロフィール)上で名越スタジオを「過去の勤務先」として登録。
このように、アート、技術、デザインなどの各セクションを統括するリーダー格のクリエイターが、同時期に別の主要ゲームスタジオへ籍を移しています。これらの移籍タイミングが2026年5月31日付近に集中していることからも、同日をもってスタジオの全業務が停止し、実質的な清算手続きやスタッフの再就職支援が行われた可能性が高いと推測されています。
総括:スタジオ解散と海外資本モデルの教訓
一連の状況から、名越スタジオが手がけていた「Gang of Dragon」は、正式な発売や詳細発表を迎える前に開発中止に至ったとみられます。
本件は、近年ゲーム業界で見られる「中国テック企業による日本のトップクリエイターへの巨額投資」というビジネスモデルにおける、新たな課題を浮き彫りにしました。潤沢な資金力を背景とした投資であっても、開発費用の高騰や世界的な市場環境の変化に伴い、短期間での戦略見直しや方針転換を迫られるリスクがあることを示しています。
パブリッシャーやスタジオからの公式発表は未だなされていないものの、第一線で活躍してきた開発者たちがすでに別の開発拠点へと移籍し、新たなキャリアをスタートさせている事実は、同スタジオの活動が事実上終了したことを裏付けています。今後、名越氏をはじめとする主要スタッフがどのような形で新たな開発活動を行うのか、また、今回の事例が他社の日本市場向け投資戦略にどのような影響を与えるのか、引き続きその動向が注目されます。
情報元:Push Square


