
Remedy Entertainment初のオンライン協力ゲーム「FBC: Firebreak」は、発売直後にマッチメイキングやチュートリアル不足で厳しい評価に直面。しかし、開発元は迅速にアップデートを配信し、ゲーム内容の抜本的な改善を約束。ユーザーの声に応える開発元Remedyの対応が、ライブサービスゲーム運営の新たな模範となるのでしょうか。
「Alan Wake 2」や「Control」といったシングルプレイヤー作品で世界的な評価を確立してきたRemedy Entertainment。同社が満を持してリリースした初のオンライン協力マルチプレイヤーゲームが、今回ご紹介する「FBC: Firebreak」です。しかし、大きな期待を背負ってPCとコンソール向けに発売されたこの作品は、今、大きな岐路に立たされています。
ユーザーからは内容の根幹に関わる厳しいフィードバックが相次ぎ、お世辞にも順調なスタートとは言えない状況でした。ですが、Remedyはこの逆風に対し、迅速かつ真摯な対応を見せました。
発売直後の課題
「FBC: Firebreak」は、3人一組でミッションに挑む協力型のシューティングゲームです。しかし、発売直後から、多くのプレイヤーが複数の問題点を指摘することになりました。特に大きな不満点として挙がったのが、以下の3点です。
- マッチメイキングの問題
- 新規プレイヤーに対するチュートリアルやガイド機能の不足
- 武器やアイテムのアンロックに時間がかかりすぎる進行の遅さ
結果として、Steamでの評価は「賛否両論(Mixed)」で、肯定的評価は65%に留まり、同時接続プレイヤー数も2,000人を下回るという厳しい船出に。これは、ゲームの本質的な面白さは存在するが、そこに到達するまでのハードルが高すぎることを示しています。
Remedy自身が認める主要な問題点。それは、序盤数時間のゲーム体験が不十分であるという事実です。これには、適切なオンボーディング(導入指導)の欠如、そしてミッションで何をすべきかという説明不足が含まれています。さらに、ゲーム開始時に使用できるTier 1武器が弱すぎる一方で、強力なTier 3武器のアンロックには過度な時間を要するというバランスの問題も指摘されました。
迅速な対応とアップデートの内容
こうした状況を、Remedyは深刻に受け止めていると公式に表明しました。Steamで公開された声明では、「初のマルチプレイヤーゲームであり、かつ自社でパブリッシングを行うという大きな挑戦でした。いくつかの点は上手くいきましたが、すべてがそうではなかったことは明らかです」と述べ、課題の存在を率直に認めたのです。
そして、その姿勢は声明だけに留まりませんでした。具体的な行動、それがアップデート1.2の配信です。このアップデートでは、緊急性の高い問題に対処するため、主にゲーム内経済と進行速度の改善を実施しました。具体的な内容は以下の通りです。
- ゲーム内経済と進行速度の改善:
プレイヤーがゲーム内通貨を獲得・消費する仕組みが改良されました。
これまで装備品と外見変更用のアイテムが混在していた物資調達ストアを、「必需品(装備・武器)」と「作戦用必需品(コスメティック)」の2種類へと明確に分離。これにより、プレイヤーは自身の戦闘力を強化するアイテムを、より効率的に入手できるようになりました。
- ミッション進行構造の見直し:
新規プレイヤーが早い段階から3つのゾーンで構成される本格的なミッション(フルジョブ)に挑戦可能に。ゲームの核心的な楽しさに、より早く触れる機会を増やすことに成功しました。
FBC: Firebreakの今後の改善ロードマップ
Remedyは今回のアップデートが「始まりに過ぎない」と強調し、より長期的かつ抜本的な改善計画についても言及しています。開発チームが特に問題視しているのは、やはり「ゲーム開始から数時間の体験」に他なりません。
現状、プレイヤーは十分な説明がないままアクションの真っ只中に放り込まれると言えるでしょう。特殊能力を持つ装備「クライシス・キット」のシナジー(相乗効果)や、ミッションの効率的な進め方、さらには炎上などの有害な状態異常、味方との距離で得られるレゾナンス効果といった重要なシステムについて、ゲーム内での説明が不足しています。
これに対しRemedyは、今後、これらのシステムを明確にプレイヤーに伝える改善を行うとしています。有害な状態の視認性向上や、目的地マーカー表示の改善など、UI/UXの全面的な見直しが検討されているようです。開発チームはすでに多くの改善案を収集・検討していますが、それらを適切に計画し実装するには、さらなる時間が必要だと説明しています。
ここで興味深いのが、Remedyの分析によって明らかになった一つの事実です。それは、ゲームを進めて手に入る強力な武器(Tier 3武器)や、キャラクターを強化する特殊能力(パーク)をアンロックし、高い脅威レベルでプレイするプレイヤーほど、ゲーム体験への満足度が高い傾向にあるという事実です。これは、ゲームの本質的な面白さは確かに存在するものの、そこへ到達するまでのハードルが高すぎることを示唆しているのではないでしょうか。
業界専門家による評価
この状況について、GameSpotのレビュアーであるMark Delaney氏は的確な分析を提供しています。
「ゲームが2つの異なるサブスクリプションサービスで配信されているため、多くのプレイヤーが試すものの、不十分な第一印象によってすぐに離脱してしまう可能性がある」と指摘。




一方で、同氏は次のようなポジティブな評価もしています。
「序盤の粗さを乗り越えれば、本当に楽しい体験が待っている。時にゲームは重要なポイントについて、適切なチュートリアルを提供しないことで自らの足を引っ張っている。しかし、こうした知識を獲得すれば、「FBC: Firebreak」は楽しくカオティックなパワーファンタジーとなり得る」
ライブサービス時代における開発者の新たな責務
「FBC: Firebreak」の一連の動向は、現代の「ライブサービス型」ゲーム開発の難しさ、そしてデベロッパーに求められる姿勢を象徴していると言えるでしょう。発売がゴールではなくスタート地点であり、ユーザーコミュニティからのフィードバックを真摯に受け止め、迅速かつ継続的にゲームを改善していくプロセスこそが、タイトルの成否を分ける重要な鍵となります。
Remedyが「今日のパッチは始まりに過ぎない」と語っているのは、継続的な改善への強い意欲の表れです。もしRemedyが約束通りに改善を成し遂げ、プレイヤーが序盤で感じるであろうハードルを乗り越えられるようにできたなら、その時こそ、失われた信頼を取り戻し、「FBC: Firebreak」を多くのファンに愛されるマルチプレイゲームへと成長させることが可能でしょう。
「FBC: Firebreak」は、PC(Steam、Epic Games Store)、Xbox Series X|S、PlayStation 5向けに発売中です。さらに、Game PassやPlayStation Plus(エクストラ、プレミアム)にも発売初日から対応しています。