
ソニーがバンダイナムコHDの株式2.5%を約680億円で取得し、戦略的業務提携を締結。提携の目的は、両社の強みを活かしてアニメやゲームといったIP(知的財産)の価値を最大化することです。急成長するアニメ市場を軸に、ファンとの関係を強化し、新たな感動体験の創出を目指します。
ソニーとバンダイナムコが戦略的提携
2025年7月24日、ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)と株式会社バンダイナムコホールディングス(以下、バンダイナムコ)は、戦略的な業務提携を発表しました。この提携の一環として、ソニーはバンダイナムコの発行済株式総数の約2.5%(1,600万株)を、およそ680億円で既存株主から取得します。
今回の提携は、競争が激化する世界のコンテンツ市場において、日本を代表する両社がIP(知的財産)価値を最大化し、新たな成長を目指すための重要な一手となります。
提携の狙いは、両社の成長戦略の融合
今回の提携は、両社がそれぞれ進める成長戦略を掛け合わせるものです。
バンダイナムコは、自社IPの魅力を最大限に活かし、多角的に事業を展開する「IP軸戦略」を推進しています。同社は「機動戦士ガンダム」や「パックマン」といった自社IPに加え、「ELDEN RING」のようなヒット作や「少年ジャンプ」関連作品も手掛けており、ゲーム、玩具、映像、ライブイベントなど、強力なIPポートフォリオを築いています。
この提携について、バンダイナムコの桃井信彦取締役副社長は、「両社の強みと技術力が掛け合わされ、新たなエンターテインメントを創造できる」と期待を述べています。バンダイナムコにとって、ソニーが持つ世界的な映像制作・配信網(「Crunchyroll」など)、音楽事業、ゲームプラットフォームは、自社IPを世界中のファンへ効果的に届けるための強力な手段となります。
一方ソニーは、長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を掲げ、クリエイティビティとテクノロジーで世界に感動を届けることを目指しています。その実現に向け、近年は有力なコンテンツホルダーへの戦略的投資を加速させてきました。FromSoftwareの親会社であるKADOKAWAの筆頭株主となったほか、「フォートナイト」で知られるEpic Gamesにも多額の出資を行っています。中国のBilibiliや米国のDevolver Digitalへの出資からも、良質なIPとクリエイターを確保する戦略が明確に見て取れます。
ソニーの御供俊元CSOは、「両社の強みを掛け合わせ、IPのポテンシャルを引き出すことで、IP価値の最大化を加速させていく」とコメントしました。バンダイナムコの多様なIP群とファンとの強い結びつきは、ソニーが自社のエンターテインメント・エコシステムを強化する上で、重要な役割を果たすことになります。
協業の展望と業界へのインパクト
共同声明によると、両社は特に市場拡大が見込まれるアニメ領域を中心に、世界中のファンとの結びつきを深めることに注力します。具体的な協業内容は多岐にわたります。
- IPの共同開発とメディアミックス
バンダイナムコの人気IPを活用したアニメや実写作品を、ソニーのプラットフォーム(例:Crunchyroll)で制作・配信。例えば、「機動戦士ガンダム」の新作アニメをCrunchyrollで世界配信し、PlayStation向けゲームと連動させるプロジェクトが考えられます。
- 体験型エンターテインメントの強化
リアルとデジタルの融合による新たなファン体験を提供。例として、バンダイナムコの「ガンダムファクトリー横浜」のようなリアルイベントと、ソニーのVR技術を組み合わせた没入型体験が期待されます。
- ゲーム事業での連携
ソニーの株式取得は2.5%と限定的なため、バンダイナムコのゲームがPlayStation独占になるとは考えにくいですが、先行配信や限定コンテンツの提供は十分に可能。たとえば、「ELDEN RING」の続編でPlayStation向け特別コンテンツを提供するなど、プラットフォーム上での協力が期待されます。
この提携は、世界のコンテンツ業界で激化する再編とIP獲得競争を象徴する動きです。プラットフォーマーが有力IPを自社エコシステムに取り込もうとする流れは、今後さらに加速すると予想されます。ソニーの一連の出資戦略は、コンテンツの源流を押さえることで長期的な競争優位を築こうとする、明確な意思の表れと言えます。
エンターテインメントの未来をどう変えるか?
今回の戦略的提携は、単なる資本関係に留まらず、両社のクリエイティビティと技術、そして強力なIPが融合することで、これまでにない感動体験を生み出す可能性を秘めています。日本の二大エンターテインメント企業が共に創り出す未来が、世界のファンにどのような新しい価値を提供していくのか、業界全体がその動向を注視しています。
情報元:ソニーグループ プレスリリース