
10年以上開発が続く「バイオショック」シリーズ最新作が転換点を迎えています。社内レビュー不合格でリーダーが交代、ストーリーも全面的に見直されることが決定。初代リメイクの中止も判明する中、発売元2K Gamesおよび親会社Take-Twoは品質を優先する一方、現場では人員削減が懸念されています。
伝説のシリーズと新作の苦難
2007年の初代「バイオショック」発売以降、独特の世界観と哲学的な物語でゲーム史に名を刻み、全世界で4,300万本以上を売り上げた本シリーズ。続編への期待が高まる中、2013年の「バイオショック インフィニット」以来となる最新作の開発が難航し、プロジェクトは大きな方針転換を迎えています。
関係者によると、10年以上に及ぶ開発の末、開発スタジオCloud Chamberでリーダーが交代し、物語部分も抜本的に再構築されることが決まったとのことです。これは、シリーズ作品が築いた高評価と熱心なファン層の期待が、開発チームへの大きなプレッシャーになっているためとも考えられます。
社内レビューで不合格に
Bloombergの報道によれば、発売元の2K Gamesおよび親会社のTake-Two Interactiveの経営陣が、現在の開発進捗に強い懸念を抱いていたことが判明しました。Cloud Chamberが提出したビルド版(社内検証用の試作品)は、最近行われた内部チェックで「物語の質」に主な課題があるとされ、不合格となりました。
その結果、2K Gamesは今後数ヶ月をかけてストーリーの抜本的見直しを決定。すでに10年を超える開発期間のさらなる延長が避けられない状況です。ファンにとっては、期待の新作が一段と遠のくこととなりました。
スタジオ体制の刷新と人員削減への懸念
開発状況を受け、2K GamesはCloud Chamberの経営体制を大幅に刷新。スタジオ責任者ケリー・ギルモア(Kelley Gilmore)氏は更迭され、クリエイティブディレクターであったホーギー・デ・ラ・プランテ(Hogie de la Plante)氏もパブリッシング部門へ異動しました。
社内全体会議では「より機敏で効率的な組織が必要」との説明がなされ、この言い回しから人員削減の可能性が示唆されています。長期開発の疲労もあり、現場チーム内には将来への不安が広がっています。
品質へのこだわりと2K Gamesの決意
現状の変化について、2K Gamesは海外メディアに向けた声明の中で次のように述べています。
「私たちは『バイオショック』に最高の未来をもたらすべく努力しています。現時点でも良いゲームは作れていますが、我々の真の目標は偉大な作品をお届けすることです。そのため今後は新体制のもと、スタジオと綿密な連携を継続します。」
また、広報担当者もリーダー交代の事実を認めつつ、「ファンの期待を超える『バイオショック』制作に全力を注ぐ」とコメントしました。こうした発言から2K Gamesと親会社Take-Twoの「品質第一」の決意がうかがえます。
一方で、現時点で具体的な発売日は発表されておらず、さらなる開発期間の長期化は避けられない見通しです。
リメイク版の中止とその背景
今回の一連の報道では、初代「バイオショック」のリメイク企画が2025年初頭に中止されていた事実も明らかになっています。これは限られた開発リソース(人員・資金など)を新作のプロジェクトに集中させる判断と考えられます。あわせて、シリーズ全体の事業戦略が再検討されていることが、今後の「バイオショック」ブランドの行方に一層の不透明感を与えていると言えるでしょう。
現代のAAAタイトルへの挑戦
この10年でゲーム業界は大きく変化し、現代のAAAタイトルには美麗なグラフィック、複雑なシステム、マルチプラットフォーム展開などが求められています。「バイオショック」のような有力なIPを現在の基準に引き上げるには、技術・創造性の両面で並大抵ではない困難が伴います。
また、競争が激化したゲーム市場では、ユーザーの期待水準もかつてないほど高まっています。特に「バイオショック」のような名作シリーズでは、「従来の枠を超えた革新性と完成度」がファンから望まれ、開発チームへのプレッシャーは非常に大きいものとなっています。
新体制での復活への期待
今回のリーダー交代やストーリー再構成は、プロジェクト全体を立て直すために不可欠な決断といえるでしょう。Cloud Chamberは、新たな開発体制のもとで「バイオショック」シリーズの名にふさわしい傑作を目指し、ストーリーを根本から作り直しています。この路線変更が吉と出るのか、今後の業界関係者やゲーマーの関心は高まる一方です。
続編の完成は遠のく形となりましたが、「新生バイオショック」に対する期待も根強く残っています。2K GamesとTake-Twoがシリーズの伝統と熱烈なファンの信頼に応えられるのか、これからが正念場になるでしょう。
情報元:Bloomberg