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「Hollow Knight: Silksong」 8年にわたる開発秘話とインディ界隈への影響

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インディーゲームの枠を超えた現象「Hollow Knight: Silksong」が2025年9月4日ついに発売。前作1500万本の成功がもたらしたのは、Team Cherryが語る「楽しさ」主導の開発哲学と、利益を度外視した純粋な創造性の探求でした。さらに、本作の発売がなぜ他社のリリース延期を招くほどの「事件」となったのかを紐解きます。

8年の時を経て、巨星ついに動く

2025年9月4日、ゲーム業界が待ち望んだ「Hollow Knight: Silksong」がついに発売されます。2017年の前作発売から約8年、続編としての発表から6年。長年の沈黙を破る待望の登場に、ファンの期待は最高潮に達していました。その人気はSteamで「最もウィッシュリストに登録されたゲーム」として首位に立ち、その動向がインターネット上で半ばネットミームと化すほどでした。

オーストラリアのアデレードに拠点を置く小規模開発チームTeam Cherryが手がけるこの続編は、単なるゲームリリースを超えた文化的現象となっています。

「楽しさ」が生んだ8年間の物語

「Silksong」の開発が長期化した背景に、多くの人が想像するような難航やトラブルはありませんでした。Team Cherryの共同設立者、アリ・ギブソン氏とウィリアム・ペレン氏は、開発プロセスは常に「楽しいものだった」と明言しています。ギブソン氏は「これ全体が創造性の表現手段だから。楽しいものを作るのは素晴らしいことだ」と、その哲学を語ります。

「行き詰まったことは一度もない。常に進歩していた。ただ、私たちは小さなチームで、ゲームには時間がかかる。開発中に大きな意見の対立はありませんでした」とも付け加えました。

小規模チームによる有機的な開発

プロジェクトは当初、前作のDLCとして始まりましたが、チームから溢れ出るアイデアによって2019年2月、壮大な続編へと姿を変えることが発表されました。

ギブソン氏は当時をこう振り返ります。「ある時点でスケッチをやめなければならなかった。描くもの全てが採用したいアイデアになり、『これは素晴らしい、採用』となってしまう。このままでは完成に15年かかると気づいたんです」

チームは創設者2名と数名のスタッフという小規模な体制を維持しました。この規模感が創造的な流れを保つ一方で、開発期間を延ばす一因となったのも事実です。「突然、6年、8年後になってしまった」とギブソン氏は説明します。

ゲームの規模は拡大を続け、「常に新しいアイデアに取り組んでいる。ゲームを完成させるために止めているだけで、続けることもできた」とペレン氏は開発の魅力を語ります。

予想を超えた開発期間

2022年にMicrosoftが「1年以内に発売」と発表した際、開発チーム自身もそう信じていました。「本気でそう信じていた。2〜3年の間、1年以内に出ると思っていた時期があった」と、ペレン氏は振り返ります。

しかし、ゲームは彼らの予想を超えて成長を続けました。「楽しんでいるからこそ、『時間がかかりすぎる』ではなく『この楽しい空間を続けよう』となってしまう」とギブソン氏は説明します。

Team Cherryが長期間沈黙を保った背景には、明確な戦略がありました。2019年末以降、チームは意図的に情報発信を控えていました。

「継続的なアップデートは、人々を全体的に不快にさせるだけだと感じた。なぜなら、私たちが本当に言えることは『まだ作業中です』だけだったから」とギブソン氏は説明します。

また、ネタバレを避けたいという配慮もありました。「Hollow Knight」の魅力の多くは、偶然秘密の通路を発見したり、壁を壊して隠された虫を見つけたりすることから生まれていました。「Silksong」にも同様の秘密が数多く隠されており、それらを発売前に詳細に語りたくなかったのです。

経済的成功がもたらした創作の自由

Team Cherryが時間をかけて理想を追求できた最大の理由は、前作「Hollow Knight」の驚異的な商業的成功にあります。ゲームは全世界で1500万本という売上を記録し、この成功によってチームは資金的なプレッシャーから完全に解放されました。

ギブソン氏は、前作開発中の苦労を振り返ります。「隣のオフィスの残りの三角サンドイッチで生活したり、父が時々くれる20ドルで『今日はコーヒーが飲める!』と喜んだりしていました」

しかし「Silksong」の開発では、チームが資金繰りを心配する必要は一切ありませんでした。「私たちは非常に幸運でした。それが特権なのだろうと今では思います」とギブソン氏は語ります。

興味深いことに、「Silksong」の発表後、前作はさらに売上を伸ばし続けています。2019年2月時点で280万本だった売上は、その後1220万本も上乗せされました。この継続的な収益が、チームに資金的な制約なく開発に没頭できるという、理想的な環境をもたらしました。

インディーゲーム市場への衝撃

「Silksong」の発売日決定は、ファンを喜ばせただけにとどまりませんでした。その発表はゲーム業界、特にインディー市場に大きな波紋を広げ、他のデベロッパーに戦略的な判断を迫る事態へと発展しました。報道によると、少なくとも3つのスタジオが発売を延期するという異例の決断を下しています。

しかし、特筆すべきは、Aeterna Lucisの開発者が表明した感謝の念です。「Team Cherryに幸運を祈る必要はない。彼らのおかげでメトロイドヴァニアジャンルは活気づき、我々の創作の大きな刺激となった」

これらの事例は、一つのインディーゲームが、かつて超大型AAAタイトルでしか見られなかった市場への影響力を持ったことを示しています。「Silksong」はもはや単なる人気作ではなく、他作品がリリース計画を立てる上で無視できない大きな存在になったと言えるでしょう。

新たな伝説の始まり

Team Cherryにとって、「Silksong」の発売は終着点ではなく、新たな出発点です。8年の開発を経てもなお、彼らは「次に何を追加できるか、野心的な計画がある」と、今後の展開への意欲を語っています。

本作は9月4日、PC(Steam/Microsoft Store)をはじめ、Nintendo Switch、PlayStation(PS5/PS4)、Xbox(Series X|S/One)で発売され、Xbox Game PassとPC Game Passにも初日から対応します。これは物語の終わりではなく、ゲーム業界に新たな伝説が生まれる瞬間となるでしょう。

情報元:BloombergGameSpot

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