
「ドラゴンクエストVII Reimagined」2026年2月5日発売。PS5、Switch、Switch 2、Xbox、PCに対応。ジオラマ風グラフィック、ボイス、テンポアップしたシナリオ、2職掛け持ちシステムで名作を「再構築」。原作の課題を克服しグローバル市場を見据えた本作から、スクウェア・エニックスの新たなIP戦略を読み解く。
単なるリメイクではない「Reimagined」
2025年9月12日、スクウェア・エニックスはNintendo Directの配信で、2000年8月26日に発売されたPlayStation用RPGの名作「ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち」のフルリメイク作品「ドラゴンクエストVII Reimagined」を発表しました。スクウェア・エニックスとヘキサドライブが共同開発する本作の発売日は2026年2月5日を予定しています(※Steam版のみ2026年2月6日発売)。対応プラットフォームはNintendo Switch、Nintendo Switch 2、PlayStation 5、Xbox Series X|S、そしてPC(Steam, Microsoft Store)と、現行機から次世代機までを網羅する、まさに待望のマルチプラットフォーム展開となります。
近年、同社は「ドラゴンクエストIII」を皮切りに「HD-2D」技術を用いたリメイク作品を推進してきましたが、本作ではその流れを汲まない、手作り感のあるジオラマ風の3Dグラフィックが採用されました。プロデューサーの市川毅氏が「1から再構築しております」と語るように、本作はグラフィックの刷新に留まらない、IPの価値を現代に最適化する意欲的な試みと言えます。
なぜHD-2Dではなく「ドールルック」なのか
本作の最も特徴的な点は、新たに採用された「ドールルック」と呼ばれるビジュアル表現です。シリーズの生みの親である堀井雄二氏は、公式発表で「人形をスキャンしてキャラクターモデルを作成した」と、その具体的な制作手法を明かしました。故・鳥山明氏がデザインしたキャラクターの魅力を温かみのある3Dモデルで表現し、世界を精巧なジオラマのように描き出す、まったく新しいアプローチが採用されています。
市川プロデューサーは、「世界中のファンに、鳥山明氏がデザインした魅力的なキャラクターを好きになってほしかった」と、その意図を語っています。ドット絵の様式美を現代的に進化させたHD-2Dに対し、今回の「ドールルック」は、キャラクターの感情や物語の深みをより鮮やかに、そしてグローバル市場で受け入れられやすい形で表現する、新たな試みと言えます。
課題であった「長さ」と「テンポ」を改善
2000年に発売された原作「ドラゴンクエストVII」は、シリーズ屈指のプレイボリュームと、失われた世界を取り戻す重厚な群像劇で高い評価を得ました。しかしその一方で、「戦闘開始までが長い」「石版集めが煩雑」といった点が、プレイヤーを選ぶ要因となっていた側面もありました。
「Reimagined」では、この構造的な課題に正面から向き合っています。公式サイトによれば、物語のカギとなる「石版のかけら」探しについて、「石版案内人と話したり、『石版リスト』やミニマップからヒントをみつけて石版を入手」できるよう改善されており、堀井雄二氏も「石版探しはかなり楽になっている」とコメントしています。
さらに「選択によって展開が変化するエピソードや、新たなストーリー」といった新規エピソードの追加も明言されています。原作が持つ物語の深みはそのままに、より濃密な体験が期待できるでしょう。
また、公開されたトレーラーの最後にフードで顔を隠した男が主人公に微笑む意味深なシーンも。原作では謎に包まれていた仲間「キーファ」のその後が描かれるのかもしれません。
「職業かけもち」システムで戦略性が大幅向上
本作で最も注目すべき新要素の一つが、職業システムの大幅な刷新です。公式情報によると、「冒険をすすめると職業の『かけもち』が解放され、同時にふたつの職業につけるようになる」とのこと。これにより、「呪文や特技、職業とくせいもふたつ分に増えるので、パーティの戦力も大幅アップする」という画期的なシステムが導入されます。
さらに、各職業には固有の「職業とくせい」が設定されました。これは「バトル中にバーストチャージという状態になると、『職業とくせい』を発動させることができる」特殊能力で、戦闘に新たな戦術的要素を加えています。
また、快適性の向上も徹底されており、「一括回復などの行動は『ショートカットコマンド』に対応」し、「『オートバトル』機能の追加や、自分よりも弱いモンスターをフィールド上で倒せる『フィールドアタック』」など、現代のRPGに求められる利便性が数多く実装されています。
フルボイス対応で描かれる新たな演出
本作では、シリーズ初となる主要キャラクターのフルボイス対応も実現されています。主人公を大鈴功起氏、キーファを宮野真守氏、マリベルを悠木碧氏が演じるなど、豪華声優陣による演技で、原作では表現しきれなかったキャラクターの魅力がより深く描かれることになります。
「Reimagined」が示す、未来へのIP戦略
「ドラゴンクエストVII Reimagined」は、単なる過去作の焼き直しではありません。原作が抱えていた課題を分析し、グラフィック、シナリオ、キャラクターボイスの追加、システムの全方位から解決策を提示する、まさに「再構築(Reimagined)」と呼ぶにふさわしいタイトルと言えるでしょう。
「DQ3」から続くHD-2Dリメイクの流れとは異なるアプローチを選択したことで、一つのIPに複数の表現手法を用意し、作品の特性に合わせて最適化するスクウェア・エニックスの高度なIPマネジメント戦略が垣間見えます。
シリーズ生みの親である堀井雄二氏は、「まだドラクエを遊んだことがないという人にも安心してお楽しみいただけます」と語り、さらに「理不尽もたくさん起こるドラクエを是非お楽しみいただけたら嬉しいです」と続けています。本作はシリーズの新規ファン獲得、特にグローバル市場への浸透を強く意識した戦略的タイトルと位置づけられるのではないでしょうか。
2025年9月25日~28日に開催される東京ゲームショウ2025では、本作の続報が予定されており、その全貌がさらに明らかになることが期待されます。

情報元:公式サイト