
巨額の費用を投じたActivision買収は計画通りに進まなかった可能性があります。「Call of Duty」の収益低下は、Game Pass値上げやXbox事業の今後を大きく左右しています。リークが示すのはハードウェア事業から「ソフトウェア重視」への戦略変更。Xboxブランドの今後を展望します。
Microsoftが2025年10月1日に発表したXbox Game Pass最上位プランの50%値上げ。これは業界に大きな波紋を広げました。しかし、この価格改定は単なるビジネスモデルの見直しにとどまらず、Xbox事業の今後の方向性を大きく変える転換点であった可能性が浮上しました。信頼性の高いリーク情報によれば、Microsoftはコンソールハードウェア事業から実質的に撤退し、プラットフォームを横断する「ソフトウェア中心」の体制へと移行しようとしています。
Activision買収の影響と値上げの背景
月額30ドル(日本でのUltimateプラン:2750円)へと引き上げられた価格改定の背後には、690億ドル(約10兆2,000億円)を投じたActivision Blizzard買収が計画どおりに進まなかったという見方が背景にあります。複数の業界報道が指摘するのは、看板タイトル「Call of Duty (CoD)」の扱いに課題があった、という点です。
Xboxは「CoD」最新作を発売初日からGame Passで提供し、加入者数増加を狙いましたが、収益構造には新たな課題が生じていました。従来はユーザーが70ドルのパッケージ版を発売日に購入し、メーカーにとって安定した収益源となっていました。ところがGame Passでの提供開始後、多くのユーザーは「CoD」をプレイするためだけに1〜2ヶ月だけGame Passに加入し、その後解約するという傾向が生まれました。
この結果、本来得られるはずだった70ドルの収益が、10〜20ドル程度のサブスクリプション料へと置き換わったのです。Bloombergが報じるところでは、この「売り切り型の収益からサブスクリプション主体への移行」によりMicrosoftが失った機会損失は年間で推定3億ドル以上(約443億円)とされています。この収益構造の矛盾が、今回の価格改定に踏み切った大きな要因のようです。
この状況は、買収審査時に「価格は上げない」としていた規制当局への説明とも矛盾し、元米連邦取引委員会(FTC)委員長のリナ・カーン氏から「ゲーマーと開発者双方に悪影響が及んでいる」といった批判も寄せられています。
リークが示す新事業路線
こうした業績への影響のなか、Xboxの将来を巡る注目の情報が著名なリーカーによってもたらされています。複数の実績をもつリーカー「SneakerSO」によると、Xboxは事業運営の根本的な見直しを迫られており、その主な内容は以下の通りです。
- ハードウェア事業の見直し
2026年に予定されていた新型Xboxコンソールの計画は中止される可能性があり、ハードウェア事業自体が縮小傾向にあると指摘されています。また、Costcoなど大手小売業者がXbox製品の取り扱いを停止するなど、市場の変化もうかがえます。
- クラウドゲーミングへ重心移動
Xboxプラットフォームの中心は物理的なコンソールからクラウドゲーミングへと移行する見通しです。これに伴い、Game Passは今後もクラウドサービスへの入り口として機能し、さらなる値上げも検討されていると伝えられます。
- ビジネスモデルの転換、ソフトウェア事業への集中
今後のXbox事業はコンソール販売にとらわれず、ソフトウェアパブリッシングへの集約が進みます。「CoD」「World of Warcraft」「Minecraft」などのタイトルを、PSをはじめ各種プラットフォームへ展開し、収益最大化を目指す戦略です。これには2026年第1四半期に追加レイオフ実施との情報も含まれています。
これらのリーク情報は、従来型のGame Pass施策が収益に結びつかなかった業界報道とも符合しており、現状課題へのひとつの回答を示します。
ハードウェア撤退は現実的なのか?
しかし、次世代機の開発は水面下で進んでいるはずです。なぜ今、ハードウェア撤退説が現実味を帯びるのでしょうか?そこには、Microsoft親会社の経営視点が存在します。
- 「研究開発」と「量産承認」の壁
次世代チップの設計・開発は進んでいても、それを数千万個単位で製造する「量産」の承認は全く別の経営判断です。量産契約には莫大な費用と違約金リスクが伴います。ハードウェア事業の将来性に見切りをつけた場合、開発投資を「損切り」してでも、量産承認を下さないという判断は十分にあり得ます。
- 親会社Microsoftの視点
Xbox部門は次世代機を望んでも、CEOサティア・ナデラをはじめとする経営陣の視点は「Microsoft全体の利益最大化」です。彼らにとって、利益率の低いハードウェア事業で競争を続けるよりも、Microsoftの強みであるソフトウェアとクラウドで勝負する方がはるかに合理的です。「ゲームをあらゆるデバイスで動くソフトウェアとして売る方が儲かる」という発想は、ごく自然な経営判断と言えるでしょう。
- 「撤退」ではなく「方向転換(ピボット)」
開発した技術を完全に捨てるのではなく、別の形で活用する可能性も考えられます。例えば、開発中のチップを家庭用ゲーム機ではなく、クラウドゲーミング用のサーバーに転用したり、安価なストリーミング専用端末に搭載したりする道です。これにより、これまでの投資を無駄にせず、戦略を転換することが可能になります。
結論:戦略的な決断と今後の論点
以上の点をまとめると、Game Pass値上げはActivision買収の誤算に端を発した重要な決断であり、結果的にXboxをハードウェアの呪縛から解き放ち、新たな事業へと進める契機となったと言えます。
しかし、その道は平坦ではありません。予測される課題も浮かび上がります。
長年のファンからの反発:物理的なコンソールを愛してきたユーザーが、この変化を「裏切り」と捉える可能性があります。ブランドの価値をどう維持するかが問われます。
市場での影響力低下:「Xboxだけの独自コンテンツ」がなくなれば、プラットフォームとしての魅力は減少します。ブランドの価値をいかに再構築するかが鍵となります。
2026年はXboxにとって25周年の節目です。本来であれば次世代機で祝うはずが、現状ではその見込みすら立たないという厳しい状況がうかがえます。最終的な成否は、自社コンテンツの新たな展開と収益の確保にかかっています。今回の戦略変更がコンソール戦争の新しい時代につながるのか、それともブランドの縮小を伴うのか、Microsoftの事業再設計に注目が集まります。
※注意:記事内で言及したリーカー「SneakerSO」による情報や筆者による推測は、Microsoftからの公式発表ではありません。これらはあくまで現時点でのリーク情報であり、鵜呑みにしないようくれぐれもご注意ください。


