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Xbox次世代機の開発継続宣言、その裏で進む「巨大パブリッシャー」化への転換

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マイクロソフトはXbox次世代機の開発継続を公式に発表し、ハードウェア撤退の噂を全否定。しかし、Game Passの大幅な価格改定や本体の段階的値上げは、ファンの間に深刻な不信を生んでいます。水面下で進む財務改革は「巨大パブリッシャー」への転換を示唆している可能性があります。

ハードウェア撤退の噂を公式に否定

2025年10月初旬、「マイクロソフトがXboxコンソール事業から撤退し、クラウドゲーミングへ完全に移行する」という噂がインターネット上で広まりました。この噂は、ゲームフォーラムNeoGAFのユーザーSneakersSO氏が、Xboxのハードウェア計画が「非常に具体的」な状態から「未定」に変わったと投稿したことが発端とされています。情報はソーシャルメディアで拡散され、「ハードウェア開発が中止された」と誤解されるようになりました。

これに対し、マイクロソフトは2025年10月5日に公式声明を出し、これらの噂を明確に否定しました。同社は「Xboxが設計、開発、製造する将来のファーストパーティ製コンソールおよびデバイスに積極的に投資している」と説明し、今年6月に発表されたAMDとの次世代機向け半導体共同開発パートナーシップの継続を強調しました。

さらに、ハードウェア業界で定評のあるYouTuber「Moore’s Law is Dead」は、AMDのエンジニアを含む複数の情報源から、次世代Xbox、コードネーム「Magnus」の開発が「全速力で進行中」であると報じています。2025年10月3日の内部進捗会議でもこのプロジェクトが議論されたとされ、マイクロソフトがMagnusに関連する契約を結んでおり、中止した場合は多額の違約金が発生する可能性があると報告されています。

これらの情報により、「マイクロソフトがコンソールビジネスから撤退する」という憶測は沈静化を見せています。

※「Magnus」に関する情報はリーク情報に基づいており、マイクロソフトからの公式確認は得られていません。

価格高騰とファンの不信感

マイクロソフトが噂を否定した裏には、同社の価格戦略に対するユーザーの根強い不信感が背景にあります。噂が広がったきっかけとなったのは、Xbox Game Pass Ultimateの50%に及ぶ大幅な値上げ発表です。

この改定により、月額料金は米国で19.99ドルから29.99ドルに、英国で22.99ポンドに設定され、年間負担額は約360ドル、または276ポンドにのぼります(日本では月額2,750円で年額33,000円)。これはNetflix PremiumPlayStation Plus Premiumを上回る水準で、主要なエンターテイメント系サブスクリプションサービスの中では最も高価な選択肢の一つとなっています。

特に、Xbox社長のサラ・ボンド氏が過去に、Game Passがすでに利益を上げており、年間50億ドルの収益を上げていると述べていたことが、今回の値上げへの反発を強めています。「収益を計上しているサービスへの大幅な価格改定は、利用者から『不必要な利益追求』と見なされる結果となりました。

加えて、海外では発売から5年を経過した現行機「Xbox Series X|S」に対して、2025年に二度目となる価格引き上げも発表されました。Xbox Series Xの価格は、発売時の499ドルから、2025年5月に599.99ドルへ、そして同年9月に649.99ドルへと段階的に上昇し、結果として5年間で150ドル上昇しています。マイクロソフトはこれを「マクロ経済環境の変化」と説明していますが、多くのファンはこの措置をブランド方針に対する失望と受け止めています。

専門家が警告するブランドの危機

ゲーム業界のアナリスト、MIDiA Researchのブランドン・サットン氏は、価格上昇と信頼低下が「Xboxブランドおよびマイクロソフトのゲームエコシステムに長期的な影響を与える可能性がある」と指摘しています。サットン氏は、「消費者は経済的圧迫を感じており、仮にGame Passの収益が堅調であっても、価格上昇と信頼の低下が組み合わさるとXboxブランド全体に持続的な影響を及ぼすだろう」と警告しています。

また、Xbox共同創設者のローラ・フライヤー氏は、現在の経営がファンの声に十分耳を傾けていない「バブル状態」にあると批判しました。「リーダーシップは、何が彼らを偉大にしたのかを理解していない。Game Passが50億ドルを稼いだという発表後の価格引き上げは、その一例だ」と述べています。

フライヤー氏はさらに、マイクロソフトの「This is an Xbox」キャンペーンについても言及し、「『This is an Xbox』は長年にわたって築かれたブランド価値を破壊している」と述べ、「当初は誰でも歓迎するメッセージだったが、結果的にブランドの独自性が薄れた。すべてがXboxであるなら、逆に何もXboxではなくなってしまう」と述べ、専用ハードウェアの意義が希薄化した可能性を指摘しています。

業界関係者には、今回の状況を2013年のXbox One発表時の失敗と比較する声もあります。当時、常時オンライン接続や中古ゲーム制限の方針が強い反発を呼び、ファンの信頼を損ねた経緯がありました。この結果、XboxはPlayStationに次ぐ第3位の立場に甘んじることとなりました。

財務変革と「パブリッシャー」化への転換の兆候

こうした現状を踏まえ、マイクロソフトの将来戦略の一端は、新たに公開された上級財務職の求人情報からうかがえます。同社は「Gaming Finance Transformation Lead(ゲーミング財務変革リード)」という職を新設し、全ゲームスタジオの財務プロセスを統合・調和することを「緊急に」推進するとしています。

求人情報には、買収した企業の財務変革を「緊急に」加速し推進する旨の明記もあり、その背景には2023年に完了した約680億ドルでのActivision Blizzard買収があると考えられます。

この巨額の買収投資を踏まえると、2027年にリリース予定とされる次世代機への投資回収を待つ余裕は限られており、このプレッシャーが部門全体の財務を根本的に見直す直接的な動機となっている可能性があります。

この財務統合の動きは、従来の低利益率コンソールビジネスモデルから距離を置き、プラットフォームレスで収益性の高い「巨大ゲームパブリッシャー」としての再定義を目指している可能性を示唆しています。Call of DutyやMinecraftなどの主要IPを複数プラットフォームに展開し、収益最大化を図る戦略が見て取れます。

※財務変革と「パブリッシャー化」の直接的な因果関係については、現時点では推測の域を出ないことにご留意ください。

岐路に立つXboxの未来

マイクロソフトは、次世代機開発継続を公式に表明しつつも、全スタジオの財務統合を急ぎ、「巨大パブリッシャー」への変革を模索している可能性があります。これはハードウェアを続けるか否かの選択肢を残しつつ、その成否が開発中とされる次世代機「Magnus」の市場評価にかかっていると考えられます。

リーク情報によれば、「Magnus」はAMDのZen 6 CPUとRDNA 5世代GPUを搭載し、最大48GBのRAMを備える可能性があるとされています。XboxとPCのハイブリッド型で、Steam対応も検討されていると報じられています。

しかし、ブランドの信頼低下は技術進歩以上に困難な課題であり、「Magnus」の仕様や機能だけでは、「なぜこれを購入すべきか」というユーザーへの明確な価値提案が必要です。信頼回復ができなければ、Xbox Series X|Sと同様の困難な道をたどるリスクがあります。

マイクロソフトは今、ハードウェア、ソフトウェア、サービスの各分野でクリアなビジョンを示し、ユーザーに「Xboxの本質」を再提示する必要があります。そして、短期的な収益よりも長期的な信頼構築を優先する姿勢を、具体的な行動で示さなければなりません。その手腕が真に試される時期を迎えています。

情報元:WindowsCentralEurogamerMicrosoftCareers

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