
2027年は、ゲーム原作映画がかつてない盛り上がりを迎える見通しです。実写版「ゼルダの伝説」、大ヒットした「マインクラフト」の続編など、世界的人気タイトルが集中して公開予定。2023年の「スーパーマリオ」の成功は、ゲームIPが巨大なビジネス市場であることを証明しました。なぜ今〝黄金期〟が到来しようとしているのでしょうか?
2027年が、ゲーム原作の実写・アニメーション映画市場において、過去最大級の公開ラッシュを迎えると報じられています。「ゼルダの伝説」「マインクラフト」続編、「DEATH STRANDING」など、世界的人気の大型タイトルがこの年に集中して公開されるためです。これらは開発費・宣伝費が高額なAAA級タイトルと呼ばれる作品群であり、ゲームIP(知的財産)の活用戦略が進化し、映画業界が真の「黄金期」に近づいている兆候といえます。
2027年、注目される主なタイトルと公開日
現時点で2027年の公開が発表・予定されている主要作品は以下の通りです。これらはいずれも単体で興行的成功が見込まれるだけでなく、同時期に集中することで市場全体の価値を押し上げる可能性があります。
確定公開日が発表された作品
- 「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4」: 2027年3月19日公開予定。
- 「ゼルダの伝説」(実写映画): 2027年5月7日公開予定。
- 「A Minecraft Movie 2」: 2027年7月23日公開予定。
2027年公開が予定・示唆されている作品
- 「DEATH STRANDING」: 「コジマプロダクション」の創立10周年イベント「Beyond The Strand」で2027年公開予定と言及されたA24とコジプロが共同製作の映画化企画。
- 「Horizon Zero Dawn」: Sony対Tencent訴訟の法廷資料で2027年公開が示唆された。
「ゼルダの伝説」実写映画が象徴するもの
任天堂が長年避けてきた〝実写化〟に踏み切った背景には、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(2023年)の成功があります。同作は全世界で13.6億ドル超を記録し、アニメ映画史上でも上位に位置する大ヒットとなりました。宮本茂氏は当時、「信頼できる制作パートナーと開発初期から協力できる体制が整った」と語っており、今回の「ゼルダの伝説」ではより高い芸術性と世界観再現に挑む姿勢が見て取れます。
制作体制とキャスティング
監督は「メイズ・ランナー」シリーズ、「猿の惑星キングダム」のウェス・ボール氏、プロデューサーは宮本茂氏とアヴィ・アラッド氏(「スパイダーマン」シリーズ)が務めることが発表されています。
任天堂の公式発表による主要キャスト
- ゼルダ役: Bo Bragason(ボー・ブラガソン)
- リンク役: Benjamin Evan Ainsworth(ベンジャミン・エヴァン・エインズワース)
ボー・ブラガソン氏、エインズワース氏は若手ながらファンタジーやドラマで確かな実績を持つ俳優として注目されています。
また、任天堂の宮本茂氏は自身のX(旧Twitter)アカウントで以下のように投稿し、ファンに向けてメッセージを送りました。
宮本です。「ゼルダの伝説」の実写映画は、ゼルダ役をBo Bragasonさん、リンク役をBenjamin Evan Ainsworthさんに演じていただくことになりました。おふたりの出演が今から楽しみです。「ゼルダの伝説」実写映画は2027年5⽉7⽇に劇場公開予定です。もうしばらくお待ちください。
物語は未発表ですが、任天堂は「ゲームの精神を忠実に再現する映像表現を目指している」とし、従来のゲーム内での〝無言の勇者〟像をどのように映像で再構築するのか、注目が集まっています。
2016年を上回る可能性
これまで最も充実したゲーム映画の年は2016年で、「Warcraft」「Assassin’s Creed」「Ratchet & Clank」「The Angry Birds Movie」「Kingsglaive: Final Fantasy XV」などが公開されました。しかし業界関係者は「2027年はこれを上回る勢いがある」と分析しており、制作技術や映像表現の進化により、質的にも飛躍が期待されると指摘しています。
2027年への助走となる2026年
2027年の黄金時代へ向けた助走期間として、2026年も注目作が控えています。
- 「Silent Hill」: 2026年1月全米公開予定、日本での公開時期は未定。
- 「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」: 2026年4月24日に日本公開予定。
- 「Mortal Kombat 2」: 2026年5月全米公開予定、日本での公開は未定。
- 「Resident Evil」: 2026年9月全米公開予定、日本での公開時期は未定。
- 「Street Fighter」: 2026年10月16日に全世界同時公開。
この2年間にわたる連続的な公開は、ゲームIP映画市場の拡大をより加速させると見られています。
「呪われたジャンル」からの脱却
かつてゲーム原作映画は「呪われたジャンル」と揶揄されることも多くありました。しかし、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の大成功により、その評価は一変しました。また「ソニック」シリーズやドラマ版「ザ・ラスト・オブ・アス」の成功もあり、スタジオ各社がゲームIPへの注力を強めています。
特に「ザ・ラスト・オブ・アス」(HBO)は、原作ゲームの世界観を忠実に再現しつつ、映像作品として独立した価値を提供することに成功しました。これにより、「原作への忠実性」と「映像作品としての完成度」を両立できることが証明されました。
さらに、映像化の成功は、原作ゲームの売上にも好影響を与えています。ドラマ版「Fallout」配信時には関連ゲームのデイリーアクティブユーザー(DAU)が大幅増加し、その効果が長期的に続きました。こうした相乗効果は、IPの寿命を延ばすメディア・エコシステムとして注目されています。映画やドラマが新規ファン層を開拓し、原作ゲームへの関心を再燃させることで、IP全体の価値を持続的に高める循環が生まれているのです。
その先に控える大型プロジェクト
2027年以降を見据えた映画化プロジェクトも数多く進行中です。
確定・進行中のプロジェクト
- 「ELDEN RING」: Alex Garland監督(「28 Years Later」「Civil War」)によるA24製作での映画化が進行中。
- 「Helldivers」: ソニー製作。
- 「BioShock」: Netflix製作。
- 「Gears of War」: Microsoft/Coalition製作。
- 「Ghost of Tsushima」: ソニー製作。
- 「Days Gone」、「Stray」など、その他ソニー傘下IPの映画化も計画中。
黄金期に向けた期待と課題
この流れは、ゲームがグローバルエンターテインメントの中心としての地位を確立したことの象徴です。すでにゲーム産業の市場規模は映画産業を凌駕しており、IP活用による相乗効果はスタジオにとって極めて戦略的な意味を持ちます。
成功の背景には、複数の要因があります。まず、CGI技術の向上により、壮大なゲーム世界を忠実に再現することが容易になりました。また、原作開発者が制作に深く関与することで、作品の世界観を損なわない映像化が実現しています。加えて、幼い頃からゲームに親しんだ世代が主要な観客層となったこと、そして配信プラットフォームの普及が、多様なフォーマットでの幅広い層へのアプローチを可能にしました。
一方で、この黄金期を持続させるためには課題も存在します。作品数の増加に伴い観客の目が厳しくなるため、単なる量産を避け、質の高さを維持することが不可欠です。原作の世界観を損なわない脚本・演出力や、類似作品との明確な差別化がこれまで以上に問われるでしょう。このブームを持続的な市場の成長へ繋げるためにも、各地域の文化に配慮したグローバルな視点での作品展開が求められます。
まとめ
2027年は、ゲームと映画という二大産業の融合を象徴する年となる可能性が高いです。「ゼルダの伝説」を筆頭とする大型タイトルの映画化成功は、次世代のIP戦略にも大きな影響を与えることは間違いありません。
ただし、真の「黄金期」となるかどうかは、各作品が単なる話題性を超えて、映画作品として独立した価値を提供できるかにかかっています。原作への敬意と映像作品としての完成度を両立させた作品がどれだけ生まれるか、業界全体の取り組みが注目されます。
※本記事の内容は、各種報道・制作発表時点(2025年10月)の情報に基づいており、延期や中止など、今後のスケジュール変更等の可能性があります。最新情報については各制作会社の公式発表をご確認ください。
情報元:PCGamer