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任天堂、海賊版ストリーマー訴訟で勝訴 ─ 挑発的言動の被告に損害賠償命令

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任天堂は、自社未発売ゲームの不正配信を続けたストリーマー「ジェシー・キーイン」氏(通称EveryGameGuru)に対する著作権侵害訴訟で勝訴しました。コロラド州連邦裁判所は同氏に17,500ドル(約270万円)の賠償と、将来の権利侵害を禁じる差止命令を言い渡しました。任天堂の知的財産保護の姿勢を示す重要な判決事例です。

任天堂、海賊版ゲーム配信者に対し勝訴

任天堂は、発売前のNintendo Switch向けゲームを海賊版でストリーミング配信し、挑発的な言動を繰り返していたジェシー・キーイン氏(通称「EveryGameGuru」)に対し起こした著作権侵害訴訟で勝訴しました。2025年10月初旬、スコット・T・バーホラック連邦治安判事が任天堂の請求を認める勧告を行い、ゴードン・P・ギャラガー連邦地方判事が10月29日にこれを正式に採択し、最終判決が下されました。これにより、コロラド州連邦地方裁判所はキーイン氏に17,500ドル(約270万円)の損害賠償金の支払いと、将来的な著作権侵害行為を禁じる恒久的な差止命令を命じました。

※判決が下された2025年10月29日頃の為替レートに基づき、17,500ドルは約270万円(1ドル=約154円で計算)として記載します。

事件の経緯と被告の挑発的行為

この訴訟は2024年11月、任天堂がキーイン氏を提訴したことから始まりました。訴状によれば、キーイン氏は2022年以降、「マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!」など、少なくとも10タイトルの任天堂の未発売ゲームを、発売前に50回以上にわたり不正にライブ配信していました。

任天堂が著作権侵害を警告すると、キーイン氏は反省の態度を見せるどころか、SNS上で「資本主義はガンだ!」「あなた方は企業を運営しているかもしれないが、ストリートは俺が仕切る」といった挑発的なメッセージを発信しました。さらに、任天堂の弁護士に対して脅迫的かつ不適切な投稿を行うなど、挑発的な行動をエスカレートさせていきました。キーイン氏は任天堂に対し、「俺には千ものバーナーチャンネル(使い捨てアカウント)がある」「一日中これができる」と豪語する書簡を送付したとも伝えられています。

キーイン氏は訴状の送達を意図的に回避し続けたため、最終的に裁判所は電子メールおよび彼の母親、祖母、パートナーの住所への送付をもって代替送達(substituted service)を許可し、送達が行われました。しかし、キーイン氏は法廷での弁護を一切行わなかったため、2025年3月26日に訴訟への不応訴(デフォルト)が登録され、任天堂が改めて欠席判決(デフォルト判決)を請求することとなりました。

裁判所の判決内容

裁判所は、キーイン氏に対し17,500ドル(約270万円)の損害賠償支払いを命じました。この金額は、任天堂がリストアップした10タイトル全てに対して請求できた場合に法定損害賠償として請求可能であった額(少なくとも10万ドル、最大で100万ドル以上)と比較すると、比較的控えめな請求額です。内訳は、「マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!」の侵害に対する1万ドル(約154万円)と、15件のコピーガード回避(技術的保護手段の回避)に対する各500ドル(約7.7万円)、合計7,500ドル(約115万円)です。

判決には、キーイン氏が今後、任天堂の著作物を侵害するストリーミング配信を行うことや、Switchエミュレータなどの任天堂の技術的保護手段を回避するソフトウェアや技術に関与することを禁じる恒久的な差止命令も含まれています。

一方で、任天堂が要求した「侵害に使用されたすべての回避デバイスの破棄」と「キーイン氏と協力する第三者への差止命令の適用」については、裁判所はこれを認めませんでした。デバイスの破棄については、キーイン氏が使用したエミュレータなどがオンラインで広く入手可能なソフトウェアであること、および侵害に使用されたツールの入手方法に関する証拠が不足していたことから、要求が「不明確」かつ「不合理」であると判断されました。また、第三者への差止命令適用については、任天堂が具体的な協力者を特定しなかったため、棄却されました。

判決が示す、任天堂の「狙い」

この判決で本当に重要なのは、賠償金の金額の大きさではありません。任天堂が海賊行為を行うすべての人に送った、ある強力なメッセージです。これを「戦略的抑止」と呼びます。

任天堂は、やろうと思えば1億円以上の損害賠償をキーイン氏に請求することも可能でした。しかし、あえて約270万円という金額に抑えたことには、次の二つの明確な狙いがあったと考えられます。

1. 「個人だから大丈夫」は通用しないという警告
賠償額は、破産するほど巨額ではないものの、個人にとっては大きな痛手となる金額です。これは、「軽い気持ちの海賊行為でも、一度訴えられれば決してタダでは済まない」という強いメッセージになります。

2. 悪質な態度のユーザーは「見せしめ」にするという意思表示
キーイン氏が選ばれた最大の理由は、彼の悪質な態度にあります。「ストリートは俺が仕切る」と任天堂を公然と挑発し、訴訟から逃げようとしました。今回の判決は、「法廷では、そのような威勢のいい言葉は通用しない」ということを示したのです。

つまり、任天堂は「海賊版ツールを作る側」だけでなく、「それを使って悪質な挑発をする側」も厳しく罰するという姿勢を明確にしました。今回の判決は、ゲーム業界全体に対し、海賊行為とその後の態度は厳しい結果を招くと知らしめる、強力な警告事例となりました。

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情報元:TorrentFreak

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