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もう一度「Anthem」を響かせることはできたのか ― 失われた15億円の復活構想

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2026年1月12日、BioWareの「Anthem」がサービス終了を迎えました。その直後、元製作総指揮マーク・ダラ氏が「ローカルサーバーコードの実在」と「約15億円でのシングル化構想」を激白。なぜ救済は叶わなかったのか?本作の最期が突きつけるライブサービスゲームの課題と、失われた可能性を詳報します。

2026年1月12日(月)午後2時5分(EST)。エレクトロニック・アーツ(EA)とBioWareが運営するオンラインアクションRPG「Anthem」のサーバーが停止されました。かつてBioWareの歴史における「転換点」と期待されたこの大作は、手元に物理ディスクこそ残るものの、プレイ不可能な存在としてその生涯を終えたのです。しかし完全な「死」を迎えた直後、開発幹部から驚くべき事実と実現しなかった復活構想が明かされました。

サーバー閉鎖と「物理的な虚無」

「Anthem」のサービス終了は、2025年夏に告知された既定路線でした。しかし実際にその瞬間が訪れると、単なる一タイトルの終了以上の衝撃を市場に与えました。

現代のゲーム市場において、クラウドサーバーに依存するライブサービス型タイトルは一般的です。しかし、常時接続が必須の設計ゆえ、運営側がスイッチを切れば、パッケージ版ディスクは即座に無価値なプラスチックの塊と化してしまいます。「Anthem」はダウンロード販売が停止され、サブスクリプション「EA Play」からも削除されました。中古市場では2ポンドという安値で取引されていますが、どのディスクを手に取ろうと、メインメニューの先へ進むことは二度とできません。

BioWareが構築した、陰鬱なジャングルに覆われた世界や巨大な遺跡群。パワードスーツ「ジャベリン」で空を飛ぶ独自の浮遊感。これらすべての資産は、デジタル空間から完全に消失しました。プレイヤーが費やした数百時間の記録や、課金アイテムも同様です。

本作には、爽快な飛行アクションと、拠点「フォート・タルシス」での対話中心の物語という二つの側面がありました。後者はBioWareの伝統を継承する要素であり、高品質なアニメーションや演技、美しい都市描写は、リリースから6年を経ても色褪せない魅力を放っていました。

コミュニティでは、本作を「史上最大の『What If(もしも)』のゲーム」と評する声があります。プレイすることは、実現しなかった可能性を想像する行為でもありました。協力プレイの骨格には確かな潜在能力があり、完成に至るまでの時間さえ足りていれば、という惜別の念が絶えません。

「No Man’s Sky」級の復活はあり得たか

「Anthem」の失敗については多くの議論がなされてきましたが、元BioWareのベテランであり、本作の開発最後の16ヶ月間を率いたマーク・ダラ氏は、状況次第では全く異なる未来があったと主張しています。

ダラ氏は最近のインタビューで、2021年初頭に開発中止となった大規模改修プロジェクト「Anthem Next(通称:Anthem 2.0)」に言及しました。開発を継続していれば「No Man’s Sky」のような劇的なカムバックを遂げられたか、という問いに対し、ダラ氏は「可能性はあった(It could have been)」と断言しました。

同氏は、EAによる開発中止の判断は「間違い」だったとの確信を示しています。当時のプロジェクトリーダー、クリスチャン・デイリー氏も声明で、期待を寄せていたコミュニティやチームにとっての「失望」を認めていました。しかし現実は冷徹で、リソースは「Mass Effect」や「Dragon Age」の新作へ集中されることとなりました。

実在した「ローカルサーバー」用コード

今回の終了に関連して最も注目すべきは、ダラ氏が明かした「ローカルサーバー」の実在です。

「Anthem」は処理を中央サーバーで行う方式だったため、サーバー停止がそのままプレイ不可能に直結しました。しかしダラ氏によれば、開発環境では「ローンチ数ヶ月前まで、ローカル環境でサーバーを稼働させるコードが動作していた」というのです。

ダラ氏は「現在は不明だが、復元は可能だろう」と述べています。もしこのコードが公開されていれば、コミュニティ主導のプライベートサーバーの立ち上げや、オフラインでのプレイ継続が可能だったかもしれません。かつて「Titanfall 2」の「Northstar」や「Star Wars バトルフロント II」の「Kyber」において、ファンがサーバーを延命させた実例のように、道筋さえあれば熱心なファンがゲームを救えた可能性があったということです。

1000万ドルで実現できたシングル化構想

さらにダラ氏は、約1000万ドル(約15億円)の追加予算で「Anthem」をシングルプレイヤーゲームへ再構築する具体案も披露しました。

  • 現行機への最適化:最新コンソールやPCに合わせ、60fps固定化などのグラフィック強化を行う。
  • サーバー依存の撤廃:ローカルサーバー技術を応用し、EAのインフラを不要にする。
  • ストーリーテリングへの回帰:マルチプレイヤー要素を排除。他プレイヤーをAI制御の「コンパニオン」に置き換え、物語主導の体験へ刷新する。

既存のシステムを活かし、BioWareらしい「仲間と共に旅をする物語」を再構築すれば、ルートシューターというジャンルを避けていたファン層にも訴求できたはずです。当然、EAが収益性を失ったタイトルに再投資する可能性は極めて低いですが、技術的な「救済の青写真」は存在していました。

運営型ゲームの「終活」と保存の責任

「Anthem」の事例は、業界全体に「運営型ゲームの終活」という重い問いを投げかけています。

企業側の都合でいつでもアクセス権を剥奪できる現状に対し、「Stop Killing Games(ゲームを殺すな)」といった消費者運動は、サービス終了時のオフラインモード提供などを求めています。しかし「Anthem」は、最後まで課金要素や厳しいゲームバランスに変更が加えられることなく、静かに消滅しました。

サービス終了時こそ、制限を解放してプレイヤーの忠誠に応える絶好の機会であったはずです。しかし、生前と同様に死においても放置された本作は、パブリッシャーが「忘れたがっている負の遺産」として扱われた印象を拭えません。

終末期、拠点の「ローンチ・ベイ」には最後の別れを惜しむプレイヤーたちが集まっていました。手を振り、佇み、この瞬間を共有しようとする彼らに対し、運営側が感謝と共に送り出す姿勢を見せることもできたはずです。

失われた可能性が業界に残した教訓

「Anthem」は名門スタジオが挑んだ野心的な賭けであり、結果として深い傷跡を残しました。しかし、そこには確かに美しい世界と、洗練されたアクションが存在していました。

マーク・ダラ氏の発言は、単なる回顧録ではありません。「技術的には保存可能だったものが、ビジネス上の判断で破棄された」という事実の告発です。今後、同様の運命を辿るゲームが増える中で、業界は「終わりの作法」と「デジタル資産の保存」に真剣に向き合う必要があるでしょう。

フリーランサーたちの翼は折れましたが、その失敗と可能性の記録は、次の世代へと引き継がれるべき教訓となるはずです。

情報元:TheGamer

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