
元Respawn開発陣による注目の新作FPS「ハイガード(Highguard)」がついにリリースされました。初日9.7万人接続を記録する一方で、Steam評価は伸び悩み「やや不評」の状態です。その主因とされる「3対3」のゲームデザインや、裏目に出た広報戦略とは一体何だったのか。期待の新作が直面している課題の全貌に迫ります。
元Apex開発陣の野心作、試練の船出
「Apex Legends」や「タイタンフォール」シリーズの中核を担ったベテラン開発者たちが設立した新スタジオ、Wildlight Entertainment。彼らが満を持して2026年1月26日、PC・PS5・Xbox向けに基本プレイ無料でリリースした初の自社タイトル「ハイガード(Highguard)」が今、Video Games Chronicleなどが報じるように、Steam評価「やや不評」という試練の時を迎えています。
数字上、そのデビューは華々しいものでした。SteamDBのデータによれば、リリース初日の最大同時接続者数は97,249人を記録し、完全新規IPの基本プレイ無料タイトルとしては好調なスタートを切りました。しかし、その内実は決して芳しいものではありません。Steamユーザーレビューにおける肯定的な評価は32.05%にとどまり、多くのプレイヤーがゲームシステムに対し、困惑と不満を表明する事態となっています。
「FPS界のドリームチーム」とも呼べる彼らの新作が、なぜこれほどまでにプレイヤーの期待と乖離してしまったのでしょうか。その背景には、あまりに野心的なゲームデザインと市場トレンドのミスマッチ、そして広報戦略上の混乱がありました。
「3対3」対「広大マップ」のミスマッチ
本作が掲げるのは「PvPレイドシューター」という、既存のジャンルを掛け合わせた実験的なシステムです。一般的なバトルロイヤルが「生存」を目的とするのに対し、本作のゴールは敵拠点内の発電機破壊、つまり「攻城戦」にあります。
試合の流れは大きく二つのフェーズに分かれます。前半は広大なマップでの「物資調達と争奪戦」。プレイヤーは騎乗動物を駆り、マップ中央に出現する「シールドブレイカー(剣)」を巡って激突します。剣を奪った側が攻撃権を得て、敵拠点へと進軍する仕組みです。
後半は、剣を敵拠点に運び込むことで始まる「攻城戦」。ここではリスポーン(復活)が可能な爆破ミッション形式となり、攻撃側は拠点のコア破壊を、防衛側はそれを阻止することを目指します。
「バトルロイヤル」の緊張感と「タクティカルシューター」の戦略性を一本の試合に詰め込んだ構成ですが、最大の批判点となっているのがこの設計のバランスです。開発チームは戦術的な深みを出すため、あえて参加人数を「3対3」の計6名に限定しました。
広すぎるマップが生む「静かすぎる戦場」
問題は、用意された5つのマップがあまりに広大であることです。現代のシューター市場において主流なのは、短時間で多くの敵と交戦し、快感を得られるハイテンポな体験です。対して「ハイガード」では、広大なフィールドを移動する時間が長く、接敵の頻度が極端に低いのが現実です。
PC Gamerのレビューでも「広大なフィールドを移動する時間が長く、敵との遭遇頻度が低い」と指摘されています。この「静かな時間」を戦略的緊張感と捉えるべきか、それとも単なる退屈と捉えるべきか。現状では多くのプレイヤーが後者を感じており、5対5、あるいは10対10であれば違った結果になったかもしれないという声も少なくありません。
期待値を誤らせた広報戦略と「迷走」
このミスマッチをさらに悪化させたのが、かつて「Apex Legends」をサプライズリリースで成功させた経験からくる「ゴー・ダーク(Go Dark/沈黙)」戦略と、リリース当日に発生した不可解な動きでした。
The Game Awards 2025での「大トリ」発表の誤算
2025年12月の「The Game Awards 2025」において、本作はイベントの大トリとして大々的に発表されました。しかし、公開された映像は雰囲気重視のもので、ゲーム独自の複雑なルールを伝えるには至りませんでした。
最終枠という「最高潮の期待」がかかる場面で、具体的なゲームプレイの全貌が見えなかったことが、「元Respawnによる次世代の超大作FPS」という誤った期待を一人歩きさせ、実際のニッチで複雑なゲーム性とのギャップを広げてしまったと言えます。
Steamストアから消えた「Titanfall」の文字
さらにリリース当日の1月26日、Steamのストアページで興味深い変更が行われました。それまで「ハイガード」の売り文句として記載されていた「Apex LegendsとTitanfallのクリエイターがお届けする(From the creators of Apex Legends and Titanfall)」という一文が、突如として削除されたのです(Kotaku)。
Geoff Keighley氏がTGAでの発表時に「ApexとTitanfallを作ったチームの61名による」と強調していたにもかかわらず、リリースと同時にその実績への言及を避けるような動きを見せたことになります。これがEAとの権利関係によるものなのか、あるいは低評価を受けている本作と過去の名作を切り離そうとしたのかは不明ですが、開発・運営サイドの混乱を象徴する出来事として、ファンの不安を煽る結果となっています。
「操作性は最高」という希望の光
それでも、本作を「完全に失敗作」と断言することはできません。多くの批判レビューの中にさえ、「銃撃の手触りやキャラクターの操作性は最高だ」という賛辞が含まれているからです。
Kotakuのレポートでは「優れた銃撃感覚とレスポンシブなコントロール」が高く評価されています。また、Unreal Engine 5.3.2を採用した美麗なビジュアルも特徴の一つです。元Respawn開発陣の得意とする、吸い付くような操作性と爽快なアクションは本作でも健在です。
個性豊かな8人のウォーデン
プレイヤーが操作する「ウォーデン(Warden)」と呼ばれる8人のキャラクターたちも、明確な役割と個性を持っています。氷の壁を作り出す「Kai」や、隠密行動に長けた「Scarlet」など、各キャラクターが果たすべき役割が明確であり、このアーキタイプを学んでいく体験は高く評価されています。
いわば「車のエンジン(基本動作)は最高だが、コース設計(ルールとマップ)がドライバーに合っていない」というのが、現在の「ハイガード」に対する正確な評価でしょう。
起死回生の鍵は「シングルプレイ」
開発チームは長期的な改善を約束しており、2026年を通じて2週間ごとのエピソード更新やコンテンツ追加を計画しています。特に注目すべきは、将来的な「シングルプレイモード」導入への強い意欲です。
共同創設者のChad Grenier氏は、「いつかシングルプレイ体験を作りたい(Selfishly, we crave a single-player experience someday)」と語っています。彼らはかつて「タイタンフォール2」で伝説的なキャンペーンモードを作り上げたチームです。彼らの得意とする「物語とアクションの融合」が実現すれば、本作の評価を一変させる可能性を秘めています。
総評:今は「待機」か、それとも「挑戦」か
現状の「ハイガード」は、万人受けするタイトルとは言い難い状態です。しかし、「広大なマップを戦略的に移動し、一瞬の接敵に全てをかける」というタクティカルな緊張感を好むプレイヤーや、純粋に最高峰の射撃フィールを味わいたい方にとっては、今から触れる価値のある一作と言えます。
ライブサービスゲームが復活を遂げた例は過去にもあります。開発者がコミュニティのフィードバックに耳を傾け、マップ密度やマッチ人数の調整を行えば、本作が「真のドリームチームの作品」として再評価される日は、そう遠くないかもしれません。
