
Xbox部門の新CEOに就任したアーシャ・シャルマ氏。AI部門出身の彼女は「魂のないAI」を否定しましたが、SNSでのぎこちない対話からAI使用を疑われ、ほろ苦いスタートとなりました。スペンサー氏の後任という重責に加え、25周年の大型タイトルを控える今年、その手腕が厳しく試されることになりそうです。
2026年2月23日、マイクロソフトはゲーム部門(Xbox)における主要なリーダーシップの変更を発表しました。長年にわたりCEOとしてブランドを牽引したフィル・スペンサー氏が引退し、現プレジデントのサラ・ボンド氏も社外での新たなキャリアへ移行するため退任します。これに伴い、新たにアーシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏がマイクロソフト・ゲーミングのCEOに就任しました。
業界内で絶大な知名度と信頼を持つスペンサー氏とボンド氏の同時退任は、Xbox事業にとって極めて大きな転換点となります。後任となる36歳のシャルマ氏は、ゲーム業界での直接的なキャリアを持たない「外部」からの登用に近く、その経営手腕と今後の舵取りに業界全体の注目が集まっています。
テック・AI分野中心の異色なキャリア
シャルマ氏の経歴は、ゲーム制作ではなくテクノロジー産業のマネジメントが中心です。2011年にマイクロソフトのマーケティング部門に入社し2年間勤務した後、住宅向け保険プラットフォーム「Porch Group」のCOOを務めました。その後、テック業界へ復帰する形でMeta(旧Facebook)に入社し、MessengerおよびInstagram Directのプロダクト責任者、ならびに通話・ビデオ・キッズ向け体験部門のGM(ゼネラルマネージャー)を務めています。
2021年からは大手食料品テクノロジー企業「Instacart」のCOOを務め、3年後にマイクロソフトへ復帰しました。直近では「CoreAI」製品のプレジデントとして、AIモデル、アプリケーション、エージェント、責任あるAI(Responsible AI)、および開発者向けツールのポートフォリオを統括していました。
このように、シャルマ氏はテックおよびAI分野での豊富なマネジメント経験を有していますが、ゲームスタジオの運営や開発に関与した実績はありません。この点が、現場叩き上げの多かった従来のエグゼクティブとは大きく異なる特徴となっています。
AI否定宣言とSNSでのボット疑惑
シャルマ氏が直前までAI部門を率いていた背景を受け、一部のコアユーザーからはゲーム制作へのAI導入に対する懸念の声が上がっていました。これに対し、シャルマ氏は就任声明において以下のように述べ、クリエイターとファンへの配慮を示しています。
「私たちは短期的な効率性を追求したり、エコシステムを『魂のないAIによる粗製濫造(soulless AI slop)』で溢れさせたりすることはしません」
この発言は、生成AIによるコンテンツの質的低下を懸念するコミュニティを安心させるためのものでした。しかし、就任直後の週末における彼女のX(旧Twitter)アカウントでの活動が、皮肉にもAI疑惑を招き、議論を呼ぶこととなりました。
シャルマ氏はXboxユーザーとの交流を図り、複数のリプライを行いましたが、その内容に対し「AIボットによる自動生成ではないか」との指摘が相次ぎました。問題とされた返信の一例は以下のとおりです。
「素晴らしいリストです。別のリプライで私のトップ3も挙げました―Halo、Valheim、007です。Chrono Triggerは久しぶりにプレイしました。すべてのエンディングを見ましたか?詳細をありがとうございます。本当に感謝しています」
HaloやChrono Triggerといった具体的なタイトルへの言及が含まれているものの、前後の文脈のつながりが希薄で、独立した短文を機械的に繋ぎ合わせたような不自然さがあるとして、英語圏のユーザー間では生成AIツールの利用が疑われました。
加えて、公開された彼女のゲーマータグ(ユーザーID)が先月作成されたばかりであるにもかかわらず、すでにかなりのプレイ時間が記録されていることも特定されました。これに対しシャルマ氏は、「私はフィル・スペンサーではありません(I am no @XboxP3)」と投稿し、自身が前任者のような熱心なゲーマーではないことを率直に認めています。
信頼を得る鍵は25周年の展開
前任のスペンサー氏は、自身がコアゲーマーであることを前面に出し、コミュニティとの直接的な対話を通じてブランドの信頼性を高めてきました。対してシャルマ氏は、ゲーム業界での経験不足、AI活用への根強いアレルギー、そして就任直後のSNS対応という逆風が重なり、コミュニティとの関係構築において慎重な立ち回りが求められる状況にあります。
もっとも、経営者としての真価は最終的に事業成果によって決まります。2026年はXboxブランドの25周年にあたり、『Fable』、『Forza Horizon 6』、『Halo: Campaign Evolved』、『Gears of War: E-Day』といった主要タイトルのリリースが予定されています。これらは前体制下で準備されたものですが、これらのローンチを成功させ、ハードウェアおよびソフトウェアの品質を維持できるかが、新体制の当面の課題となります。
テックおよびAI分野の知見を持つシャルマ氏が、Xbox事業にどのような新しい視点をもたらすのか。まずは予定されているタイトルの展開と、今後の具体的な戦略発表が待たれます。逆風の中での船出となったシャルマ氏が、実績でゲーマーの信頼を勝ち取れるか、その手腕が厳しく問われることになりそうです。
情報元:wccftech


