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セガ、高評価が売上に届かぬジレンマ ─ データ主導で挑むマーケティング改革

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セガの最新決算から、作品の質に対する高い評価が実売に結びつかないという課題が見えてきました。競合に後れを取るデータ活用の現状をどう打破するのか。IPを軸にした世界同時展開や組織改革など、開発力を収益に変える「売る力」の再構築に向けた同社の現在地を探ります。

近年のリリース作品が市場で高く評価される一方で、それが実売の伸び、すなわち収益の向上に直結していないというジレンマに、セガは直面しています。

セガサミーホールディングスの決算説明会にて、グループCEOの里見治紀氏とグループCFOの深澤恒一氏は、自社のマーケティング戦略や販売体制に大きな改善の余地があることを率直に認めました。経営陣が現状を「停滞」と厳しく自己評価する背景には、一体何があるのでしょうか。

高評価と売上の乖離:セガが抱えるジレンマ

2024年から2026年にかけ、セガとその子会社アトラスは高評価なヒット作を連発しています。レビュー集積サイト「Metacritic」では、「メタファー:リファンタジオ」が94点という驚異的なスコアを記録。ほかにも「SHINOBI 復讐の斬撃」(87点)や「Two Point Museum」(84点)、「ソニックレーシング クロスワールド」(82点)など、軒並み高い評価を得ています。

さらに2025年には、「Virtua Fighter 5 R.E.V.O.」や「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」といった人気シリーズの新作・復刻版を投入。数百億円規模の「AAAタイトル」と比較して開発費を抑えつつ、相対的に高い品質を維持できている点に、同社は自社の強みを見出しています。

しかし経営陣は、こうした「作品への高評価」が「売上の爆発的な増加」に結びついていない現状を冷静に分析しています。期待作「ソニックレーシング クロスワールド」は100万本を超えたものの当初予測には届かず、今期中のさらなる上積みが急務となっています。また、発売直後に不評を招いた「Football Manager 26」を含め、同社はこれら2タイトルの評判・販売改善に向け、追加リソースの投入を明言しました。

データ主導のマーケティング改革

セガは現在、課題克服に向けて「売る力」の根本的な見直しを図っています。デジタル販売の最適化やデータ主導の緻密なマーケティングにおいて、カプコンなどの国内大手メーカーに後れを取っている現状を、同社は率直に認めています。

現代の市場では、質の高い作品を作るだけでは十分な利益を確保できません。競合他社はプレイヤーの購買行動や地域別の需要を精緻に分析。適切なタイミングでのセール実施やPC版の比率向上を通じ、長期的な利益を最大化するノウハウを蓄積しています。

こうした背景から、セガはデータ主導のマーケティングをさらに強化する方針です。発売直後に売り切る従来の手法から脱却し、IP(知的財産)を軸に据えた長期戦略へと移行。過去作の継続的な売上(リピート販売)の最大化も視野に入れています。

一方、同社の決算資料に見られる「B2B Omnichannel Solution Provider」という表現は、コンシューマーゲームではなく、オンラインカジノ等のギャンブル向けB2B事業(Gaming事業)を指します。GAN社やStakelogic社の買収を経て構築されたこの事業は、ゲーム事業の改革とは別軸の「第三の柱」として、グループの多角化戦略を担っています。

脱・日本優先:世界を見据えた戦略

販売メカニズムの改革と並行し、セガは組織構造そのものの変革も進めています。地域ごとに分断されていた従来のパブリッシング体制を見直し、全世界で統一された戦略を展開できるグローバル構造へと着実に移行しています。

この変革を主導するのが、2024年4月に社長兼COOへ就任した内海州史氏です。同氏は2025年夏の「The Game Business」のインタビューで、旧来の手法を刷新した経緯をこう語りました。「言語やプラットフォームを問わず、世界同時発売を標準としました。マーケティング資料も開発初期からグローバル展開を前提に準備するよう体制を改めた結果、スタジオの思考プロセス自体が良い方向に変化しています」。

かつては欧州スタジオが業績を牽引する時代が長く続きましたが、現在は日本の開発拠点も含め、全社で世界同時展開が常態化しています。開発の最上流から世界市場を見据えるこの「真のグローバル戦略」は、いまやセガの新たな骨格として確固たる形になりつつあります。

好調なライセンスとスマホの苦戦

主力事業における課題が露呈する一方で、ビジネス全体を見渡すと、明暗がはっきり分かれています。

最大の懸念は、モバイルゲーム市場での苦戦です。セガは2023年4月に約1,100億円(7億7,600万ドル)を投じて「アングリーバード」の開発元・Rovio社を買収しましたが、今回の決算で2億ドルの減損処理を実施しました。収益性が当初予測を下回ったことが主因です。有力IPを傘下に収めても持続的な成長を維持するのは容易ではなく、変化の激しい同市場の厳しさが改めて浮き彫りとなりました。

その一方で、既存タイトルは総じて堅調です。特に「Sega Football Club Champions」は、2026年ワールドカップの追い風を受けて力強いスタートを切りました。また、アミューズメント機器事業が過去最高水準の好調を維持しているほか、「ソニック」をはじめとするキャラクターライセンス収益も過去最高を記録。グッズ展開を含む周辺領域では、長年培ってきたブランドの地力が遺憾なく発揮されています。

「売る力」の向上で収益最大化へ

高品質なプロダクトを、いかに効率的かつ持続的に世界中へ届けるか――。セガはいま、このビジネスにおける本質的な課題の克服に挑んでいます。同社は他社に引けを取らない高い開発力を備えているだけに、デジタル販売の最適化やデータ主導のマーケティング、グローバルな組織統合といった「販売体制」が整えば、その収益の伸び代は極めて大きいと言えます。

先行する競合の成功事例を糧に、地域別の価格戦略や長期的なブランド育成へと舵を切ったセガの改革は、エンターテインメント業界における重要なモデルケースとなるでしょう。今後数年間で、この「売る力」の向上がいかに実利として結実するのか。業界の行方を占う試金石として、その動向に熱い視線が注がれています。

情報元:VGC

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