
2027年の40周年に向け、カプコンは「ロックマン」の供給体制を安定的なサイクルへ転換します。新作「デュアル オーバーライド」と発売中の「流星のロックマン」を軸に、RE ENGINEの活用やブランド再活性化を推進。新プロデューサー和泉氏が語る、シリーズの未来像とは?
ロックマン40周年への長期戦略
1987年に誕生したカプコンの「ロックマン」シリーズは、2027年に40周年を迎えます。2018年の「ロックマン11 運命の歯車!!」以来、新作のリリースがない期間が続いていましたが、カプコンは2025年12月11日に開催された「The Game Awards 2025」において、シリーズ40周年記念作品となる最新作「ロックマン:デュアル オーバーライド(Mega Man: Dual Override)」を2027年に発売することを発表しました。
これに際し、シリーズの新プロデューサーに就任した和泉真吾氏が、今後のブランド展開に関する展望を明らかにしました。和泉氏が理想として掲げる戦略の中心は、完全新作の開発と、過去作を現行のゲーム環境に適合させたコレクション作品の発売を交互に行い、継続的なリリースサイクルを構築することです。これまでの不定期なリリース体制を見直し、新作と復刻版を安定して提供することを目指すことで、既存ファンとの接点を維持し、新規層の開拓を並行して進めていく方針です。
新プロデューサーが描くビジョン
2023年5月に長年シリーズを統括した土屋和弘氏が退社した後、和泉真吾氏がシリーズのプロデューサーに就任しました。和泉氏は2018年のカプコン入社以来、「モンスターハンター:ワールド」のプロデューサーや、現行機版「ゴースト トリック」のディレクターなどを歴任しており、2023年頃から「ロックマン」シリーズの運営に本格的に携わっています。
和泉氏は海外メディア「80 Level」のインタビューにおいて、「ブランドの魅力と価値を大切に守りながら、新たな挑戦を続け、ファン層を拡大していきたい」との意向を述べています。同氏が考える、コレクション作品を継続的にリリースする意義は、主に以下の2点に集約されます。
第一に、アクセシビリティの向上と収益の長期化です。現行機への最適化に加え、ハードウェアの世代交代後も後方互換機能により継続的な販売が見込める「ロングテール製品」としての価値を重視しています。
第二に、ブランドの再活性化と新作への連動です。計7バージョンを収録した「流星のロックマン パーフェクトコレクション」などの作品を通じて新規層や休眠層の関心を高め、その期待を「デュアル オーバーライド」などの新作へとつなげるサイクルを構築することを目指しています。
RE ENGINEで挑む「2画面」の現代化
2026年3月に発売された「流星のロックマン パーフェクトコレクション」は、カプコンの新戦略に基づいた重要な開発事例です。ディレクターを務めた小田晃嗣氏は、ニンテンドーDS特有の2画面仕様を現代のシングルスクリーン環境へ適応させるプロセスについて詳述しました。
開発チームは、上下2画面の並列表示を基本としつつ、プレイヤーが画面構成を任意にカスタマイズできるオプション機能を実装しました。また、オリジナル版ではローカル通信に依存していた「ブラザーバンド(フレンド登録)」システムを、最大100人まで登録可能なオンライン仕様へと刷新し、利便性を大幅に向上させています。
これらの開発には、カプコンの自社エンジン「RE ENGINE」が活用されました。オリジナル版のアセットを現行の高解像度環境に対応させる際、エンジンの強力なレンダリング機能が有効に機能しました。小田氏は、第1作および第2作のシステムはほぼ共通であった一方、第3作では内部構造が刷新されていた点に触れ、当時の開発チームによる設計変更の判断が、現在の移植作業に大きな影響を与えていると言及しています。
誰もが楽しめる快適なプレイ環境の提供
近年のコレクション作品が評価される主な要因に、現代のプレイヤーの利便性を考慮した設計があります。「流星のロックマン」シリーズは独自のデッキ構築型アクションを特徴とする一方、当時のランダム要素やクリアまでに要する時間は、現代のプレイ環境では負担となる側面もありました。
小田ディレクターは、「オリジナル版の達成感を維持しつつ、進行上の障壁を低減する」ことを指針とし、難易度調整機能の導入やランダム要素の緩和、さらには過去に日本国内限定であったイベントカードなどの全地域への開放といった施策を講じました。これらのバランスを追求した細やかな調整により、過去にプレイを中断したユーザーや新規プレイヤーが、ストーリーの終盤まで円滑に楽しめる環境が整備されています。
次なる復刻への期待
和泉プロデューサーが掲げる「新作と復刻版の交互展開」という方針に基づけば、次なるコレクション作品の選定がファンの間で最大の関心事となっています。主要なシリーズが次々と現行機へ移植される中、最も有力視されているのが「ロックマンDASH(海外名:Mega Man Legends)」シリーズです。
「ロックマンDASH」は、シリーズ初の本格的な3Dアクションとして高い評価を得ながらも、長年現行ハードへの移植が行われていない「ミッシングリンク」とも言える存在です。和泉氏が「ゲーム文化を歴史的遺産として保存する」という目的を掲げている以上、この3Dアクションの草分け的な作品の復刻は、ライブラリの完成に不可欠な要素です。
また、「ロックマンDASH」以外にも、ゲームボーイで展開された「ロックマンワールド」シリーズや、格闘ゲーム、レースゲームといった外伝的作品をまとめた「スピンオフ・コレクション」を望む声も根強くあります。小田ディレクターが「流星のロックマン」において、異なるハードウェアの体験を現代化させた知見は、これらの多岐にわたる過去タイトルの復刻においても、大きな役割を果たすことが期待されます。
新作「デュアル オーバーライド」の開発動向
コレクション作品が過去の資産を現代に適合させる役割を担う一方で、開発中の「ロックマン:デュアル オーバーライド」は、シリーズを中核的なIPとして再構築する役割を持っています。
本作では、ファンとの共創を目的とした企画として、約30年ぶりとなる「ボスキャラクターデザインコンテスト」が実施されました。世界中から寄せられた約1万件の応募の中から、カプコンの一次審査を通過した20作品をユーザー投票で6作品に絞り込み、最終的に開発チームが選んだ最優秀作品がゲーム内に実装されます。
一方で、本作の開発においては、グローバルな制作体制に伴う課題も浮き彫りになっています。米国の労働組合(SAG-AFTRA)によるストライキおよび「Do Not Work Order(就労禁止命令)」の影響を受け、一部の声優が契約問題を理由に出演を辞退する事態も報じられています。これは、カプコンが本作を世界標準の制作基準で扱う主要タイトルとして位置づけていることの裏返しともいえるでしょう。
結論:中核IPとしての持続的な発展
カプコンが掲げる「新作と復刻版を交互にリリースすることを目指す」という方針は、「ロックマン」を過去の資産に留めず、現在進行形で進化し続ける「中核IP(コアIP)」として再定義する姿勢を明確に示しています。
「RE ENGINE」による技術基盤の統一、アクセシビリティを重視したユーザー体験、そして未復刻タイトルの現代化への期待。これらすべての要素が統合されることで、シリーズは安定した供給体制で40周年を迎える準備を整えました。2027年の「デュアル オーバーライド」発売以降、本シリーズがどのような発展を遂げるのか、ファンの注目が集まっています。
情報元:80 Level・CGmagazine


