
ソニーが導入したPS5・PS4の新たなDRM。その正体は、返金制度の悪用を防ぐ「購入後一度限りのオンライン認証」でした。しかし、この変更は将来的にCMOS電池が切れた際にゲームが遊べなくなる「CBOMB問題」を再燃させる懸念も孕んでいます。システムの詳細から、デジタル資産を守るために今知っておくべき情報を整理します。
デジタル版に現れた「30日の期限」
2026年4月25日、YouTuberのModded Warfare氏が、新規購入したPS4のデジタル版ゲームのライセンス情報に「30日の有効期限」が表示されていることを発見しました。この現象は、同時期に配信された「PS5システムソフトウェア バージョン13.20」などのアップデートと関連している可能性が指摘されています。
当初、インターネット接続なしでは30日ごとにゲームがプレイ不可になるのではないかという懸念が広まり、2013年のXbox One発表時にマイクロソフトが示した「常時オンライン接続必須」のDRM(デジタル著作権管理)政策を想起させるとして、ユーザーの間で不安が高まりました。
PS4・PS5で起きた仕様変更の全容
複数の報告によると、2026年3月より前に購入されたタイトルには影響がなく、それ以降に新規購入されたPS4・PS5のデジタル版タイトルにおいて、バックグラウンドで「30日間の認証カウントダウン」が動作しているとのことです。
挙動はプラットフォームによって異なります。PS4では、ライセンス情報の横に残り日数が視覚的に表示されます。一方、PS5ではこのタイマーは画面上で確認できませんが、ゲーム保存を専門とするメディア「Does it play?」の調査によれば、バックグラウンドで同様に計測が行われており、カウントがゼロになるとゲーム起動時にエラーメッセージが表示される仕様となっています。
公式発表前に飛び交った憶測と真偽
ソニーが公式見解を示す前、情報の錯綜が混乱をさらに深めました。Does it play?は、匿名の内部関係者から「この変更は意図せずして導入されたものであり、ソニーがエクスプロイト(脆弱性の悪用)を修正しようとした際に、別の問題を生じさせた可能性がある」との情報を得たと報告しています。
また、ソニーの公式発表前にAIチャットサポートの回答スクリーンショットがオンライン上で拡散し、「30日認証は意図的に実装されたものだ」と確認しているように見える内容が注目を集めました。しかし、生成AIによる偽画像の作成が容易な現状に加え、AIサポートボット自体がネット上の憶測情報を引用した可能性も否定できないため、その真偽には強い疑問が呈されています(※二次被害防止のため、これら真偽不明のスクリーンショットの共有はお控えください)。実際にEurogamerが同様の会話を再現しようとしたところ、同じ内容は得られなかったと報じられています。
繰り返しではなく「一度きりの認証」
混乱が続くなか、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の広報担当者はGameSpot(およびGame File)の取材に対し、以下のように公式回答を行いました。
「プレイヤーは購入したゲームを通常通りにプレイし続けることができます。購入後に一回限りのオンライン認証が必要となりますが、その後は継続的な認証を必要としません」
つまり、今回導入されたのは「30日ごとに繰り返し認証を求める仕組み」ではありません。購入後、一定期間内に一度だけオンライン接続でライセンスの正当性を確認し、それ以降は永続的なオフラインライセンスへ移行するという設計です。
狙いは「返金詐欺」と「脆弱性」への対策
ソニーは変更の理由を公式には明らかにしていませんが、コミュニティの独自調査が一定の仮説を示しています。
ResetEraユーザーの「Andshrew」氏の調査によると、購入後15日目以降にオンライン接続を行うことで、一時的なライセンスが永続的なライセンスへ書き換えられる仕組みになっているとのことです。この15日という移行タイミングは、PlayStationの返金ポリシー(購入から14日以内)が終了した直後にあたります。
この点についてAndshrew氏は、「ユーザーがゲームを購入後、エクスプロイト可能なPS4から永続ライセンスファイルを取得し、その後すぐに返金申請を行うという不正行為への対策として、初期ライセンスを時間制限付きにしている可能性がある」と推測しています。Does it play?のオーナー、クレメンス・イステル氏も、このDRM変更は返金詐欺や、PS4の『Star Wars Racer』を巡るエクスプロイトへの対応である可能性が高いと述べています。
オフライン環境でプレイする際の注意点
SIEの説明により、通常の利用においてプレイに支障は生じないことが確認されました。ただし、Does it play?はこの変更が一定の不便をもたらすことを指摘しています。「PS5ではタイマーが視覚的に表示されないため、購入後にオフラインへ移行したユーザーは、認証が完了していない場合にゲームへのアクセスが突然遮断されるという驚きに直面します。また、ソニーはこの変更をユーザーに事前告知していませんでした」
オフラインを好む理由は、自動アップデートの回避やインフラ未整備などさまざまです。こうした中、米小売大手のGameStopは今回の件を受け、「物理メディア(ディスク版)を購入すればこのような認証問題は発生しない」と、パッケージ版の優位性を改めて強調する声明を発表しています。
電池切れで遊べなくなる「CBOMB」のリスク
ゲーム保存コミュニティが特に問題視しているのが、「CBOMB問題」との関連です。CMOSバッテリー(内部時計を維持する電池)が消耗するとシステムが時刻を把握できなくなり、オンライン認証ができない環境下ではデジタル版ゲームが起動不能になるリスクがあります。ソニーは過去にこの問題を修正しましたが、今回の新システム導入でリスクが再燃する可能性があります。
ソニーは過去のアップデートで、このCBOMB問題について一定の改善を行ったとされていますが、新たに導入された「購入後一度きりのオンライン認証」との組み合わせが長期的にどう影響するかについては、まだ十分に検証されていません。 とくに、購入直後からオフライン運用を想定しているユーザーや、将来コンソールのサポートが終了した後も遊び続けたいユーザーにとって、CMOS電池切れや認証サーバー停止時にどのような挙動になるのかは、コミュニティから懸念の声があがっています。
Eurogamerなど欧州メディアも、「CBOMBが完全に再発した」と断定するのではなく、「CBOMB再燃を懸念する声がある」といったかたちで報じており、現時点では〝潜在的リスクへの警戒〟という位置づけにとどまっています。 そのため、本記事でも「問題がすでに再発した事実」ではなく、「ゲーム保存コミュニティが強く警戒している可能性のひとつ」として扱うのが妥当でしょう。
デジタル資産の「所有」を巡る動き
こうしたデジタルゲームの保存・所有権に関する問題は、実は業界全体の課題でもあります。欧州では、パブリッシャーによるサポート終了後もゲームをプレイ可能な状態に維持することを求める「Stop Killing Games(ゲームを殺すな)」運動が展開されており、2026年4月には欧州議会の公聴会においてもこの問題が取り上げられました。
ユーザーが知っておくべきこと
現時点において、通常のPlayStationユーザーが過度に心配する必要はありません。新規購入後に一度オンライン接続を行えば、ライセンスは永続的なものへ移行します。
しかし、今回の一連の出来事は、デジタルコンテンツの所有権がいかに条件付きのものであるかを改めて示しました。不正対策という観点から一定の合理性がある一方、ユーザーへの事前告知が行われなかった点、およびCBOMB問題に起因する将来的なリスクについては、今後もソニーによる透明性のある説明が求められます。新しくゲームを購入した際は、速やかにオンライン環境で認証を完了させておくことをお勧めします。
