
最新作「Forza Horizon 6」のPC版ファイルが、Steamでの暗号化ミスにより発売前に流出しました。マイクロソフトは、この流出版を起動したユーザーに対し、不正改造を理由としたアカウント停止処分を下しています。故意の有無に関わらず、西暦9999年までゲームプレイが禁止される「ハードウェアBAN」の対象となる恐れがあります。
発売9日前に起きた流出の経緯
オープンワールド・レーシングゲームの人気シリーズ最新作「Forza Horizon 6」は、2026年5月19日の発売を予定しています。しかし5月10日前後、開発元のPlayground Gamesが最新ビルドのデータをSteamの管理システムにアップロードした際、暗号化(保護設定)を忘れたまま公開してしまうという重大なミスが発生しました。
SteamDBの記録によれば、流出したデータ量はディスク上で約156GBに達し、その内容は公式のシステム要件とほぼ一致する、実質的なフルパッケージでした。ファイルの中にはゲームを動かすための主要なプログラムが含まれていたため、第三者によって著作権保護(DRM)を回避した「クラック版」が作成され、複数の海賊版サイトへ拡散される事態となりました。
Playground Gamesは速やかにこの問題を修正し、現在はデータの保護設定を再有効化しています。しかし、一時的に公開されたデータを基にした海賊版はすでにインターネット上で流通しており、事態の完全な収束には至っていません。VGCの報道によると、現在出回っている流出版はクラッシュやフリーズが多発するなど、動作が極めて不安定であると報告されています。
「西暦9999年12月31日」を期限とする BAN処分
今回の流出を受け、マイクロソフトは流出版を早期プレイしたユーザーに対し、「チートおよび許容されない改造行為」を理由としたアカウント停止処分を下しています。未発売のファイルを動作させること自体が利用規約違反とみなされているようで、改造や不正ツールの使用の有無にかかわらず、単にファイルを起動しただけのユーザーも処分の対象となっています。
WCCFtechなどの報道によれば、SNSや掲示板(Reddit)では、アカウント停止の通知メッセージに「9999年12月31日」という驚くべき解除期限が表示された事例が複数報告されています。
具体的な事例として、ある動画投稿者が自分名義のアカウントで流出版のプレイ動画を公開したところ、解除まで「約7000万時間(西暦9999年末まで)」を要する停止処分を受けました。Eurogamerはこの情報の真正性を確認しており、マイクロソフトによる実質的な「永久追放」が執行されていることが裏付けられました。

「9999年」という数字が選ばれた理由
この極端な数字には、技術的な事情と制裁としての狙いの両面があると考えられます。
技術面では、多くのデータベースで設定できる日付の最大値(9999年12月31日)が、システム上で「無期限の停止」を表現するために代用されています。マイクロソフトから公式な説明はありませんが、過去にも重大な規約違反に対して同様の期限が適用されており、事実上の「最高刑」を示す定型フォーマットとなっています。
制裁の面では、ありえないほど遠い未来の日付を突きつけることで、不正行為を一切許さないという厳格な拒絶のメッセージを強調する狙いがあります。ネット上ではこの数字が話題を呼んでいますが、当事者にとっては高価なゲーミングPCが使えなくなる深刻な事態です。こうしたSNSでの拡散自体が、他のユーザーに対する強力な抑止力(見せしめ)として機能しています。
マイクロソフトは以前からデジタル資産の保護に厳しく、2009年には改造ユーザーを大規模に一斉処分したほか、過去の未発表情報の漏洩者に対しても永久的なアクセス禁止処分を下した実績があります。
一方で、売上への直接的な影響については慎重な見方もあります。Kotakuは、多くのユーザーは海賊版の入手方法を知らず、予約状況も好調であるという噂を伝えています。今回の流出がブランドイメージに与えた打撃は深刻ですが、売上の損失については過大な評価を避けるべきとの指摘もあります。
ハードウェアBANが意味すること
今回の処分で特筆すべきは、アカウントの停止だけでなく「ハードウェアID(HWID)BAN」が適用されている点です。これは、パソコンのマザーボードなどに割り当てられた固有の識別番号をブラックリストに登録する手法で、OSの再インストールや新しいアカウントの作成では回避できません。
Redditユーザーの「HatWithoutBand」氏は、WCCFtech経由でこの処分の厳格さを解説しています。「このBANはOSを入れ直しても解除されません。回避するには識別情報を偽装するソフト(スプーファー)を使うか、部品を物理的に交換する必要があります。しかし、偽装ソフトは信頼性に欠けるうえ、ウイルスが仕込まれているケースも少なくありません」。
つまり、BANを受けたシステムで再び本作をプレイするには、マザーボードの交換といった物理的な対応が必要になります。しかし、偽装ソフトの使用自体がさらなる規約違反になる恐れがあるほか、昨今のPCパーツ価格の高騰を考えると、ユーザーが負う経済的負担は極めて大きいと言わざるを得ません。
業界への教訓
今回の事件は、デジタル配信が主流となった現代のゲーム業界において、設定漏れという一つのヒューマンエラーが、取り返しのつかない損害をもたらすことを改めて示しました。他社の大型タイトルでも同様の事案が発生しており、業界全体で発売前のデータ管理手順を見直すことが急務となっています。今後は、暗号化が正しく機能しているかを自動で検証するプロセスの導入など、ミスをシステムで排除する仕組みの構築が不可欠になるでしょう。
5月19日の正式リリースを前に、マイクロソフトは厳しい処分を通じて、不正なファイル利用が高価なハードウェア環境を喪失させるリスクを明確に示しました。正規版の発売を待つことこそが、利用者自身の環境を守り、開発チームを正当に支援する唯一の方法です。


