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「ステラーブレイド2(仮称)」自社販売へ ― Shift Upパブリッシング戦略転換の背景

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Shift Upが次回作(便宜上「ステラーブレイド2」と表記)における自社販売への移行とマルチプラットフォーム展開を発表しました。「IPの独自性」を軸とした戦略的判断の背景、PC・Xbox・次世代機への展開可能性、三上真司氏率いるUnbound社の買収など、パブリッシャー化を加速させる同社の戦略とは?

韓国のゲームスタジオShift Upは、2026年度第1四半期決算説明会において、アクションRPG「ステラーブレイド」の続編(タイトル未定、以下便宜上「ステラーブレイド2」と表記)に関する販売方針を明らかにしました。同作については、前作でパブリッシャーを務めたソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)をパブリッシャーとせず、自社販売(セルフパブリッシング)へ移行する方針です。

前作「ステラーブレイド」は、2024年4月26日にPlayStation 5向けに発売され、2025年6月11日にはPC版がリリースされました。分析会社Sensor Towerの推計によると、累計販売本数は約610万本(PS5版:約370万本、PC版:約240万本)に達しており、レビュー集積サイトのメタクリティックではメタスコア81点、ユーザースコア9.1点(10点満点中)という高い評価を得ています。

同社にとって初の大規模予算を投じた3A(AAA)タイトルとして成功を収めた実績を背景に、今回の決定は自社の事業基盤をさらに強化するための重要な戦略的転換といえます。

「IPの独自性」を前面に自社パブリッシングへ

Shift Upは決算資料において、販売体制移行の目的を次のように説明しています。

次回作より、自社サービスモデルへと移行いたします。これにより、「ステラーブレイド」というIPが持つ独自のアイデンティティをマーケティング戦略に完全に反映させ、作品の世界観や魅力を、より直接的かつ効果的にプレイヤーへ届けることが可能になると考えております。

原文:
starting with this next title, Shift Up will transition to a first-party service model. This will allow us to lead marketing strategies that fully reflect the distinctive identity of the IP, and we expect to communicate the unique appeal of its universe to players more directly and effectively. Building on the strong fandom and evergreen IP status established by the first , we are formulating an optimal go-to-market strategy designed to maximize sales and reach a broad global audience from day one.

同社は自社パブリッシングへの移行を成功させる要因として、以下の「3つの確信材料(tailwinds)」を挙げています。

  • 高品質な自社パブリッシング能力の構築
  • 販売の最大化を図る戦略の策定
  • 前作で確立された実績あるファンベースの存在

これらの要素を背景に、次回作では前作を上回る成果を創出できるとの自信を示しています。

「IPの独自性をマーケティングに完全に反映させる」という表現については、クリエイティブ面での自由度確保を意味するものとして、業界内で注目を集めています。具体的には、Forbesのコラムニストであるポール・タッシ(Paul Tassi)氏は、キャラクター表現を含めた演出方針を自社でコントロールする意図があるのではないかと推察していますが、公式発表では詳細な言及はありません。

今回の移行の主眼は、外部パブリッシャーの基準や制約に依存することなく、開発側の意図を直接プロモーションや展開に反映できる体制を構築することにあるといえます。

マルチプラットフォーム展開の論理

ビジネス面において、今回の決定は前作の販売データに裏付けられています。前作「ステラーブレイド」は、PlayStation 5(PS5)での発売から2024年6月末までに累計100万本を販売しました。対して、2025年6月にリリースされたPC版は発売後3日間で100万本に達しており、PC市場における需要の高さが証明されています。現在の累計販売構成は、先述のSensor Towerの推計に基づくと、PS5とPCで概ね6対4の割合となっています。

これらの数値は、単一プラットフォームによる独占モデルの限界を示唆しています。AAAタイトルにおいて、特定のプラットフォームに依存することは、潜在的な顧客層を初期段階から限定するリスクを伴います。Shift Upが決算資料で掲げた「発売初日からの広範なグローバルリーチの確保」という方針は、次回作においてPC版の同時発売を視野に入れていることを強く示唆するものです。

Xbox Series X|Sや、Switch 2への対応については、現時点で公式な発表はありません。しかし、過去の求人情報や経営陣のコメントにおいて「複数のコンソールプラットフォームへの展開」が繰り返し言及されていることから、マルチプラットフォーム化の可能性は高いと見られています。

業界全体の動向を概観すると、Bloombergの報道によれば、ソニー・インタラクティブエンタテインメント自身も近年、PC版展開を取りやめるなどの動きを見せており、「Ghost of Yōtei」や「Saros」などのタイトルでPC版の同時リリースを見送る可能性が指摘されています。こうしたプラットフォームホルダーの戦略変化も、Shift Upが独自の流通戦略を選択する一因になったと考えられます。

Unbound社買収と自社流通の整備

Shift Upによる事業拡大の動きは、自社タイトルの開発・販売にとどまりません。同社は最近、「バイオハザード」シリーズや「デビル メイ クライ」、「サイコブレイク」などの代表作を持つ三上真司氏が設立したスタジオ「Unbound Inc.」の買収を完了しました。これにより、同スタジオが手がけるタイトルについても、Shift Upが自社で販売を行うことを明らかにしています。現在、Unbound社では複数のプロジェクトが進行中とされていますが、その詳細は未公表です。

決算資料によると、Shift Upは世界各地から大型タイトルの運営やローンチ経験を持つ専門人材を継続的に採用しており、社内におけるパブリッシング能力の拡充を急いでいます。著名なクリエイターである三上氏を傘下に迎えたことは、開発から運営、販売までを一貫して自社で完結させる体制構築を加速させるものと見られます。

また、同社はかつて「Project Witches」と呼ばれていた新たなフラッグシップタイトル「Project Spirits」(Unreal Engine 5採用、2027年リリース目標)の開発も進めています。「ステラーブレイド」の続編と合わせ、2026年内には詳細な情報を公開する方針です。

まとめ

今回の発表により、Shift Upが特定のプラットフォーマーへの依存を解消し、IPのマーケティングおよび流通を自社で管理する体制へ移行する姿勢が明確になりました。この決断は、「クリエイティブにおける独自性の維持」と、「複数プラットフォームへの同時展開による収益の最大化」という、ブランド戦略と実利面の両立を図った結果であると解釈されます。

2026年内に予定されている「ステラーブレイド」続編の詳細発表は、Shift Upがパブリッシャーとして描く独自の成長戦略の全容が明らかになる重要な機会となるでしょう。

情報元:Shift Up IRForbes

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