ベセスダのベテラン開発者、ウィル・シェン氏が、昨今のゲーム業界における大作主義、特に「終わらないゲーム」の氾濫に警鐘を鳴らしています。かつて「Starfield」の主任クエストデザイナーを務めた同氏は、プレイヤーが数百時間も費やすことを前提としたゲームに疲弊し、新規タイトルへの投資を躊躇する傾向を指摘。「ゲーム疲れ」を軽減し、健全なゲーム市場を維持するために、開発者は何に着目すべきなのでしょうか。
大作ゲームの氾濫がもたらす新たな課題
近年、ゲーム業界では大規模なオープンワールドゲームや、サービス提供が継続されるライブサービス型タイトルが主流となっています。「エルデンリング」や待望の「グランド・セフト・オート6」、そして「コール オブ デューティ：ブラックオプス6」や「マーベル ライバルズ」といった作品群は、プレイヤーに膨大なプレイ時間を要求します。こうした状況に対し、ベセスダのベテラン開発者であるウィル・シェン氏は、プレイヤーの間に広がる「ゲーム疲れ」について警鐘を鳴らしています。
ベテラン開発者が指摘する市場の転換点
シェン氏は、かつて「Starfield」の主任クエストデザイナーを務め、現在は独立して活動しています。最近のポッドキャスト「Kiwi Talkz」でのインタビューで同氏は、プレイヤーが大規模ゲームに時間と労力を費やすことに抵抗を感じていると指摘しました。特に、過去のベセスダ作品、例えば「Skyrim」のように「際限なくプレイできる」ゲームが、プレイヤーの疲弊の一因となっている可能性を認めています。しかし、シェン氏が強調するのは、巨大ゲームの飽和状態によって、プレイヤーが新しいタイトルに十分な時間を投資できないという根本的な問題です。
「私たちは転換点に達しています。多くの人々が、一つのゲームに30時間、あるいは100時間以上も費やすことに疲れ果てています」とシェン氏は説明します。「なぜなら、彼らは既にそうしたゲームを持っているからです。何度も繰り返し遊べるゲームを既に持っている。そのリストに新しいタイトルを加えるのは、容易ではありません。」
短時間で濃密な体験
シェン氏は、短時間で気軽に楽しめるゲームの成功例として、「Astro Bot」や「Mouthwashing」のようなタイトルを挙げています。これらのゲームは、プレイヤーが膨大な時間を費やすことなく、気軽にエンディングまでたどり着ける点が評価されています。また、短時間でクリアできるため、複数のプレイヤーが同時に同じ進行度でゲームを楽しんでいる可能性が高く、オンラインコミュニティなどで交流しやすくなるため、結果としてゲームを中心とした活発なコミュニティが形成される可能性があります。
開発費高騰がもたらす産業構造の変化
長大なAAAタイトルの開発は、ビデオゲーム開発費の高騰と密接な関係があります。Naughty Dogの共同創設者アンディ・ギャビン氏は、2001年に同社をソニーに売却することを決めた理由の一つとして、巨額の開発コストが会社の存続を脅かす可能性があったことを明かしています。この開発費の増大は、昨年のゲーム業界における大規模な人員削減の一因ともなっています。
変革期を迎えるゲーム開発の未来
こうした状況下で、短時間で濃密な体験を提供するゲームの開発は、リスクを軽減しつつプレイヤーのニーズに応える一つの解決策となる可能性があります。シェン氏の指摘は、開発者にとって重要な示唆を与えています。シェン氏の見解によれば、一部のプレイヤーが求めているのは、必ずしも「終わらないゲーム」ではなく、質の高い体験を手軽に楽しめるゲームである可能性があるということです。
ただし、これはあくまでもシェン氏個人の見解であり、全てのプレイヤーのニーズを反映しているわけではありません。大作ゲームを好むプレイヤーも依然として多く存在します。したがって、開発者は多様なプレイヤーの声に耳を傾け、変化する市場の動向を的確に捉えることが重要です。プレイヤーの多様なニーズに応えつつ、健全なゲーム市場を維持することが、今後のゲーム業界の発展に不可欠と言えるでしょう。
情報元：GameSpot