
稲船敬二氏が2024年中盤、レベルファイブを退社し、同社は大阪拠点の新設と共にLEVEL5 comcept業務の全引継ぎを実施。新体制の下、東京ゲームショウでの改良評価を背景に「FANTASY LIFE i」は抜本的再構築へ。業界のパイオニアが切り拓く次世代のクリエイティブ戦略と組織再編、その全貌とは?
2024年中盤、日本のゲーム業界を代表するクリエイターであり、「ロックマン」シリーズの生みの親として広く知られる稲船敬二氏が、長年所属していたレベルファイブを退社したことが明らかになりました。この発表は、レベルファイブが新設した公式開発ブログ「5つ星工房日記」を通じて行われ、稲船氏の退社に伴い、同社がLEVEL5 comcept業務全体を事業譲渡により引き継ぎ、大阪オフィスへ移管する組織再編の方針も示されました。
稲船氏は2017年7月、自身の開発スタジオ「comcept」をレベルファイブに売却し、以降は「LEVEL5 comcept」として活動を展開してきました。今回の退社により「LEVEL5 comcept」という名称は廃止され、その業務内容は新たに設置された大阪オフィスが引き継ぐこととなります。大阪オフィスは、レベルファイブの関西拠点として、稲船氏が築いた開発ノウハウや企業文化の継承において、極めて重要な役割を果たすと期待されています。
FANTASY LIFE iの大規模な再構築
「FANTASY LIFE i グルグルの竜と時をぬすむ少女」は、今回の組織再編の影響を最も受けるタイトルのひとつです。当初、2024年内のリリースを目指していた本作は、開発チームによる厳密な社内テストの結果、根本的な改善が必要と判断されました。
公式開発ブログによれば、ゲーム全体の品質に対して社内で厳しい評価が下され、ゲームデザインおよび進行フローの抜本的な再構築が決定されました。当初は稲船氏がプロデューサーを務めていましたが、退社に伴い、レベルファイブ代表取締役社長兼CEOの日野晃博氏が新たなプロデューサーとしてプロジェクトの舵取りを引き継ぎ、プロジェクトの中核は大阪から本社へ移管され、開発体制の強化が図られています。
特筆すべきは、東京ゲームショウ2024で展示されたバージョンと比較し、今回の改良によりゲームの楽しさが大幅に向上したという開発チームの評価です。現在はゲームデータの最終調整段階にあり、追加の品質チェックと微調整を経た上で、リリース時期は当初の予定より遅れ、2025年5月22日に発売されることが決定しました。
稲船敬二氏の経歴
稲船敬二氏の退社は、国内外のゲームファンや業界関係者に大きな衝撃を与えています。1965年、大阪府岸和田市生まれの稲船氏は、カプコンにおいて「ロックマン」シリーズのキャラクターデザインや「鬼武者」、「デッドライジング」などのプロデュースを手掛け、数々のヒット作を生み出しました。23年間のカプコン在籍中には執行役員に昇進し、2010年10月に同社を退社しました。
その後、2010年12月に「comcept」を設立。2011年4月には東京に「comcept」および「intercept」の2社を立ち上げ、ゲームのみならず映像や書籍など、幅広いエンターテインメント分野で活動を展開しました。2017年6月にはレベルファイブと提携し、100%子会社として「LEVEL5 comcept」を設立。同社のCCOとして新たな挑戦を続けてきた稲船氏ですが、2024年中盤の退社を経て、2025年3月時点では株式会社ロケットスタジオの執行役員として新たなキャリアをスタートさせています。具体的な役割や担当プロジェクトはまだ明らかにされていませんが、業界内では今後の活躍に大きな期待が寄せられています。
退社の真相は?
稲船敬二氏のレベルファイブ退社の具体的な理由は公式には明らかにされていません。しかし、いくつかの客観的な要因が推測されます。
「FANTASY LIFE i」の開発において、ゲームデザインの抜本的な再構築が必要とされたことは、退社の背景の一つと考えられます。プロジェクトの進捗状況や開発方針において、稲船氏と会社との間で何らかの見解の相違があった可能性が示唆されています。
プロジェクトの中核部分が大阪から本社へ移管され、日野晃博社長が直接プロデュースを引き継いだ事実は、組織的な判断があったことを物語っています。完全な円満退社であったかどうかは定かではありませんが、業界の常識的な範囲内での組織再編と捉えるのが妥当でしょう。
稲船氏とレベルファイブの今後
稲船敬二氏の退社を契機に、レベルファイブは、大阪オフィスの新設を含む全社的な再編成を推進しています。今回の「FANTASY LIFE i」に対する抜本的な改良は、単なる製品の改善に留まらず、ゲームの本質的な価値向上を目指す姿勢を強く示しています。
LEVEL5 comceptからの業務引き継ぎは、稲船氏の開発ノウハウと企業文化を継承しつつ、新たな創造性を育む環境整備を目的としています。大阪オフィスの新設は、この方針を具体化する重要な一歩であり、今後のレベルファイブの発展に貢献することが期待されます。稲船氏の今後の活動は、レベルファイブの新戦略と共に、業界内外から注目を集めるでしょう。


情報元:GEMATSU