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スクエニ、開発中止「フロントミッション」のデータ流用疑惑で元関連企業を提訴

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スクウェア・エニックスは、以前協力関係にあったブラックジャック・スタジオを提訴。訴状によると、開発中止となったモバイルゲーム「フロントミッション 2089: ボーダースケープ」の素材が、新作「鋼嵐(Mecharashi)」に無断で使用されたとして、メカデザインやゲームシステムの権利侵害を理由に、欧米での発売停止と損害賠償を求めています。

法的措置と疑惑の概要

スクウェア・エニックスは、モバイルゲーム開発会社ブラックジャック・スタジオ(親会社:HK Ten Tree Limited)を相手取り、知的財産権侵害を理由に訴訟を提起しました。この訴訟は米国と日本で同時に進行しています。

2025年3月13日、シアトル連邦裁判所に提出された26ページの訴状によると、両社が共同開発していたゲームプロジェクト「フロントミッション: ボーダースケープ」の素材が、ブラックジャック・スタジオの新作ゲーム「鋼嵐(Mecharashi)」に無断で使用された疑いがあります。スクウェア・エニックスは、この訴訟を通じて「鋼嵐」の欧米市場での発売阻止を主な目的としています。

損害賠償については、スクウェア・エニックスが著作権侵害1件につき最大15万ドルの法定損害賠償を求めていることが報告されています。日本でも3月5日に東京地方裁判所に同様の訴訟が提起されましたが、詳細については更なる情報が必要です。

Mecharashi: Gameplay Trailer

開発経緯と争点

スクウェア・エニックスとブラックジャック・スタジオは、2022年4月にスマートフォン向けゲーム「フロントミッション: ボーダースケープ」の共同開発を開始しました。しかし、意見の相違から同年10月に契約を終了し、開発中のゲームもライセンス契約も破棄されることになりました。

その後、ブラックジャック・スタジオは同プロジェクトを「鋼嵐(Mecharashi)」として継続開発。スクウェア・エニックスは、「鋼嵐」に「フロントミッション: ボーダースケープ」のメカデザイン、キャラクター設定、ゲームシステムが無断で転用されていると主張しています。

Steamによると、「鋼嵐」はグリッド状のフィールドでユニットを配置・移動させながら戦うターン制バトルゲームであり、プレイヤーは指揮官となり、多様なタイプの「ST」(ロボット)に様々な役割を持つ操縦士を乗せて小隊を編成します。また、敵STの特定部位を狙って攻撃する戦略的な戦闘が可能で、各ステージの勝利条件を満たすことが目標となるとされています。

注目すべきは、「鋼嵐」が「フロントミッション」スタイルの戦闘システムを採用していると公式に表現している点です。この表現が、著作権侵害の証拠として重要な意味を持つ可能性があります。

ゲームの仕組みやデザインの保護範囲

ゲーム内のシステムやスタイルといった抽象的な要素をどこまで知的財産として保護すべきかという問題が提起されています。

過去には、ユーザーインターフェースの外観や操作感(「ルック・アンド・フィール」)を巡る訴訟も存在しましたが、具体的なメカデザインとゲームシステムの組み合わせを争点とするケースは比較的珍しいとされています。

業界関係者の間では、中国企業が関与するグローバルな開発案件の増加に伴い、スクウェア・エニックスが日米両国で同時に訴訟を起こした背景について議論されています。特にスマートフォンゲーム市場では、国境を越えた協力が進む中で、契約上の取り決めが不十分なために権利侵害が発生するケースが懸念されています。

市場やファンへの影響

「フロントミッション」シリーズは、1995年9月29日の初代発売以来、その戦略性と深いストーリーで多くのファンに愛され続けています。2022年から始まったリメイクシリーズは好評を博し、特に「フロントミッション ザ・ファースト:リメイク」はNintendo Switch、PS4/PS5、Xbox、PCなど多くのプラットフォームで展開されています。さらに、「フロントミッション2:リメイク」が2023年に発売され、「フロントミッション3:リメイク」の開発も進行中です。

ゲーム開発者の間では、この問題について様々な見解が示されています。一部の開発者は、機械の部品の配置や色使いまで類似している点を指摘し、偶然とは考えにくいと主張しています。一方で、ターン制の戦闘システムのような、ジャンル全体で見られる共通要素を独占することは過剰だという意見もあります。

この問題は、「フロントミッション」ブランドの価値に影響を与える可能性があるとともに、グローバルなゲーム開発における知的財産権の保護と、創造性の境界線についての重要な議論を引き起こしています。現在、業界全体がこの訴訟の行方を注視しており、その結果は今後のゲーム開発のあり方に影響を与えると考えられています。

契約管理の重要性と今後の展望

今回の訴訟は、開発プロジェクトが中止された後の素材やアイデアの取り扱いについて、事前に明確なルールを定める必要性を示しています。一般的に、契約書には「開発が中止されたプロジェクトの素材は、契約終了後一定期間は使用できない」といった条項が設けられることがありますが、「素材」の定義が曖昧である場合が多く、これがトラブルの原因となることがあります。

開発中止となったプロジェクトのデータやアイデアは、企業にとって価値のある資産です。今回の事例を受けて、契約においてどのデータがどのように保護され、誰が使用できるかを明確にすることの重要性が改めて認識されています。法律専門家からは、「3Dモデルなどの視覚的データだけでなく、ゲーム内の経済システムや人工知能による動作なども保護対象として具体的に契約書に明記する必要がある」との指摘も出ています。

今後、この問題を契機として、ゲーム業界全体で契約書の内容が見直される可能性があります。特に、大手企業と中小規模の開発スタジオとの間では契約条件に差異が生じやすいため、より厳格な契約管理と情報共有の透明性が求められるでしょう。

また、グローバルなゲーム開発環境下では、国際的な法規制や文化的な違いも考慮しながら契約内容を精査する必要があります。これにより、権利侵害を防ぐだけでなく、企業間で信頼関係を構築し、持続可能な協力体制を築くことが期待されています。

情報元:VGC

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