
LightSpeed Studiosは、伊津野英昭氏率いる新作AAAアクションゲームを含む「独自IP開発計画」を発表しました。クロスプラットフォーム開発と地域スタジオの自律性を軸に、ゲーム業界の新たな基準構築を目指します。伊津野氏の過去の功績や新スタジオのビジョン、そして開発中のゲームに関するプロジェクトの全貌に迫ります。
自律型地域スタジオによる独自IP開発
テンセント傘下のLightSpeed Studiosは、革新的なゲーム体験の創出を目指し、「独自IP開発計画」を発表しました。この計画では、独立した地域スタジオのネットワークを基盤とし、各スタジオが自律的にオリジナルゲームタイトルを開発します。LightSpeed LAやLightSpeed Japan Studioなどのグローバル拠点は、中央技術リソースと連携しながら、独自の文化を育む環境で開発を進めます。
「PUBG MOBILE」の共同開発で培ったノウハウを活かし、グラフィック技術とパフォーマンスの向上に注力します。GDC 2025では、最先端のリアルな描写技術を公開し、全スタジオで共有することで、開発効率の向上を図ります。
伊津野英昭氏、LightSpeed Japan Studioで新プロジェクト始動
テンセント傘下のLightSpeed Studiosの新部門であるLightSpeed Japan Studio代表の伊津野英昭氏は、Game Developers Conference 2025でのパネルディスカッションにて、新スタジオの初の作品について詳細を明かしました。日本を舞台としたAAA級アクションゲームを開発中であり、伊津野氏は「東西のゲームデザインを超えた革新的な体験を創造する」と述べています。さらに、オープンワールドアクションの可能性を追求し、新たな戦闘システムや探索要素の導入についても言及しました。
伊津野氏は1994年にカプコンに入社。プランナーを経て、1996年発売の「スターグラディエイター」で初めてディレクターを担当しました。その後、「ジャスティス学園」シリーズ、「パワーストーン」シリーズ、「デビルメイクライ」シリーズ、「ドラゴンズドグマ」シリーズなど、数々の名作を手掛けています。
2024年8月にカプコンを退社し、同年11月にLightSpeed Japan代表に就任。現在は、ロックスター・ゲームスやEA Games出身者を含む国際色豊かな開発チームを率い、「多様な文化的視点と最先端技術を融合させ、プレイヤーに全く新しい体験を提供する」と意気込みを語っています。
伊津野氏が手掛ける開発中のゲームは、日本の伝統文化と現代テクノロジーを融合させたユニークな世界観が特徴です。また、最新のモーションキャプチャー技術を活用した流麗なコンバットシステムや、オープンワールド環境と緻密なストーリーテリングの融合も期待されています。さらに、次世代ハードウェアの性能を最大限に引き出したグラフィックも注目されています。これらの要素は、伊津野氏がカプコン時代に培ったノウハウと、LightSpeed Studiosの最新技術を組み合わせることで実現されるとのことです。
「独自IP開発計画」の第二の柱「Last Sentinel」
「独自IP開発計画」のもう一つの中核プロジェクトとして、LightSpeed Studios副社長のスティーブ・C・マーティン氏(元Rockstar Games)が監督を務める「Last Sentinel」があります。本作は、シネマティックな体験と分岐型ストーリーを特徴とするAAAオープンワールド作品です。5年間の開発を経てプロトタイプ段階に到達し、感情表現が変化するAIシステムや環境相互作用システムの実装が進められています。
マーティン氏は「プレイヤーの選択が物語に影響を与える構造と、東西のストーリーテリングの融合が本作の核です」と説明しています。同作はLightSpeed Studiosの「文化的協創」戦略を体現し、東洋の緻密な物語設計と西洋のオープンワールド設計を統合した実験場となっています。
地域スタジオの協創モデルが示す未来
LightSpeed Studiosの特徴は、地域スタジオの完全な自律性を保証しつつ、技術連携を行う点にあります。日本スタジオの戦闘システム開発ノウハウとLAスタジオの物語設計技術を相互導入し、プロジェクト間で相乗効果を創出します。例えば、「Last Sentinel」には日本チームのアクション設計が、伊津野氏のプロジェクトにはLAチームのオープンワールド構築技術が活用されています。
この協創モデルにより、各スタジオは独自の文化を維持しながら、グローバルな視点でゲーム開発を進めることが可能になりました。LightSpeed Studiosは、この取り組みを通じて真にグローバルなゲーム体験の創出を目指しています。
業界へのインパクトと今後の展開
LightSpeed Studiosが推進する「独自IP創出」は、既存のビッグタイトルに依存しがちなゲーム業界に、新たな潮流を生み出す可能性を秘めています。特に、2025年後半に予定されている伊津野氏のプロジェクトのコンセプトアート公開や、「Last Sentinel」のプレイアブルデモ公開は、業界内外から大きな注目を集めるでしょう。
LightSpeed Studiosは、今後もゲームコミュニティとの対話を継続し、革新的なゲーム体験の創出に挑戦します。彼らの挑戦がゲーム産業全体にどのような影響を与えるか、そしてプレイヤーにどのような新しい体験をもたらすか、今後の動向に注目が集まります。
情報元:GEMATSU