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「Halo 5」 発売10年 : 物議を醸したマーケティングの真相を元開発者が明かす

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2015年10月27日の発売から約10年を迎える「Halo 5: Guardians」は、本編だけでなく、発売前のマーケティングキャンペーンが大きな論争を巻き起こしました。〝Hunt the Truth〟などのプロモーションは、なぜ実際のゲーム内容と乖離し、ファンを困惑させたのか?同作の元リードコンセプトアーティスト、ダレン・ベーコン氏が当時を振り返ります。

ゲーム内容と乖離したマーケティング戦略

2013年の発表当初、マイクロソフトは「Halo 5」のプロモーションを、シリーズの象徴であるマスターチーフが信頼できない存在として描かれる、よりダークな物語として宣伝していました。特に注目されたのは、ゲーム発売前に展開されたオーディオドラマ「Hunt the Truth」です。これは、マスターチーフの功績に影を落とすかのような、強力な作品でした。しかし、実際の開発内容とは大きく異なっていました。

「それは開発側にとって本当に苛立たしいことでした」と、ベーコン氏はVideoGamerのポッドキャストで語ります。「基本的に、マーケティング部門が好き勝手にやっていたようなものですから。」

驚くべきことに、「Hunt the Truth」はマーケティング会社Ayzenberg Groupが制作したもので、開発元の343 Industries(以下、343i)は直接関与していませんでした。

ベーコン氏は当時を振り返り、「『Hunt the Truth』が公開された時、私も聞いていました。『おお、なるほど。これが我々のやっていることなのか?』と思いました。彼ら(マーケティングチーム)も、いつかゲームをプレイしてみるべきだと思いましたよ」と語っています。

補足:「Hunt the Truth」とは?

「Hunt the Truth」とは、「Halo 5: Guardians」の発売前に展開された非常に凝った音声ドラマ形式のマーケティングキャンペーンです。架空のジャーナリスト兼戦争写真家、ベンジャミン・ジローが、英雄とされるマスターチーフの公式記録に疑問を持ち、彼の過去や行動の「真実」を調査していく形式で物語が進行します。

ポッドキャストのような形式でエピソードが順次公開され、その質の高さと、マスターチーフの暗部に迫るかのようなミステリアスなストーリー展開が、海外のヘイローファンの間で絶大な人気と話題を集めました。ゲーム本編への期待感を非常に高める効果がありましたが、実際のゲームストーリーとは乖離があると指摘され、論争の一因ともなりました。

残念ながら、日本語での公式な吹き替えや字幕付きの配信は制作・展開されませんでした。そのため、英語が理解できる一部の熱心なファンを除き、日本のヘイローコミュニティでの知名度は英語圏ほど高くはありません。当時、内容を知りたい日本のファンは、有志による翻訳や解説、海外フォーラムの情報などに頼る必要がありました。

「Hunt the Truth」とゲーム本編ストーリーの違い

側面マーケティングの物語(「Hunt the Truth」およびトレーラーに基づく)実際のゲームの物語(「Halo 5: Guardians」)
中心的な対立マスターチーフが裏切り者として描かれ、ロックに追われる。しかもその対立は単純な善悪二元論では語れない複雑なものであり、両者の激しい対立が示唆される。コルタナが突如として悪役として再登場し、銀河を脅かす。マスターチーフはコルタナを追跡し、ロックはマスターチーフを追跡するが、両者の直接的な対立は限定的で、その動機もマーケティングほど強くない。
マスターチーフの描写信頼できない存在、あるいは人類に対する脅威として描かれる。彼の行動や動機には謎が多い。概ね英雄として描かれ、コルタナの行動に困惑し、彼女を止めようとする。動機は一貫して人類の保護である。
ロックの描写マスターチーフを危険視し、彼を捕獲または排除する任務を帯びた冷酷な追跡者として描かれる。ロックが放つセリフにも強い敵意を感じる。マスターチーフを尊敬しており、彼を捕獲しようとするが、マーケティングほどの敵意や確信はない。彼の主な関心は任務の遂行である。
物語のトーンダークでシリアス、陰謀や裏切りが強調される。マスターチーフの過去や行動の「真実」が暴かれるようなミステリアスな雰囲気。より伝統的なHaloの物語に近い。コルタナの裏切りという驚きの展開はあるものの、マーケティングが示唆したような深い道徳的葛藤や陰謀は少ない。
E3 2013のトレーラー砂漠を彷徨うフードを被ったマスターチーフが登場し、砂漠から出現するガーディアンと対峙する。孤独感や荒廃した世界観が強調される。ゲーム本編にはそのようなシーンは存在しない。キャンペーンは常にチームベースであり、孤独な主人公というテーマは描かれない。
「Hunt the Truth」のプロットONIの陰謀、スパルタン計画の暗い側面、マスターチーフの過去に関する疑惑など、ゲーム本編とは関連性のない、より深い物語が展開される。ゲーム本編では、「Hunt the Truth」で示唆されたONIの陰謀やマスターチーフの過去に関する掘り下げはほとんどない。

キャンペーンの実態とカットされたコンテンツ

「Halo 5」のキャンペーン(ストーリーモード)が、事前のマーケティング「Hunt the Truth」の内容とあまりに異なっていたため、発売後には「大量のコンテンツがカットされた結果ではないか」という憶測が飛び交いました。特に、E3で公開された砂漠でポンチョを着たマスターチーフの姿や、その他のマーケティング映像が、実際にカットされた構想を示唆しているのではないかという噂は根強くありました。

Halo on Xbox One: Official E3 Trailer

しかし、ベーコン氏はこの見方を否定します。「多くのものがカットされたという記憶はありません」と、彼は述べます。「例えるなら、テレビドラマの途中で急に番組が終わってしまい、次のシーズンが全く放送されない、みたいな、そんな感じですね。」

ポンチョ姿のマスターチーフは確かに公式のコンセプトアートの一部ではありましたが、そのシーンがキャンペーン本編に組み込まれる予定は元々なかったことも明らかにされました。ベーコン氏が指摘するように、問題はコンテンツの削除ではなく、むしろマーケティングが実際のストーリーを誤解させるように伝えてしまったことです。

開発チームの野心的な挑戦

ベーコン氏が指摘するのは、コンテンツの削除ではなく、むしろ開発チームが抱えていた「野心的な姿勢」でした。当時の343iは、「Halo 5」において革新的な要素を数多く盛り込もうとしていました。具体的には以下のような要素です。

  • 最大4人でのオンライン協力プレイに対応し、かつ秒間60フレーム(60fps)での描画を実現するキャンペーン
  • 多数の新武器や新しい敵キャラクターの導入
  • 大幅に拡張されたマップ編集機能「フォージ(Forge)」
  • 新たな大規模マルチプレイヤーモード「ウォーゾーン(Warzone)」
  • 競技性の高い新マルチプレイヤーモード「ブレイクアウト(Breakout)」
  • より高度になったキャラクターの移動アクション

「あのゲームには本当にたくさんの要素が詰め込まれていました」と、ベーコン氏は語ります。「私が(前開発会社の)バンジーから343iに移籍して、最初に最も衝撃を受けたのは、チームがいかに野心的かということでした。彼らはあまりにも多くのことをやろうとしていました。コンテンツの量は圧倒的で、チームがこれほど多くのことに取り組んでいるとは信じられませんでした。狂気の沙汰でしたね。『すごいな、君たちは本当に野心的だ』と思いました。」

343 Industriesは、2021年に「Halo 5」の続編である「Halo Infinite」を発売した後、2024年10月6日にスタジオ名を「Halo Studios」へと改称し、新たな「Halo」シリーズに向けて再始動しました。

ゲームの評価と後日談

「Halo 5」のキャンペーンはいくつかの見どころはあるものの、全体としては散漫な印象を与えるとの指摘もあり、後に発売された小説「Halo: Epitaph」などでストーリーの補完が試みられています。ベーコン氏の証言によれば、開発のごく初期段階で没になったアイデアは多数あったものの、多くのファンが推測するほどキャンペーンの内容が大幅に変更されたわけではないようです。

今回の元開発者の証言は、「Halo 5」を巡る議論に新たな視点を提供するとともに、大規模ゲーム開発におけるマーケティングと開発の連携の重要性を示す事例となりました。ゲームの野心的なビジョンと実際の制作プロセス、そしてマーケティングの方向性が一致していなかったことが、このシリーズ屈指の論争作を生み出す一因となったといえるでしょう。特に、マスターチーフとロックの対立を強調するマーケティングは、実際のゲーム内容とは異なり、多くのファンに誤解を与えました。

私個人の「Halo 5」に対する感想としては、ストーリーは確かに物足りないものの、ゲーム自体の完成度は高いと感じました。特に最大8人で協力してAIの敵と戦う大規模マルチプレイモード「Warzone Firefight」は、豊富な武器やビークルが用意されており、オンラインマルチプレイ初心者でも十分に楽しめる良質なコンテンツだったと記憶しています。

「Halo 5: Guardians」は、「Halo Infinite」や「Halo: The Master Chief Collection」など他のヘイローシリーズ作品と同様に、マイクロソフトのサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」でプレイできます。Xbox OneおよびXbox Series X|S本体向けに開発された唯一のHaloシリーズ作品ですが、クラウドプレイにも対応しているため、PCやスマートフォン、タブレットなどのクラウド対応デバイスでもストリーミングでプレイ可能です。ただし、PC向けにネイティブ移植されたバージョンは提供されていません。

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情報元:VideoGamer

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