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「ドンキーコングバナンザ」は「破壊」を再定義? その革新性と破壊ゲームの系譜

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「ドンキーコングバナンザ」がゲーム史に名を刻む理由は、「破壊」を単なる演出から「発見と攻略の核」へと昇華させた点にあります。過去の作品では超えられなかった技術的な壁を突破し、破壊が能動的な探索を生むという新しい体験を実現。任天堂が受け継いできた〝破壊のDNA〟が、本作でどのように結実したのでしょうか。

破壊ゲームの新たな衝撃

アクションゲームにおいて「環境破壊」は、プレイヤーに根源的な爽快感と戦略的自由をもたらす重要な要素として長年注目されてきました。「レッキングクルー」や「ディグダグII」のように、背景だった世界がプレイヤーの介入で劇的に変化する体験は、ゲームへの没入感を大きく高めます。

2025年7月17日発売の「ドンキーコングバナンザ」は、この「破壊」を遊びの核に据えることで、3Dアクションゲームの新たな可能性を示しています。

ドンキーコングが実現した完全破壊

「ドンキーコングバナンザ」最大の特徴は、「目に見えるほぼ全てを破壊できる」という圧倒的な自由度です。Nintendo Switch 2の高い処理能力を存分に活かし、壁や床、背景の木々や岩に至るまで、プレイヤーのアクションに応じて、リアルタイムで崩れ去る環境が目の前に広がります。この設計は、「すべてを壊す」ことによって得られる爽快感をひとつの柱としたもので、ドンキーコングの豪快なパワーを使って広大な地下世界を探索する体験が大きな魅力となっています。

このコンセプトは、2019年発売の「Crackdown 3」が掲げた「クラウド技術で何でも壊せる都市」というビジョンを連想させます。とはいえ、同作では技術的な制約や「破壊しすぎるとゲームが成立しなくなる」という課題から、完全な破壊はマルチプレイの一部に限定されていました。

一方、「ドンキーコングバナンザ」では舞台を地下世界とすることで、破壊がゲームプレイを損なうことなく、攻略の核として活用されています。安定したパフォーマンスのもと、破壊が単なる演出ではなく、探索や攻略に直結する重要な要素へと昇華しています。

たとえば、序盤ステージ「ジャングル遺跡」では、苔むした石壁をパンチで壊すと隠し通路が出現し、貴重なバナナコインが手に入ります。巨大な岩を崩して新たな足場を作り先へ進むなど、「破壊が発見につながる」楽しさが明確に感じられる構造が設計されています。

また、壊して得た破片を武器として投げたり、即席の足場にするなど、破壊された物そのものを多用途に活かせる遊びの工夫も見られます。丘を丸ごと更地にしてしまうようなスケールの破壊や、その痕跡がマップ上に残る仕掛けは、プレイヤーの手によって世界が動かされたという実感を強く与えてくれます。

こうした「壊しながら進む」プレイは、能動的な探索へとつながり、「破壊=楽しさ」にとどまらない多層的な体験を生み出しています。

破壊ゲームの歴史とドンキーコング

「ドンキーコングバナンザ」は、「破壊」をテーマにしたゲームとして独自の魅力がありますが、同時に他の代表的な破壊ゲーム作品と比較することで、よりその特性を浮き彫りにできます。

  • Teardown(2020年):物理演算によるパズル的破壊を特徴としたゲーム。対する「ドンキーコングバナンザ」は、物理演算を活かしつつ、軽快なアクションと冒険を重視しています。
  • Red Faction: Guerrilla(2009年):オープンワールドでの破壊戦術が評価された作品です。本作はよりリニアなステージ構成で、スピーディーな進行を重視しています。
  • THE FINALS(2023年):対人戦に破壊要素を取り入れる先進的なFPS。「ドンキーコングバナンザ」はシングルプレイに特化し、じっくりと探索に没入できる点で方向性が異なります。
  • Minecraft(2011年):破壊と創造をサイクルとする遊びが特徴のゲーム。これに対し、「ドンキーコングバナンザ」は純粋に「破壊そのもの」にフォーカスした点で対照的です。

任天堂の「破壊DNA」の集大成

「ドンキーコングバナンザ」に見られる破壊主体のゲームデザインは、突如生まれたコンセプトではありません。そのルーツは、任天堂が長年手がけてきた作品群のなかに見出すことができます。

たとえば1996年発売の「ブラストドーザー」は、重機で建物を破壊しながら進む爽快なゲーム体験が話題となりました。また、2004年の「スクリューブレイカー 轟振どりるれろ」ではドリルを使った破壊がゲームプレイの中心であり、創意工夫が求められる構造となっていました。

さらに2020年の「あつまれ どうぶつの森」においても、斧で木を倒し、スコップで地形を変えるという「環境へ働きかける」遊びが盛り込まれており、やや穏やかなかたちで「破壊」の概念が活用されています。

こうして任天堂が継続的に取り組んできた「世界を変化させることの楽しさ」の集約として、「ドンキーコングバナンザ」が誕生したと捉えることもできそうです。

破壊とは逆の「創造」を楽しむ「DKアーティスト」

本作には「DKアーティスト」と呼ばれるユニークな創造モードも存在し、破壊とは対照的な体験を提供しています。

このモードでは、Joy-Conを使って粘土細工のように岩を削ったり盛ったりして、オリジナル作品を簡単に作ることができます。デザインやエフェクトの調整も直感的で、アート経験のない人でも取り組みやすい設計です。

完成した作品は光源や演出を加えて投稿・共有も可能で、マリオやピザ、インコなどモチーフの自由度も高く、多様な楽しみ方につながっています。アクション中の息抜きとしてだけでなく、創造性をフルに活かせる別モードとして、ゲーム全体の魅力を広げています。

破壊ゲームの未来

「ドンキーコングバナンザ」は、多くの開発陣がかつて目指した「徹底した環境破壊」を、Nintendo Switch 2の性能と高密度なゲーム設計によってひとつの完成形に近づけた作品と言えるかもしれません。実際にそのプレイ体験は、新しいアクションゲーム像を示していると評価されています。

今後登場する類似タイトルによって、このジャンルの到達点が塗り替えられる可能性はもちろんあるでしょう。しかし現時点では、「ドンキーコングバナンザ」が破壊をゲームプレイの軸に据えることで、ひとつの到達点を築いた作品と見なされつつあります。

この「壊せる自由」は、今後のゲーム開発に多大な影響を与える可能性があり、新たな創作意欲と体験の多様化を生み出してくれるかもしれません。

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