
カプコンが推進する次世代ゲームエンジン「REX Engine」。新規開発ではなく、稼働中プロジェクトへの影響を抑えて実績ある「RE ENGINE」に新技術を「段階的」に組み込んでいく開発手法とは?2026年10月に東京・大阪で開催される技術カンファレンス「RE:2026」を控え、具体的な実装状況や最新の技術ロードマップを紹介します。
カプコンは、内製ゲームエンジン「RE ENGINE」の次世代版として「REX Engine(RE next Engine)」の開発を進めています。REXは2023年10月に開催されたオンラインカンファレンス「CAPCOM Open Conference Professional RE:2023」で初めて明らかにされたプロジェクトで、既存のRE ENGINEを一から作り直すのではなく、実績のある基盤に新技術を段階的に統合していく方針が示されています。
REX Engine移行の背景
RE ENGINEは、2017年発売の「バイオハザード7 レジデント イービル」で初めて採用されたカプコンの内製エンジンです。以降、「バイオハザード」シリーズのホラー表現から「モンスターハンターワイルズ」のようなシームレスな大規模フィールドを持つ作品まで、幅広いジャンルのタイトルに使われてきました。
カプコンは2023年のカンファレンスで、「バイオハザード7」の開発当時と比較して、直近のプロジェクトではアセット数やコード規模が5倍以上に増加していることを明らかにしています。開発規模の拡大に伴い、アセット管理の効率化やカスタマイズ性の向上、海外スタッフ向けの多言語対応強化などが課題として挙げられ、これらへの対応を目的として次世代エンジン「REX(RE next Engine)」の開発が始動しました。
REXは新規エンジンの開発ではなく、既存のRE ENGINEに新技術を段階的に組み込んでいくアプローチが採られています。これにより、稼働中の開発プロジェクトへの影響を抑えながら、段階的な機能拡張が可能になるとされています。
導入される主な新技術
2026年7月に開催が発表された「CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026」では、REX Engineに関連する技術としていくつかの要素が紹介されています。
- リアルタイムパストレーシング:光の反射や跳ね返りを物理的に計算し、光と影の表現をより現実に近づける技術です。「バイオハザード レクイエム」「プラグマタ」の実装事例が実用フェーズに入った技術として紹介されています。
- ストランドヘア(毛髪シミュレーション):髪を房ではなく一本単位でシミュレーションする技術で、「プラグマタ」のキャラクター「ディアナ」を題材にした講演が予定されています。
- メッシュシェーダーベースのレンダリング:GPUの負荷を抑えながら緻密なオブジェクトを描画する仕組みです。
- REUI:内製のUIフレームワークです。
- VORTEXEL:VFX制作を支える内製技術で、「鬼武者 Way of the Sword」や「モンスターハンターワイルズ」のエフェクト表現に用いられているとされています。
- LOCO:14言語同時リリースに対応する内製ローカライズシステムです。
- REAssistAI:大規模言語モデル(LLM)を活用し、開発現場に蓄積された知見へのアクセスを支援する技術として紹介されています。
- 自律型AIによるプレイQA:画面や音声の情報をもとにゲームプレイを自動でテストする取り組みです。
これらは個々に独立した技術として紹介されており、現時点でREX Engineの全体像や搭載範囲が公式に一括して定義されているわけではない点には留意が必要です。
技術カンファレンス「RE:2026」の概要
カプコンは2026年7月6日、自社の技術カンファレンス「CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026」を東京・大阪で開催すると発表しました。過去3回開催されてきた本イベントの2026年版にあたり、今回は従来の講演形式に加えて、来場者が実際に技術に触れられる常設展示エリアが初めて併設される予定です。
会場・日程は以下の通りです。
- 東京会場(有明コンベンションホール):2026年10月2日(社会人向け)、10月3日(学生向け)
- 大阪会場(ハービスホール):2026年10月17日・18日(学生向け)
社会人向け講演では、業界関係者や技術者を対象に、REXプロジェクトの展望のほか、前述の各種技術に関する詳細な講演が予定されています。学生向け講演では、将来ゲーム業界を志望する層に向けた内容が用意されています。参加費は無料ですが、事前エントリーが必要で、締め切りは2026年8月31日(月)12:00までとなっています。応募多数の場合は抽選が行われます。
カンファレンスでの対象作品
RE:2026では、REX Engineに関連する技術の実例として、以下のタイトルが題材として挙げられています。
- 「プラグマタ」:ストランドヘア技術やゲームデザインに関する講演
- 「バイオハザード レクイエム」:リアルタイムパストレーシングやキャラクターアニメーション技術に関する講演
- 「モンスターハンターワイルズ」:サーバー設計やVFX技術に関する講演
- 「ストリートファイター6」:サーバー設計の基盤化に関する講演
- 「鬼武者 Way of the Sword」(2026年9月4日発売予定):VFXや自由切断編集機能に関する講演
- 「モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~」:フィールド構築ツールに関する講演
- 「モンスターハンター ブリッジ」:大阪・関西万博出展の没入型アトラクションにおけるマルチモニターレンダリング技術に関する講演
各タイトルが扱うジャンルは多岐にわたっており、RE ENGINEおよびREX関連技術が複数のジャンルに応用されていることがうかがえます。
現行タイトルへの先行実装例
前述の通り、REX Engineへの移行は段階的に進められているため、現行のRE ENGINEの枠組みの中で新技術の一部が先行して実装されている例があります。
2026年2月に発売された「バイオハザード レクイエム」は、パストレーシング技術を実装したタイトルとしてRE:2026でも紹介されています。また、現在も開発が続けられている未発売の新規IP「プラグマタ」についても、開発中タイトルにおける先行実装事例として、ストランドヘア技術をはじめとする新技術の実装事例に言及されています。両タイトルとも、公式にはREX Engineそのものへの完全移行ではなく、既存エンジンへの技術統合という位置づけで説明されている点に注意が必要です。
未発表タイトルの噂(未確認情報)
本稿でこうした未発表のプロジェクトに触れる理由は、現在水面下で開発が進められているとされるいくつかの大作タイトルにおいて、「最初から『REX Engine』を本格採用した初の完全対応作品になるのではないか」という噂や推測が報じられているためです。
特に「バイオハザード0」のリメイク(社内コードネーム:「Project Chamber」)については、2025年後半から海外メディアを中心に開発情報が報じられており、このプロジェクトが最初期の段階からREX Engineの制作パイプラインを前提に構築されているという見方があります。この報道は俳優の出演経歴情報などを根拠としていますが、現時点でカプコンからの公式発表はありません。
また、同じく次回作として噂される「バイオハザード10」(社内コードネーム:「Project Redlife」)についても、著名リーカーのDusk Golem氏らを通じて開発中の噂が広まっており、こちらもREX Engineの技術をフルに引き出すフラグシップタイトルとして設計されていると報じられています。
これらのリーク情報は、ファンコミュニティや一部のゲームメディアで大きな関心を集めていますが、あくまで公式発表ではないため、現段階では可能性の一つとしての参考情報にとどめるべきです。
まとめ
REX Engineプロジェクトは、これまでのRE ENGINEの実績を維持しながら、新しい技術を段階的に取り込んでいくという方針で進められています。新規エンジンの開発に伴う開発中断やトラブルのリスクを抑えつつ、開発効率と表現力の両立を図るアプローチと言えます。
「CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026」では、こうした技術の一部が具体的な形で紹介される予定です。REX Engineの全体像については、現時点で公式に体系立てて説明されているわけではないため、今後のカンファレンスや公式発表を通じて、より詳細な情報が明らかになっていくことが見込まれます。


