
2026年10月15日発売「Castlevania: Belmont’s Curse」。ベルモンド一族の宿命を継ぐ主人公ローズ・ベルモントが、1499年のパリで過酷な運命に立ち向かいます。フランスの歴史的血脈と開発元Evil EmpireのDNAの交錯、生成AIを使わない手仕事まで、新たなIP継承の形を読み解きます。
血を継ぐ者たちの系譜
数十年の歴史と熱狂的なファンを抱える老舗の知的財産(IP)を現代に再生させることは、ゲームパブリッシャーにとって極めて難度の高いミッションです。過去の資産に頼るだけでは新規性に欠け、一方で急進的な変更は既存ファンからの反発を招きかねません。
2026年10月15日に世界同時発売が予定されている2D探索型アクションゲーム「Castlevania: Belmont’s Curse(キャッスルヴァニア ベルモンドカース)」は、こうした課題に対するアプローチを示しています。本作は、株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)と、フランスのインディースタジオEvil Empireによる共同プロジェクトであり、アドバイザリースタジオとしてMotion Twinが制作をサポートしています。Evil Empireは2019年にMotion Twinからスピンオフし、同作の追加コンテンツ開発を一貫して担ってきた実績を持つスタジオです。
魔物に包囲された1499年のパリ。この歴史的な街並みを舞台に、本作はベルモンド一族の血脈をめぐる新たな物語を紡ぎ出します。主人公となる「ローズ・ベルモンド(Rose Belmont)」は、シリーズの英雄トレバー・ベルモンド(Trevor Belmont)と魔法使いサイファ・ヴェルナンデスの間に生まれた娘です。母サイファはドラキュラの呪いによってこの世を去っており、この「血の呪い」こそが本作の物語の核心に位置づけられています。
ローズは、のちに伝説となるシモン・ベルモント(Simon Belmont)の先祖にあたる人物であり、正史(公式年表)におけるベルモンド家初の女性主人公でもあります。

開発陣によれば、最初から女性を主人公に据えることが決定していたわけではありません。KONAMIのディレクター外尾有樹子氏は、世界観やストーリーを構築していく中で、トレバーにとって「娘」という存在が完璧に調和することに気づいたと明かしています。また、Evil Empireのエマニュエル・ヌアイユ氏は、母サイファの呪いが娘へと受け継がれる関係性、そして「母親の仇を討つ」という強い絆や自己犠牲のレガシーを表現する上で、女性主人公であるローズこそが物語の軸として最善の選択肢であったと語っています。
フランスの血、ベルモントの血―歴史の交差
既存IPに新たな展開をもたらす手法として、開発パートナーが持つ地域的・文化的な強みを作品の世界観に融合させるアプローチがあります。本作では、地理的・歴史的・文化的な多層構造によって、この「血の交錯」が美しく描かれています。
第一に「地理的血統」の移動です。従来のシリーズ作品では、東欧のトランシルヴァニア地方やドラキュラ城(悪魔城)が主な舞台とされてきました。これに対し本作では、開発を担当するEvil Empireの拠点である「15世紀末のフランス・パリ」へと、戦いの舞台が移されています。魔物に包囲された歴史的な街路や不気味な下水道、壮麗な大聖堂の屋根などを探索する立体的なマップ構造には、現地のスタジオならではの視点が活かされています。
第二に「歴史的血統」の融合です。作中には、ジャンヌ・ダルクなどのフランスの歴史的英雄をモチーフとし、闇の力によって歪められた悪夢のボスキャラクターたちが登場します。フランスが宿す「歴史の血」と、ベルモンド家が持つ「狩人の血」を交錯させるこの演出は、現地開発者の文化的なバックグラウンドや解釈を反映させた、深みのある世界観設計と言えます。
フランスのインディースタジオによる「文化的血統」を背景に、単に過去作を再現するのではなく、舞台を「悪魔城」から「歴史の城」へと変更する。提携先の持つ地域性や個性を「新たな感性」として作品の血脈に注ぎ込むことで、伝統を守りつつも全く新しい世界観を提示する手法が成り立っています。


開発の血統―Evil EmpireのDNA
共同開発という試みは、ゲームシステムや開発スタジオの系譜という、もう一つの「開発の血統」をめぐるドラマでもあります。
開発元であるEvil Empireは、先述の通りMotion Twinからスピンオフして誕生した、いわば「Dead Cells」のDNAを直接受け継ぐスタジオです。そのため、本作の情報が公開された当初は、ユーザーの間で「『Dead Cells』のようなローグライク(プレイするたびに構造が変化し、死亡時に最初からやり直しになる仕様)になるのではないか」という先入観や懸念が生じることとなりました。
しかし、KONAMIと開発チームが目指したのは、あくまで「悪魔城ドラキュラ」シリーズの正統な血脈を継ぐゲームデザインでした。KONAMI北米コミュニケーション責任者のトミー・ウィリアムズ氏は海外メディアを通じて、「本作は作り込まれたマップを探索する2D探索型アクションであり、ローグライクやローグライトではない」と明確に否定し、製品コンセプトの正しい周知を図っています。



またプロモーションにおいて、KONAMIは公式に「2D探索型アクション(2D Action-Exploration)」や「アクション・エクスプロレーション(Action Exploration)」という表現を使用しています。こうしたジャンル呼称の徹底により、開発元の実績から生じる市場の誤解を丁寧に解消し、自らがキャッスルヴァニア伝統の正当な継承者であることを証明する、確固たるポジショニング戦略が取られています。
伝統を守るKONAMIの「厳格な管理」と、Evil Empireが持つ「革新的な創造性」。二つの異なる血が交じり合う共同開発は、ゲームデザインの血脈を次世代へと繋ぐための理想的な融合モデルを示しています。
人の血、手の技―AI不使用の証明
昨今のゲーム開発において生成AIの活用による効率化やコスト削減が注目されるなか、Evil Empireがインタビューで明かした「開発における生成AI不使用」の方針は、作品の差別化における重要な要素となっています。これは、テクノロジーの時代において「人間の血が通った制作」を守り抜くという、職人のプライドの表明でもあります。
スタジオのクリエイティブディレクターであるエマニュエル・ヌアイユ(Emmanuel Nouaille)氏は、2026年7月のメディア取材において、「ゲーム制作においてAIは使用していない。チーム、ファン、そして業界全体のためにこの方針を守ることが重要だった」と語り、人間の手作業(クラフトマンシップ)を重視する姿勢を示しました。手描き風の滑らかな2Dアニメーションや細部まで調整されたキャラクターの挙動など、プレイ時の質感や操作感は、デジタルな自動生成ではなく、人間が紡ぐ職人の技という「無形の血統」を継承していくことでしか実現できないという考えに基づいています。
血を継ぐということ―IP継承の新たな模索
ベルモンド一族の過酷な宿命を背負う新たな血(ローズ・ベルモンド)と、伝統を現代に繋ぐ新たな血(Evil Empire)が織りなす本作は、老舗IPを現代において維持・発展させるための具体的なマイルストーンです。長年続くIPの展開においては、過去の資産を尊重しながらも、現代の市場環境に応じた柔軟な変化が求められます。海外スタジオとの協業を通じて、手作業にこだわる確固たる意志とともに受け継がれた血脈は、IPの伝統を次世代へ継承する一つの手法を示しています。
PlayStation 5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch、Steamといったマルチプラットフォームでの世界同時発売に向けて、本作がどのような評価を得るのか注目されます。
情報元・イメージ:PRTIMES

