
約9年の歳月をかけて手描きアニメーションを追求した「The Eternal Life of Goldman」。ベルギー・フランスの漫画技法「リーニュ・クレール」を採用し、すべてのフレームを手作業で描き上げた2Dアクション・アドベンチャー。その職人技と、16ビット時代の感動を再現するデザイン哲学とは?
作品概要と世界観
「The Eternal Life of Goldman(ジ・エターナル・ライフ・オブ・ゴールドマン)」は、Weappy Studioが開発し、THQ Nordicがパブリッシングを手掛ける新作の2D横スクロールアクション・アドベンチャーゲームです。
本作の舞台は、古代の民話や神話、童話などの伝承からインスピレーションを得て作られた奇妙で広大な「群島(Archipelago)」です。プレイヤーは高齢の主人公「ゴールドマン」となり、誰もが噂を口にしながらもその姿を見たことがない謎の存在「暗黒の神(Deity)」を追討するため、数々の島々を冒険します。
本作は、かつての16ビット時代に親しまれた横スクロールアクション(2Dプラットフォーマー)の楽しさを根底に置きながらも、単なる過去作の模倣にとどまらない工夫が施されています。多様な文化や時代様式を取り入れた独自の世界観のもと、探索の喜びと緻密なアクション性を両立させた作品となっています。
手描きアニメーションへのこだわり
ゲーム開発において効率化や生成AIの活用が注目される中、本作は生成AIを使用せず、伝統的な手描きアニメーションを採用しています。グラフィックのすべてにおいて、1コマずつ紙に描く伝統的なコマ送り(フレーム・バイ・フレーム)のアニメーション手法を貫いています。
視覚的な表現手法としては、ベルギーやフランスの漫画(バンド・デシネ)で用いられる「リーニュ・クレール(ligne claire:明確な線描)」スタイルを取り入れています。この技法は、太く均一な輪郭線と明確な色彩、そして写実的な陰影を排除した平面的な表現が特徴で、背景とキャラクターの視認性が高く、鮮やかで温かみのある画面構成を実現しています。
さらに、本作の制作プロセスで特筆すべき点は「アセットの再利用(使い回し)」を徹底して排除している点です。通常のゲーム開発では、コスト削減や開発効率向上のために同一の部屋の背景やグラフィックパーツを繰り返し利用するのが一般的です。しかし本作では、すべての部屋、背景、登場人物、エフェクトが一つひとつ個別にデザインされています。開発チームは、かつて16ビット時代のゲームを初めて見た時にプレイヤーが感じた「驚きと感動」を、現代の技術と職人技によって再現することを目指しています。
開発元Weappy Studioの実績と挑戦
本作の開発を担当するWeappy Studio(ウィッピー・スタジオ)は、ベラルーシのミンスクで設立されたインディーゲーム開発スタジオです。後にキプロスに移転し、質の高い作品で知られる開発チームとして活動しています。
Game Informerのインタビューで、Weappy Studioの共同創業者Ilya Yanovich氏は「2017年頃にこのプロジェクトを始めた時に、これほど大変だと知っていたら躊躇したかもしれない」と語っており、約9年間の開発期間を経ていることが明らかになっています。
同スタジオを一躍有名にしたのは、2016年8月にリリースされた「This Is the Police」です。不条理な街の治安を守る警察署長として、予算管理や人員配置、さらには犯罪組織との交渉や倫理的選択を迫られるシミュレーションアドベンチャーゲームであり、その重厚なストーリーと独特のゲーム性で高い評価を獲得しました。その後、続編となる「This Is the Police 2」や、ターン制戦略アクションに焦点を当てたスピンオフ作品「Rebel Cops」(2019年9月)を次々と展開しました。
また、同スタジオは映画産業の舞台裏を描く本格経営シミュレーション「Hollywood Animal」の開発も手掛けており、現実的かつ深みのあるゲーム表現に定評があります。これまで経営や戦略シミュレーションを中心に手掛けてきたWeappy Studioが、その鋭い演出力と制作へのこだわりを注ぎ込んで挑む新たなジャンルが、手描き2Dアクションである「The Eternal Life of Goldman」です。
新映像に見るゲームシステム
新たに公開されたトレーラー「What Would I Draw?(自分なら何を描くか?)」では、実際の作画デスクでイラストが描かれていく手作業の工程から、洗練されたゲームプレイ映像へとつながる演出が描かれています。なお、スペインのメディア「Hobby Consolas」では、このトレーラーを現地語で「¿Qué dibujaría yo?」と紹介しています。
ゲームプレイの中心となるのは、主人公ゴールドマンが手にしている1本の「杖(ケイン/cane)」です。この杖は単なる攻撃手段にとどまらず、探索を広げるための重要な道具として機能します。プレイヤーは道中で様々な追加パーツ(カスタマイズ部品)を入手し、杖に装着することで、新しい移動アクションや攻撃能力を獲得していきます。
ゲームデザイン面においては、プレイヤーに不要なストレスを与える要素が排除されています。例えば、新しい能力を得るたびに無目的に過去のマップを往復させられるような構造(過度なバックトラッキング)を避け、創意工夫と即興のアクションによって道を切り開く設計がなされています。
現在、Steamをはじめとする各プラットフォームにおいて約90分間プレイ可能な体験版(デモ版)が公開されています。なお、本体験版は日本語字幕およびUI表示に対応しており、ゲームパッドでの操作にも対応しています(※製品版へのセーブデータ引き継ぎは非対応)。その高いグラフィッククオリティと快適な操作性は広く話題を呼び、2026年8月時点で全プラットフォーム累計50万件以上のウィッシュリスト登録を記録しています。
最新リリース情報と今後の展望
「The Eternal Life of Goldman」は、2026年内の発売が見込まれていますが、2026年8月時点で正式な発売日はまだ発表されていません。対応プラットフォームはPlayStation 5、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、PC(Steam)です。
約9年にわたる手作業と職人技によって生み出される本作は、2Dアクションゲームに新たな価値を提示する一作となることが期待されます。長年シミュレーションジャンルで実績を積み重ねてきたWeappy StudioとパブリッシャーのTHQ Nordicが送り出す本作の動向に、今後も業界内外から大きな注目が集まりそうです。
