
任天堂の次世代機「Switch 2」への期待が高まる中、Ubisoftのオープンワールドゲーム「スター・ウォーズ 無法者たち」のSwitch 2への移植(2025年内予定)が発表は、技術者の間で衝撃が走りました。技術分析で知られるDigital Foundryが「驚異的」と評する理由とは?「Switch 2」の潜在能力について掘り下げます。
Switch 2への期待と移植決定がもたらした衝撃
任天堂の次世代機、通称「Switch 2」に対する期待が高まる中、サードパーティによるハイエンドタイトルの対応状況が注目されています。特に、Ubisoftが開発を手掛けるオープンワールド型アドベンチャーゲーム「スター・ウォーズ 無法者たち(Star Wars Outlaws)」が、2025年内にSwitch 2向けにも登場すると発表されたことは、技術者の間に大きな驚きをもって受け止められました。技術分析で定評のあるDigital Foundry(以下、DF)が「驚異的」と評するこの移植決定について、その技術的な背景と意味合いを解説します。
なぜ「スター・ウォーズ 無法者たち」移植は「驚異的」なのか?
DFのテクノロジーエディターであるリチャード・リードベター氏は、ポッドキャスト「DF Direct」において、「スター・ウォーズ 無法者たち」のSwitch 2移植について「かなり驚いた」「驚異的だ」と述べました。その主な理由は、本作がUbisoft Massiveの最新ゲームエンジン「Snowdrop」を使用しており、技術的に非常に要求水準が高いゲームであるためです。DFの寄稿者オリバー・マッケンジー氏も「不可能に近い移植」と表現し、ビデオプロデューサーのアレックス・バタグリア氏は「Switch 2への移植が発表されたタイトルの中で、最も技術的に野心的なゲームだ」と断言しています。これは、「ELDEN RING」や「Cyberpunk 2077」といった、Switch 2への移植が予定されている他の技術的に野心的なタイトルと比較しても、特に注目に値する動きと言えるでしょう。
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驚きの背景にある主な技術的理由
- 最先端エンジン「Snowdrop」の採用 : 「The Division」シリーズや「Avatar: Frontiers of Pandora」などで使用されているこのエンジンは、フォトリアルな大規模ワールド構築を得意とする一方、高いハードウェア性能を要求します。特に「スター・ウォーズ 無法者たち」では、シームレスな惑星間移動や緻密な描写が特徴となっています。
- 現行世代機専用タイトルとしての設計 : 本作は2024年8月30日にPS5/Xbox Series X|S/PC向けにリリースされ、前世代機にあたるPS4/Xbox Oneではリリースされていません。つまり、開発当初から現行世代機の性能を前提とし、旧世代機の制約を考慮せずに作られているのです。これは、旧世代機にも対応している「ELDEN RING」や「ストリートファイター6」などとは異なる点であり、移植の難易度を高める要因と考えられます。
- 大規模オープンワールドと高度な描画技術 : 広大な複数惑星の描画、多数のオブジェクト処理、レイトレーシングといった高度な描画技術は、現行世代のコンソールにも高い負荷をかけるものです。
Switch 2における技術的課題と実現への道筋
「スター・ウォーズ 無法者たち」のSwitch 2移植には、多くの技術的課題が伴うと予想されます。Switch 2にはNVIDIA製のカスタムチップが搭載され、AIアップスケーリング技術であるDLSSに対応すると噂されており、これらがパフォーマンス向上に大きく寄与することが期待されます。
しかし、それでも大幅な最適化は避けられないでしょう。具体的には、解像度やフレームレート(おそらく30fps目標)の調整、テクスチャ品質・描画距離・エフェクトといったグラフィック設定の最適化、さらに高速SSDを前提としたロード時間をSwitch 2のストレージでどのように再現するか、といった工夫が不可欠になると考えられます。レイトレーシングのような特に負荷の高い機能は、省略されるか、限定的な実装になる可能性が高いです。
DFは、Xbox Series S(Series XよりもGPU性能が低い現行世代機)版「スター・ウォーズ 無法者たち」のパフォーマンスが、Switch 2版の品質を占う上での一つの指標になる可能性を示唆しています。Switch 2がDLSSなどの技術を活用し、Series Sと同等以上の体験を提供できるかが鍵となりそうです。
一方で、リードベター氏は、同じSnowdropエンジンで作られた「Avatar: Frontiers of Pandora」が携帯ゲーミングPC「ASUS ROG Ally」で動作が重かった経験を挙げ、携帯デバイス向け最適化の難しさも指摘しています。
ただし、Snowdropエンジンはスケーラビリティ(異なる性能のハードウェアへの対応力)の高さも特徴とされています。Ubisoftは過去にも、Switch向けに技術的に困難な移植(「Assassin’s Creed」シリーズなど)や、同プラットフォームに特化した最適化(「マリオ+ラビッツ」シリーズなど)で豊富な実績を持っています。そのノウハウが、今回の「スター・ウォーズ 無法者たち」移植でも活かされる可能性は十分に考えられます。
「スター・ウォーズ 無法者たち」とは?
「スター・ウォーズ 無法者たち」は、2024年8月30日に発売されたPC/PS5/Xbox Series X|S向けタイトルで、Ubisoftが手掛ける初のオープンワールド・スター・ウォーズ・アクションアドベンチャーゲームです。プレイヤーは狡猾な悪党ケイ・ヴェス(声:ハンバリー・ゴンザレス)と、彼女の忠実な相棒ニックス(声:ディー・ブラッドリー・ベイカー)となり、アウター・リム史上最大級の強盗計画に挑みます。新たな人生を始める手段を求め、ケイとニックスと共に銀河の犯罪シンジケートを相手に戦い、盗み、裏をかきながら、銀河系の最重要指名手配犯へと駆け上がっていく物語が描かれます。発売後の展開としては、強制ステルス要素の見直しや、DLCの配信などが予定されており、これらのコンテンツがSwitch 2版にどのように含まれるかも注目点です。
Switch 2の可能性を拓く移植
「スター・ウォーズ 無法者たち」のSwitch 2移植決定は、ゲーム業界に対していくつかの重要な示唆を与えています。まず、この移植はSwitch 2が現行世代のハイエンドタイトルを一定レベルで動作させられるポテンシャルを持つことを示唆しており、今後のサードパーティによる移植タイトルへの道を拓く可能性があります。
また、Ubisoftのような大手パブリッシャーが技術的な挑戦をしてでもSwitch 2市場にコミットする姿勢は、同プラットフォームの魅力の表れであり、他のサードパーティにとっても大きな動機付けとなり得るでしょう。さらに、高品質なオープンワールドゲームを携帯モードでプレイできるという体験は、Switch 2独自の強力なセールスポイントとなり、新たなユーザー層の獲得につながる可能性も秘めています。
注目される次世代機の試金石
「スター・ウォーズ 無法者たち」のSwitch 2への移植は、2025年中に予定されています。DFのような専門家が「驚異的」と評するこの移植プロジェクトは、Switch 2の性能と市場の可能性を探る上で、極めて重要なケーススタディとなるでしょう。
技術的なハードルは確かに高いですが、Ubisoftの開発力と最適化技術、そしてSwitch 2に搭載されるであろう新技術(特にDLSS)が組み合わされば、携帯機でこれまでにないレベルのゲーム体験が実現するかもしれません。移植版の最終的な品質は、Switch 2プラットフォーム全体の成功を占う上で、初期の重要な試金石となることは間違いありません。今後の続報に注目が集まります。
情報元:GameSpot