
「ICO」や「ワンダと巨像」を手掛けた上田文人氏の最新作「gen ATLAS」が正式発表されました。Epic Games Publishingがパブリッシャーを務め、PS5・Xbox Series X|S・PC向けに配信予定のオープンワールド・アクションアドベンチャーです。その独創的なシステムや世界観について、現時点での情報から紐解きます。
はじめに
ゲーム業界の注目イベント「Summer Game Fest 2026」(2026年6月5日)にて、公式タイトル「gen ATLAS(ジェン・アトラス)」が発表され、ゲームプレイ映像を含むトレーラーが公開されました。
世界中のゲームファンや業界関係者から常に注目されているゲームクリエイター、上田文人氏。同氏が率いる開発スタジオ「genDESIGN(ジェン・デザイン)」の最新作ですが、ようやくその全貌の一端を垣間見ることができました。
正式発表への経緯と概要
「gen ATLAS」は、「PROJECT: ROBOT(プロジェクト・ロボット)」の仮称で開発が進められていたタイトルです。2024年12月に開催された「The Game Awards 2024」でコンセプトトレーラーが初公開されて以降、続報が待たれていました。今回の発表では、初公開から約1年半を経て、正式タイトルとゲームプレイ映像が公開されています。
本作の開発は、上田文人氏を中心とする「genDESIGN」が手掛けています。上田氏がディレクターを務める新作としては、2016年発売の「人喰いの大鷲トリコ」以来、約10年ぶりとなります。ジャンルは「シングルプレイのオープンワールド型アクションアドベンチャー」とされており、広大なフィールドを探索しながら物語を進める構成です。
マルチプラットフォーム展開
本作がビジネス面でも注目を集める理由として、配信プラットフォームおよびパブリッシング体制の変化が挙げられます。
上田文人氏が手がけた過去の作品「ICO」「ワンダと巨像」「人喰いの大鷲トリコ」は、いずれもソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のPlayStationプラットフォーム専用タイトルとして開発・販売されてきました。しかし、本作はPlayStation 5に加え、Xbox Series X|SおよびPC向けにもリリースされることが決定しています。上田氏の制作タイトルがXboxプラットフォーム向けに提供されるのは、今回が初の事例となります。
このマルチプラットフォーム展開の背景には、Epic Gamesとのパートナーシップがあります。本作のパブリッシングは「Epic Games Publishing」が担当しており、同社から開発資金などの支援を受けて制作が進行しています。なお、PC版はEpic Games Storeでの配信が予定されており、他ストアでの展開時期については現時点で公式な発表はありません。対応ハードの拡充は、作品がアプローチできる市場の拡大という観点からも、ビジネス上の大きな転換点として注目されています。
設定と世界観
「gen ATLAS」の舞台は、人類の痕跡がほとんど見られない「放棄された惑星」です。主人公は、自身がなぜその場所にいるのか、何の目的で目覚めたのかも分からない状態で物語を開始します。
視界には、荒涼とした広大な地表やそびえ立つ巨大な構造物(メガストラクチャー)、稼働を停止した工業施設、そして常に変化する謎めいた海が広がっています。惑星表面には、かつて何らかの大規模な計画(グランドデザイン)が進行していたことを示す廃墟群が点在しています。
こうした冷たく金属的な景観でありながら、有機的な気配を感じさせる美術設計は、上田作品に共通する環境ストーリーテリング(言葉に頼らず背景やオブジェクトによって物語を示す手法)を踏襲したものといえます。
ゲームプレイの詳細
ドッキングシステム
公開映像において特に独自性が高い要素として示されているのが、「飛行ロボットの頭部」と「メカの胴体」によるドッキングシステムです。
プレイヤーはまず、自律飛行が可能なロボットの頭部(またはそれを操作するデバイス)を操作し、惑星各地に散在する首を失った巨大メカの残骸に接近します。これらの胴体にドッキングすることでメカを起動し、操作が可能となります。搭乗する機体によって能力や移動手段が大きく変化するため、地形の突破や探索範囲の拡大には、状況に応じた機体の選択が重要となります。
このシステムは単なる操作の変化にとどまらず、「分断されたパーツを組み合わせて進路を切り開く」という、パズル性や即興性を伴うアドベンチャー体験を提供するものと考えられます。
スケール感とプラットフォームアクション
本作では、ポンチョのような衣服をまとった小柄な人間(あるいは人型の存在)も操作対象として登場します。このキャラクターは、ドッキングによって起動した巨大ロボットの身体によじ登ったり、肩に乗って移動したりすることが可能です。
こうした「巨大な可動体に取り付き、高所を目指す」プラットフォームアクションは、「ワンダと巨像」における巨像登りを想起させる設計であり、SF的な文脈で再構成された要素といえます。
TPS戦闘
本作には、これまでの上田作品との差別化要素として、三人称視点(TPS)による戦闘アクションが導入されています。公開映像では、小型の乗り物から武器を使用する場面や、他のロボットとの銃撃戦および白兵戦が確認できます。
静寂を基調とした世界観を維持しつつ、本格的な戦闘システムを組み合わせることで、従来のファンに加え、アクションゲームを好む幅広い層への訴求を意識した設計となっています。
期待と懸念
ディレクターの上田文人氏は発表に際し、「ファンの情熱が開発の原動力となった。静かな驚きと発見をもたらす体験を届けたい」との趣旨のコメントを寄せています。
本作に対する業界およびユーザーの期待は、主に二点に整理できます。第一に、SF的なビジュアルと情緒的な体験、そして「人間とロボット」という新たな関係性の描写が、上田氏の作家性とどのように結び付くかという点です。第二に、初のマルチプラットフォーム展開による市場拡大です。これにより、これまでPlayStationハードを所有していなかったXboxやPCユーザーも、リアルタイムで上田作品を体験できるようになります。
一方で、いくつかの懸念も指摘されています。まず、開発期間の長期化の可能性です。genDESIGNの過去作品では開発の長期化が見られた経緯があり、現時点で具体的なリリース時期が示されていないことから、完成時期の見通しは不透明です。また、PC版がEpic Games Storeでの配信とされている点については、Steamなど他のプラットフォームでの展開を望む一部ユーザーから懸念の声が上がっています。
おわりに
「gen ATLAS」は、廃棄された惑星を舞台とする静謐なSF世界、ロボット頭部によるドッキングという独自のシステム、そして巨大メカと連携するアクションなど、上田文人氏の作家性を継承しつつ新たな要素を取り入れた作品です。
開発は現在も進行中であり、発売時期や詳細な仕様については今後の発表が待たれます。一人のクリエイターによるビジョンが、新たなプラットフォームのもとでどのように具現化されるのか、引き続き注目されます。

