
続編「ステラーブレイド ブラッドレイン」は自社販売へ移行。その本当の狙いとは?前作の“検閲騒動”背景も踏まえ分析。ソニー新作「God of War: Laufey」との思想対比や、拳撃主体の最新ゲームプレイ、新主人公エヴィの若年化論争、トレーラーの生成AI疑惑まで、激変するゲーム市場の最前線に迫ります。
SGFとState of Playの対照的な構図
2026年6月5日(現地時間)に開催された「Summer Game Fest(SGF)2026」にて、韓国のShift Up社は「Stellar Blade」の続編となる「Stellar Blade: Blood Rain」を発表しました。前作がPlayStation 5向けタイトルとして高く評価されていたこともあり、この続編発表はファンから大きな期待を寄せられています。
一方で、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、その直前となる6月2日に情報配信番組「State of Play」を開催し、自社のSanta Monica Studioが手がける「God of War: Laufey」を発表しました。
かつてSIEがパブリッシャーを務めたタイトルの続編が、自社番組ではなくSGFの舞台で披露されたという今回の展開は、プラットフォーマーとサードパーティ開発会社との関係性の変化を示す一例として、業界内外で注目されています。
自社販売への移行とキム氏の「開発哲学」
前作「Stellar Blade」は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)をパブリッシャーとしてPlayStation 5向けに発売(その後PC版もリリース)されましたが、今作「Stellar Blade: Blood Rain」ではShift Up社による自社パブリッシングへと移行します。
Shift Up社は2026年5月の決算説明会において、この方針転換の目的を「初日からグローバルな幅広いオーディエンスにリーチするため」と説明しており、マルチプラットフォームでの同時展開や直接的なグローバル販売を目指す姿勢を示しています。また、代表のキム・ヒョンテ氏はファミ通などのインタビューにおいて、開発とパブリッシングの哲学を融合させ、スタジオとしての主体性を追求するための挑戦であると述べています。
一方で、前作の発売初期に一部衣装のデザインがアップデートで変更された際、ユーザー間で「ソニーによる検閲ではないか」との憶測が広がった経緯があります。当時、Shift Up社は「変更後が最終的に意図したデザインである」としてソニー側の指示を否定しており、後に一部コスチュームが追加提供されたことで事態は収束しました。
したがって、今回の自社パブリッシング移行の主因を表現の自由をめぐる対立に求める見方は一部の推測にとどまり、マルチプラットフォーム展開や開発の主体性確保を掲げる公式発表とは区別して捉えることが適切です。
「GoW: Laufey」の多様性への配慮
「Stellar Blade: Blood Rain」の3日前に発表された「God of War: Laufey」は、Santa Monica Studioが手がけるシリーズの新章であり、長年主人公を務めたクレイトスに代わり、その妻であるフェイ(ラウフェイ)をシリーズで初めて主人公に据えた作品です。
PlayStation.Blogによると、本作はフェイが死後の神話世界「エヴァーウェン」で目覚め、家族を守るための計画を脅かす存在に立ち向かうストーリーが展開され、ノルド神話を基盤としつつも世界観が大きく拡張されています。キャスト陣には、前作からフェイ役を続投するデボラ・アン・ウォール氏に加え、プランク役にジャック・クエイド氏、ルー役にパーリナ・ラウ氏が新たに参加しています。
本作のキャラクター描写に対しては、近年海外のゲームコミュニティ等で議論となる「ポリコレ(政治的公正さへの過度な配慮)」や、意図的にキャラクターの魅力を抑制しているのではないかという批判(Uglification=魅力抑制。一部のファンによる呼称)にあたるのではないかとして、一部ユーザーから批判的な意見が寄せられています。特に、女性主人公であるフェイの造形が、従来のファンタジー作品に多かった過度に美化された表現ではなく、現実的で肉体的な力強さを強調したリアル路線であることから、こうした論争の対象となりました。
しかし、ゲームプレイの実態はSanta Monica Studioの伝統を受け継ぐアクション主体の正統派ファンタジー作品であり、これらの批判はあくまで一部コミュニティや特定の観点からの指摘にとどまります。ソニーや開発スタジオの公式見解ではなく、あくまで近年のゲーム業界を取り巻くトレンドやユーザーの反応の一側面として留意する必要があります。

エヴィの若年化論争と生成AI使用疑惑
「Stellar Blade: Blood Rain」の新主人公エヴィのビジュアルは、前作同様のスタイリッシュなプロポーションとアクションを特徴としています。
一方で、海外の一部批評家やメディアからは、前作の主人公イヴに比べて顔立ちが幼い(若年化している)との指摘があり、その外見とセクシーな演出との不調和に疑問を呈する声も上がっています。これに対し、代表のキム・ヒョンテ氏はファミ通の取材インタビューにおいて、外見的な魅力だけでなく、同社の「勝利の女神:NIKKE」で培った経験を活かし、プレイヤーが内面から愛着を持てるキャラクター構築に注力していると説明しています。
また、近未来 of 中国をモチーフにした本作の舞台設定に関して、公開されたトレーラーやキーアートの背景に歪んだビルの窓や不自然な中国語の文字など、生成AIを使用したとみられる痕跡が複数指摘され、議論を呼びました。
スペインのゲームメディア「Areajugones」は、ゲーム業界ジャーナリストのダニエル・カミロ(Daniel Camilo)氏の指摘を引用し、文化的な配慮やプロ意識の欠如を厳しく批判しています。Shift Up社からの公式コメントはありませんが、本作が開発期間約1年という初期段階にあることから、これらは一時的な仮置き(プレースホルダー)のアセットである可能性も指摘されています。

肉弾戦へのシフトと「EVE 05」の謎
「Stellar Blade: Blood Rain」の取材インタビューなどから確認されている、ゲームプレイ面における具体的な進化ポイントは以下の通りです。
- 拳による近接主体戦闘(肉弾戦): 前作のブレードと銃を用いた戦闘から一転し、新主人公エヴィによる拳を用いたスピード感のある格闘戦へと移行します(ストーリーの進行に応じてブレード戦闘も登場予定です)。
- 前作のジャスト回避(色別シグナル)継承: 黄色(ガード不能)、赤(連続技)、青(背後突撃)、紫(ノックバック)といった、敵の攻撃予兆(色別のシグナル)に対するジャスト対処のアクション性は健在です。
- UI刷新: 現在のデモ版のユーザーインターフェース(UI)は前作のものを流用していますが、製品版に向けて一新される予定です。
- サイドコンテンツの充実: 缶集めや釣りといった前作で人気のあったサイドコンテンツについても、前作以上に充実した内容が計画されています。
さらに、インタビューの場において、代表のキム・ヒョンテ氏が背中に「EVE 05」と記されたTシャツを披露する一幕がありました。これにより、新主人公エヴィが「第5世代のイヴ」を意味するのかなど、前作の主人公イヴとの繋がりやストーリー上の重要な謎を示唆しています。

市場の多様化と開発スタジオへの影響
今回の一連の発表は、ゲーム市場におけるプラットフォーマーへの依存度の変化を示しています。かつてサードパーティ開発会社は、販売や流通、規制の面でハードウェアプラットフォーマーの影響を強く受けていました。しかし、マルチプラットフォーム展開の一般化や技術・資本の進歩により、現代では開発スタジオが自社パブリッシングを通じて主体的な流通戦略を取れる環境が整いつつあります。
ソニー傘下のスタジオが手がける「God of War: Laufey」と、独立した自社販売を行う「Stellar Blade: Blood Rain」は、表現スタイルや流通形態において対照的な位置づけにあります。この方向性の違いは優劣の評価ではなく、現代のゲーム市場が多様化している現実を反映したものです。
それぞれのタイトルがどのようなユーザー層に支持され、市場でどのような評価されていくかについては、今後の展開が注目されます。


