
「バイオハザード」等のヒット作を手がけた小林裕幸氏率いるGPTRACK50の第一弾タイトル「Stupid Never Dies」が2026年秋に発売されます。カプコン出身のベテランをはじめとする精鋭チームが、約3年という期間で開発した本作。11種類の戦闘スタイルや、短時間で周回できる独自の成長ループなど、ゲームの特徴を分かりやすく解説します。
ベテラン開発陣が創り上げたGPTRACK50のデビュー作
NetEase Gamesが2022年に設立した開発スタジオ「GPTRACK50」は、代表取締役社長に「バイオハザード」や「デビル メイ クライ」、「戦国BASARA」、「ドラゴンズドグマ」などの人気シリーズを手がけてきた小林裕幸氏を迎え、注目を集めています。
同スタジオのデビュー作として開発が進められているのが、3DアクションRPG「Stupid Never Dies(スチューピッド・ネバー・ダイズ)」です。本作はPlayStation 5およびPC(Steam)向けに、2026年秋の発売を予定しています。
開発チームは約30名という少人数編成ながら、その約70%がカプコンの出身者で構成されており、さらにコナミやスクウェア・エニックス、ユービーアイソフトなどで経験を積んだクリエイターが名を連ねています。ディレクターには「バイオハザード6」や「宝島Z バルバロスの秘宝」を監督した佐々木栄一郎氏、アートディレクターには「ファークライ3/4」などに携わった田中ゲンセキ氏が就任しています。
現代の大規模なゲーム開発には通常5〜6年を要することが一般的ですが、本作は各分野のスペシャリストを揃えた精鋭チームの編成と、Unreal Engine 5の効率的な活用により、約3年という短いスパンで開発が進められています。NetEase Games of 資本提供を受けて設立された同スタジオですが、開発規模を適切に管理し、予算とスケジュールを順守しながら発売へと導いたことは、プロジェクトマネジメントにおける良好な成功例として評価されています。
ゾンビと少女の異色な愛を描く、シュールな世界観
本作の舞台は、大戦の影響で人類が絶滅の危機に瀕し、モンスターたちが支配するようになった終末世界です。主人公のデイビィは、モンスター社会の最底辺に位置する内気なゾンビです。ある日、不思議な卵を食べたことで、敵のコアを喰らって姿と能力を変えられる能力を手に入れます。
物語は、デイビィが廃墟となったショッピングモールの冷凍庫で発見した、凍りついた人間の少女ジュリアに一目惚れするところから動き出します。デイビィは「彼女を生き返らせてデートに誘う」という純粋な目的を胸に、人類復興を夢見るマッドサイエンティストのDr. フランクや、個性的な仲間に支えられながら、凶悪なモンスターが待ち受けるダンジョンへと挑みます。
小林氏は本作のトーンについて、「純粋なホラーゲームではなく、ゾンビやモンスターといったホラーの要素をほのかに取り入れた、賑やかで楽しい世界観を目指した」と語っています。また、ビジュアル面においてはNetflixのアニメーション作品「Arcane」のカラーパレットや質感を参考にしつつ、ゲーム「Let It Die」のようなサイケデリックでディストピア的な雰囲気が取り入れられています。
ゲームプレイ中にもその独特なユーモアは一貫しており、デイビィはロビー(拠点)内をロボット掃除機に乗って移動し、ミッションを開始する際にはトイレの水を流してダンジョンに飛び込むなど、シュールな演出が随所に散りばめられています。
11種類のスタイルとリアルタイム切り替えコンボ
本作では、主人公デイビィが変身可能な全11種類の「スタイル」が用意されています。これらはクラシックなモンスター像をベースにしながら、それぞれ異なる戦闘特性を持っています。
- ゾンビ: バランスに優れたデイビィの基本形態。
- ワーウルフ: 野性のパワーで素早く敵を圧倒する近接特化型。
- ハーピー: 飛行能力を活かし、空中からの遠距離攻撃やコンボ展開を得意とする。
- ゴーレム: 強固な耐久力と重い一撃で敵を吹き飛ばすタンク型。
- ヴァンパイア: コウモリの群れを操り、敵を翻弄するトリッキーな戦術が可能。
- ウィル・オー・ウィスプ: 物質界とアストラル界を行き来し、高い回避性能を持つ。
- サイクロプス: 一撃の威力に特化した、ハイリスク・ハイリターンな攻撃を繰り出す。
- スノーフェアリー: 敵を凍らせて動きを封じ、その力を吸収して自己強化に繋げる。
- マーフォーク: 地面を水面のように泳ぎ、死角から急接近して奇襲をかける。
- リッチ: 死の力を使い、スケルトンの兵士を召喚して使役するスタイル。
- デーモン: 鞭による広範囲攻撃と重力操作で、敵の配置をコントロールする。
プレイヤーは戦闘中にこれらのスタイルをリアルタイムに切り替え、多彩なコンボを組み立てることができます。たとえば、マーフォークで敵を浮かせ、ヴァンパイアの追撃からリッチの攻撃で叩き落とすといった、複数のスタイルを組み合わせた空中コンボ(ジャグルコンボ)が可能です。
戦略的な成長と個性的なカスタマイズ要素
本作のゲームデザインにおいて開発陣は、近年のトレンドである極端に高い操作技術を要求する高難易度アクションとは異なるアプローチを採用しています。純粋なプレイスキルだけでなく、プレイヤー自身の戦術やキャラクターの成長によって難関を突破できるアクションRPGが目指されており、それを支える各種システムが用意されています。
- スタイル・イート(Style Eat): 敵モンスターのコアを摂取することで、新たな変身スタイルや能力を獲得する基本システム。
- ボディ・ハック(Body Hack): チワワのような姿をしたキャラクター「アセリーノ」の手によって、デイビィの頭部、両腕、脚部の各パーツにオーバーテクノロジーを用いた武器や装備を移植するカスタマイズ要素。ミサイルランチャーや剣、シールドなど多彩な装備を組み合わせて自由にビルドを構築できます。
- デイビィバースト(Davy Burst): 特定の条件を満たすことで発動する一時的な強化状態。デイビィの妄想が現実を侵食するようなコミカルな演出とともに、すべてのステータスが大幅に上昇します。
さらに拠点では、バイカーゾンビの「ベッシー」が営むハンバーガーショップ「Bessie Burger」などの施設を利用して、ゾンビ固有のスキル解放や装備のレアリティ強化を行うことができます。
30分の周回が生み出す「超高速成長」ループ
本作の基本的な構造は、約30分で1回のプレイサイクル(ダンジョンダイブ)を終える、テンポの良いゲームループとなっています。
ダンジョンに突入するたびにデイビィのレベルは一度1にリセットされますが、周回を重ねることで経験値マルチプライヤー(獲得経験値の倍率)が上昇するため、次のプレイではより早く、そして強力に成長していきます。一般的なRPGにおいて数十時間を要する「キャラクターの成長と強化」という最大のカタルシスを、短時間のプレイの中に凝縮して何度でも味わえるように設計されています。
小林氏と佐々木氏はインタビューにおいて、この設計の意図を「現代の忙しいプレイヤーが短時間でも濃密な満足感を得られるように配慮しつつ、制限時間の中でスタイルや装備を選択・強化していく高い緊張感と戦略性を両立させたかった」と明かしています。
発売時期と今後の展開
「Stupid Never Dies」は、PlayStation 5およびPC(Steam)向けに2026年秋の発売を予定しています。対応言語は、英語ボイスに加えて日本語を含む多言語の字幕サポートが予定されています。価格については現時点で未定です。また、開発チームはSteam Deckへの対応を検討しているほか、XboxやNintendo Switchへの展開についても将来的な可能性を残しています。
業界の一部からは、秋という多くの大作タイトルが集中するリリース時期において、ニッチで奇抜なアクションRPGである本作が埋もれてしまわないかという懸念も示されています。しかし、元カプコンをはじめとする著名なベテラン陣の確かな技術力、他に類を見ない独創的なユーモアとビジュアル、および短時間で熱中できる洗練されたシステムは、激しい市場競争の中でも一線を画す強いポテンシャルを秘めています。


