Ubisoftが戦略的見直しを発表し、事業売却を含む複数の選択肢を検討中です。業績不振を受け、コスト削減と事業再編を加速する同社は、外部アドバイザーを起用。「アサシン クリード シャドウズ」の発売延期や「XDefiant」のサービス終了、Tencentなどの潜在的な買い手が浮上する中、老舗ゲーム会社Ubisoftの今後の動向を分析します。
発売延期の発表と影響
Ubisoftの期待作「アサシン クリード シャドウズ」の発売日が、当初予定されていた2025年2月14日から3月20日に再延期されることが発表されました。これは同作にとって二度目の延期となります。Ubisoftは、この延期の理由を「ゲームプレイの品質向上」と説明しており、開発期間を延長することでプレイヤーからのフィードバックを反映し、より良いゲーム体験を提供するためとしています。
この延期は、後述する戦略的見直しとも関係していると考えられます。品質向上を名目としつつも、現在の経営状況や今後の戦略を考慮した上での判断である可能性も指摘されています。
戦略的見直しの開始
Ubisoftは先日、「戦略的アップデート」と題したプレスリリースを発表し、事業の抜本的な見直しに着手することを明らかにしました。この発表は、単なる業績改善策にとどまらず、事業売却を含む複数の戦略的選択肢を検討していることを示唆しており、業界内外に大きな波紋を広げています。
プレスリリースでは、「ステークホルダーの価値を最大化するため、複数の戦略的選択肢を評価する外部アドバイザーを起用した」と明記されています。これは外部からの資本注入や事業売却など、あらゆる可能性を視野に入れていることを意味します。このプロセスは取締役会の独立したメンバーによって監督されるとされており、客観性と透明性を確保する姿勢が示されています。
2024年度の業績不振と課題
2024年度はUbisoftにとって厳しい事業年度となりました。期待されていたタイトル「スター・ウォーズ アウトローズ」の売上が業界平均を20%下回り、株価は2015年以来の最低水準に落ち込みました。さらに、収益改善策として2024年12月に「XDefiant」のライブサービスを2025年6月3日に終了すると発表しました。また、最近では「アサシン クリード シャドウズ」の開発に関わっていたインドネシアのサポートスタジオが従業員へのハラスメントで非難される問題も発生しました。
コスト削減策と財務見通し
コスト削減はすでに進行中であり、今後数か月間はさらに徹底される見込みです。Ubisoftは、過去の年間固定費と比較して、2025～26年度までに大幅なコスト削減を見込んでいます。具体的な削減額は公表されていませんが、経営状況を鑑みると、積極的な削減策が実施されると予想されます。
財務状況については、最新の四半期決算で現金準備が報告されていますが、前年同期比で減少しているとされています。しかし、年間固定費をカバーするには十分な水準だと分析されています。「スター・ウォーズ アウトローズ」の販売状況が影響したものの、コスト削減策によって2025年度の損益分岐点達成は可能との見方もあります。
身売りの可能性と業界への影響
今回の発表を受けて、業界内ではさまざまな憶測が飛び交っています。特に注目されているのが、中国の巨大企業Tencentです。Tencentは過去3年間で約50億ドルを海外のゲーム会社への投資に充てており、Ubisoftもそのターゲットとして見られています。もしTencentがUbisoftを買収すれば、世界のゲーム市場における中国企業のシェアが30%を超え、業界全体の勢力図が大きく塗り替えられる可能性があります。
経営陣の見解と今後の展望
Ubisoftの共同創業者でありCEOのイヴ・ギルモ氏は、売却の可能性について「数か月前から始めた再編は順調に進んでおり、これによってUbisoftはより強固な将来を築けると確信している」と述べています。しかし、この「より強固な将来」が独立企業としての存続を指すのか、他社への売却を示唆しているのかは不明です。
報道によると、TencentとUbisoftの創業者一族であるギルモ家が買収を含む選択肢を検討していることが示されています。Ubisoftの株価は過去1年で半分以下に急落しており、Tencentは現在9.2%、ギルモ家は20.5%の株式を保有しています。この状況を受けて、Ubisoftの株価は一時33%上昇しましたが、具体的な買収計画や時期は不明であり、さまざまな選択肢が検討されています。
アサシンクリードやファークライなど、年間売上高の40%を占める主力フランチャイズを抱えるUbisoftの今後の動向は、ゲーム業界全体に大きな影響を与える可能性があります。「アサシン クリード シャドウズ」の発売延期は、表向きの品質向上という理由だけでなく、同社が直面する構造的な課題や将来を見据えた戦略的判断を反映した動きと言えるでしょう。
情報元：WindowsClub
