
2026年6月の「State of Play」で映像が公開された中村育美氏の最新作「KEMURI」。パルクール移動や、妖怪の力を身に纏う「憑依アパレル」などの独自システムから、スタジオ「UNSEEN」が掲げる「ピープル・ファースト」の経営哲学まで、ビジネスとゲーム性の両面から分析します。
2026年6月2日に配信された「State of Play」(PlayStation)にて、ゲームクリエイターの中村育美氏が設立した開発スタジオ「UNSEEN」のデビュー作、「KEMURI(ケムリ)」のファーストゲームプレイ映像が公開されました。
本作は、現代的なアジアンストリートカルチャーと、日本の伝統的な妖怪伝承を融合させたスタイリッシュなアクションゲームとして開発が進められています。今回の映像公開を受けて、すでに多くの海外ゲームメディアが本作を取り上げており、その独創的なシステムやアクションに関する分析や考察が行われています。
スタジオUNSEENが放つ「KEMURI」作品概要
本作の開発を主導するのは、東京に拠点を置く独立系ゲーム開発スタジオ「UNSEEN(アンシーン)」です。スタジオ代表の中村育美氏は、Tango Gameworksなどで「大神」「ベヨネッタ」「サイコブレイク」などの開発に携わり、クリエイティブ・ディレクターとして「Ghostwire: Tokyo」(途中退任)に関与した経歴を持つゲームデザイナーです。同氏が独立後に設立したUNSEENの第1弾プロジェクトが、本作「KEMURI」となります。
公式発表(プレスリリース)によると、発売時期は2027年を予定しており、対応プラットフォームはPlayStation 5およびPCとなることが明らかになっています。
開発メンバーには多国籍なクリエイターが参加しており、インディーならではの自由な発想力と、大規模タイトル(AAAタイトル)に並ぶ表現力の融合を目指しています。今回の具体的なプレイ映像の公開により、今後のゲーム市場における動向がさらに注目されています。
現世と霊界が交差する「KEMURI City」
本作の舞台となるのは、現世(現実世界)と霊界(超自然の世界)が近接する都市「KEMURI City(ケムリ・シティ)」です。

一見するとネオンやビル群が立ち並ぶ近代的な大都市ですが、建物の陰や路地裏、廃墟などには、人間には見えないさまざまな妖怪たちが潜んでいます。
この都市型フィールドにおける最大の特徴は、移動の自由度の高さにあります。妖怪ハンターとなったプレイヤーは、地上だけでなく都市の「垂直方向」への移動が可能です。高層ビルの壁面を駆け上がる(ウォールランニング)、ワイヤーや空中ステップを利用して移動する、あるいはレールを滑走(グラインド)するといったパルクールアクションが取り入れられており、立体的な空間探索を実現しています。



独自のシステム「狐の窓」と「憑依アパレル」
ゲームを進行する上で重要な要素となるのが、本作における2つの特徴的なゲームシステムです。
① FOXWINDOW(狐の窓)
指先で狐の顔の形を作る、日本の伝統的な仕草を用いた探索システムです。プレイヤーは「FOXWINDOW」を使用することで、通常は肉眼では見えない、街に潜む妖怪の姿や足跡、霊的な異変を一時的に可視化できます。これにより、ターゲットの追跡や戦闘の準備に必要な情報を得ることが可能です。


② Possession Apparel(憑依アパレル)
妖怪の力を戦闘に利用し、文字通り「超常を身に纏う(Wear the Paranormal)」システムです。プレイヤーは妖怪を退治するだけでなく、契約を交わしてその能力を借りることができます。契約した妖怪のエネルギーを現代的な衣服(ストリートウェア)として身にまとう(憑依させる)ことにより、自身の戦闘スタイルや外見を変化させます。
選択する衣服によって、近接戦闘に適したスタイル, 遠距離攻撃に特化したスタイル、あるいは特殊な技を繰り出すスタイルなど、異なる役割(クラス)へと性能を切り替えることができます。多様な妖怪アパレルを収集し、プレイスタイルや戦略に応じて装備を変更していく点が、本作の特徴となっています。


最大3名で挑む!シングル&マルチプレイ
「KEMURI」は、単独で都市の探索や物語を進めるシングルプレイのほか、オンラインによる協力プレイ(マルチプレイ)にも対応しています。
マルチプレイにおいては、最大3名のプレイヤーでチームを構成する協力プレイ方式が中心となります。
プレイヤーが身にまとう妖怪アパレルによって能力が異なるため、それぞれの特性を活かした役割分担が可能です。たとえば、一人が敵の注意を引いている間に、別のプレイヤーが空中から攻撃を加えるといった連携を行うことができます。
複雑なコマンドやルールが抑えられており、パルクールによる迅速な位置取りとアクションスキルを組み合わせることで、マルチプレイの経験を問わず、直感的に協働プレイができる設計となっています。

妖怪×ストリート系ファッション
海外のゲームメディアが特に注目しているのは、本作の洗練されたビジュアル表現と、現代のカルチャーを融合させた手法です。
従来は古風でダークな印象になりがちな日本の「妖怪」や「霊的世界」というモチーフに、彩度の高いネオンカラーやアジアンストリートウェア、若者向けのアニメーションスタイルを組み合わせています。このストリートカルチャーを前面に出した意匠は、ゲーム内におけるキャラクターのファッション性の高さにもつながっています。
こうしたアート表現は、現在のエンターテインメント業界におけるトレンドとも深く親和していると一部メディアで分析されています。たとえば、ダークファンタジーや怪異をスタイリッシュかつポップに描いた「呪術廻戦(Jujutsu Kaisen)」などの作品は、国内外の若年層から高い支持を得ています。さらに、近年のJ-POPやK-POPのミュージックビデオ、あるいはファッションシーンに見られる色彩感覚とも共通する部分があります。2027年の発売に向けて、こうしたトレンドの広がりは、世界のゲーム市場において本作の存在感を高める要因になると予想されています。
大手資本に依存しない経営哲学
「KEMURI」の開発動向をビジネスの観点から分析する上で重要な要素が、開発元であるUNSEEN株式会社の独立性と、そのガバナンス(組織統治)体制です。
近年、日本の著名クリエイターによる独立スタジオの多くが海外の大手資本傘下に入る中、UNSEENは2026年現在も具体的な外部出資元を公表せず、高い自主独立性を維持しています。実際に、プラットフォームストアにおける「KEMURI」の販売元(パブリッシャー)は「UNSEEN Inc.」と登録されており、自社パブリッシングを軸とした事業展開を行っていることが窺えます。
同社の経営陣には、代表の最高経営責任者(CEO)兼クリエイティブディレクターの中村育美氏をはじめ、最高デザイン責任者(CDO)の片貝直樹氏(元Tango Gameworks)、最高技術責任者(CTO)のデイビッド・スタインバーグ氏、最高情報責任者(CIO)の宮本太氏ら、実務に精通した各分野の専門家が名を連ねています。
また、同社が掲げる経営理念「ピープル・ファースト(人を第一に考える)」は、昨今の不安定なゲーム業界の動向とも対比されます。中村氏は、業界内で常態化しているクランチ(過度な残業)の排除を目指し、さらに世界的な人員削減の動きが続く中、自社の労働環境を「レイオフ(一時解雇)保護ゾーン」と宣言しています。東京・月島のスタジオを拠点とし、世界各地のスタッフが時間や場所、言語の壁を越えて協働する「ボーダレスなハイブリッド体制」は、今後のインディーおよび中規模開発における一つのモデルケースとして、業界内でも注目されています。
総括
独立系スタジオ「UNSEEN」が開発を進める「KEMURI」は、パルクールを用いた移動システムや、「衣服を着替えて能力を変更する」という独自の憑依システムを取り入れることで、新たなアクションゲームの方向性を提示しています。
日本固有の文化や伝承をグローバルなユースカルチャー(若者文化)へと融合させた本作が、2027年の発売に向けてどのような展開を見せるのか、国内外のゲーム市場やユーザーからの注目は今後も継続するものと予想されます。
情報元:UNSEEN公式サイト・VGC・Polygon


